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通された部屋の寝台に浅葱を横たわせ、優しく彼女の額に触れる。手から伝ふわる熱さに、柳宿はため息をつき優しく髪をすいた。
「熱も上がっているわね。なにか冷やすものあるかしら」
「それなら、こちらをどうぞ」
「ありがとう少華さん」
少華から布と水の入った桶を渡された柳宿は、布を水につけきつく絞るとそれを浅葱の額にのせる。
よほど気持ちいいのか、眉間にしわを寄せていた彼女の顔がゆるんだ。
「あとは美朱たちが、妙寿安って医者をつれてくれば何とかなると思いたいわね」
「……妙、寿安……」
「少華さんも知っているかしら? 都外れに住む流れ者の医者って聞いたけど」
「い、いいえ……。その方を連れてこられるんですか?」
「ええ、今美朱達が探してくれているはずよ。……少華さん?ヤダ、真っ青じゃない!」
「すみません……少し立ち眩みが」
袖を口元に当て、今にも倒れそうなほど青白くなった少華に、柳宿は椅子に座るよう促す。
彼女は軽く頭を左右に振り、別室で少しの間休むと部屋を出て行った。
「体が弱いとは言っていたけど大変ね……」
あの様子では普段も具合はよくないのだろう。それでも都の人の救いとなるべく動き回っている。
「……」
柳宿はそこでこの都にきて初めて僅かに眉をひそめた。
初めて会った時には「すごい力ね」くらいの驚きだったが、こうして浅葱が罹患してわかった。彼女の力は異質だ。救いをちらつかせ死を手招きしているように思える。
少華の力を初めて見た時の浅葱の様子を思い出し、ベッドに横たわる彼女を見下ろす。
浅葱はこの異質さを感じ取っていたのでないだろうか。だから不用意に彼女に近づかなかった。
「はぁ……」
浅葱の頬に触れる。指先から伝わる熱が、まだ彼女が生きて頑張っている証だ。
正直、少しだけ困惑している。少華の異質さに気づいてしまったが、こうして親身になり家に招き入れてくれている彼女に。宿がなく助かった安堵と、彼女にこれ以上近づくことの危うさを。
「本当に早く医者連れてきなさいよ。……ってヤダ!あいつらにここにいるって伝えていないじゃない!」
宿に行くといって離れたので、仲間たちはそちら向かうはず。まさか少華の家にいるとは思っていないだろう。
しかし体調が芳しくない少華に伝言を託すわけにもいかず、かといってこの状態の浅葱から僅かな間でも離れることは不安だ。
「しょうがない。あとは美朱達にわかる目印でも玄関先につかさせてもらおう」
目印にするのならば目立つ物がいい。今持っている物は僅かな金銭と小物くらいで、目立つような物はないなと頭を抱える。
他になにかないかとさらに荷を漁り、見慣れない布切れを見つけた。柔らかい手触りと薄い緑の生地に、小さく犬らしき動物が刺繍されているそれを手に取る。
これは確か美朱の物だったはず。何かの折にこちらに紛れ込んでしまったのだろう。
「これなら一発でわかるわね」
元々美朱の物であり、こちらの世界には存在しない素材の布切れならば、美朱達に見つけやすだろう。
柳宿は浅葱の頬をもうひと撫でし、少華の了承を得るべく部屋を出た。