第一幕
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「如何でしたか?ハルお嬢様の望む気分転換は出来ましたでしょうか」
セバスに言われるまで、正直そんな風に言った事なんて、すっかり忘れていた。
とりあえず自分の足で屋敷の中を見回って、結構動いてはいたと思うが、これでは全く体力作りには足りない。
本当は、もっと気分転換という名の運動をしたかった。しかし、何度も何度も無意味に階段の往復をすれば、流石にセバスにも私の意図がバレてしまう。
体力作りをしたいという気持ちをグッと抑えて、今日はもう部屋で大人しくしておく事にしよう。
「ありがとうセバス!あとね…」
ジッとセバスよりも上、天井を見上げながらハルは言葉を続けた。
「そんな所で見てなくても、ハルもう転んだり怪我しないよ」
ずっと気になっていた。誰かに見られている様な感覚。最初は、セバスが転ばない様に見ているのだと思っていた。
しかし、セバスが隠し部屋を開けている時にも何故か見られている感覚があった。
それはつまり、見ているのはセバスだけではなく、他の人間がいるという事だ。そしてそれは、一人ではなく、もしかしたら複数人いるかもしれないという可能性があった。
何故そんな考えに至ったのかと言うと、それは本当に小さな違和感からだ。
時々、天井からコツコツと小さな音がしていた。
最初は、ネズミか何かだと思っていたが、こんなに手入れが行き届いている屋敷にいるとは思えない。
それに、一定のリズムで私に付いて来ている様にも音は聞こえていた。
これで思いっきりネズミだったら、恥ずかしい黒歴史が爆誕する訳なのだが。
「天井裏に、誰かいるよね…?」
恐らく天井にいるであろう相手に話し掛けるが、うんともすんとも言わない。
もしかして、本当にネズミだったのだろうか?
不安になりかけていると、セバスがパチンと指を鳴らした。その音を合図に、スタッと天井から降りて来たのは、まだ10歳くらいの二人の子供だった。
流石に天井裏にいるのが、子供だとは思っていなかったので、その事には驚きを隠せない。
「この二人は、ハルお嬢様の護衛のリアとディルでございます」
リアと呼ばれた人物は、綺麗な金髪を一つに結わえたポニーテールの女の子。もう一人のディルは、茶髪の短髪で、雀斑が特徴的な男の子だった。
「よろしくね〜!……って、護衛!?」
最初は普通にしていたが、護衛という言葉をしっかりと考えられる様な状態になった瞬間、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
待て待て待て、なんだ護衛って初耳なんだけど!?そもそもこれから屋敷の中でしか過ごさない人間に必要なのか!?
「護衛なんて聞いてないよ!?」
「大旦那様が密かに付けられていましたので、ハルお嬢様が知らなくても仕方がございません」
マジか、じーちゃん。どんだけ過保護なの……。
そりゃあ、後頭部強打して何日も目を覚まさなかった私が悪いですよ?悪いですけど、これは流石にやり過ぎだと思う。
「ハルティーナお嬢様は何故、お分かりになられたのでしょうか?」
「コツコツって音が聞こえた…から?」
「あ、ごめんそれ俺だ〜」
呑気な声で語尾を伸ばしながら、ディルは悪びれる様子もなくそう言ってのけた。
後に、大物になりそうな予感がひしひしと伝わってくる様な呑気具合だ。
「この位の音なら、おチビにはバレないだろ〜って思ってさぁ…?」
おチビ、案外凄いんだな〜と言いながら、ディルは私の頭を撫でていた。
私からすれば、護衛対象にそんな口調で接せるキミのが凄いと思うよ。ディル達の後ろにいるセバスの顔が笑ってる様に見えて全然笑ってないもん。
それに気が付いたリアは少し青褪 めている。もし、私が護衛 側だったら、失神していたかもしれない。
「おチビじゃないよ、ハル!」
「俺よりも全然おチビじゃんか〜」
あははー、と笑いながら言うディルだったが、私が言いたかったのは身長じゃない。名前の話だ。
それくらい察して欲しいと思いながら、私は頬を膨らませていた。
「……私にバレたら二人、じーちゃんに怒られる?」
ディルとのやり取りをしていて、不意にそう言えば護衛対象にバレたらどうなるのだろうか。という疑問が浮かび、そのまま口に出していた。
「バレずに遂行せよ、との事であれば……怒られますね」
セバスはそう言って少し考える素振りをしながら、リアとディルを見る。
「じーさまは、そんな事言ってなかったな〜」
「じ……!?大旦那様からは、特に指示はございませんでした」
どうやらディルは、誰に対してもこの口調らしい。ディルの言葉にリアが一瞬だけ動揺しつつ、すぐに冷静さを取り戻し普通に話していた。
「そっかー!じゃあ、二人とも怒られないね!」
私のせいで怒られるのではないかと少し不安に思っていたので、良かった良かったと安堵していれば、そんな私の様子を見たディルが口を開いた。
「おチビ、気にし過ぎ〜そんなんだからおチビなんだぞ〜?」
「ディルは気にしなさ過ぎ〜だから音出しちゃうんだよ〜」
わざとディルの口調を真似して、言い返してみれば、ディルは苦虫を噛み潰した様な声を出していた。
4歳児に言われるのは、流石に嫌だったらしい。
「お前、ホントに4歳なのかぁ…?」
「……4歳だもん」
危ない、危ない。危うく前世の年齢を言おうとしてしまった。それこそ痛い目で見られてしまう所だった。
そんなやり取りをしていると、ノックされ扉の向こうから声を掛けてきたのはドルクスだったので、自分で扉を開けた。
「どーしたの?ドルじーちゃん」
「おや、ハルティーナお嬢様自ら開けて下さったのですか?」
ドルクスにそう問われ、頭上に一瞬だけ? が浮かんで消えた。
物語の中で読んだ記憶しかないが、貴族等は、普通自分で扉は開けない。これも従者の仕事に含まれている。
前世の一般人としての記憶が残っているのでつい、自分でやりがちだ。
「そーだよ、ハルが開けたの!力持ちでしょ?」
なるべく、彼等が怒られない様に自分が勝手にやりましたを装いながらドルクスに言えば、セバス達を怒れるはずもないだろう。
……もしかしたら、後で私が居ない所で怒られるかもしれないけど。
「えぇ、ハルティーナお嬢様は力持ちでございますね」
ドルクスは、いつもと変わらぬ口調で言った後、ほっほっほっ、と笑っていた。
「んで、どーしたん?ドルじーさま」
「「「!!!」」」
このまま何事もなくドルクスから話を聞こうとした矢先にこれだ。
折角、皆が怒られない様に話してたのに、空気を読まないディルに、ハルの開いた口が塞がらなかった。
セバスに言われるまで、正直そんな風に言った事なんて、すっかり忘れていた。
とりあえず自分の足で屋敷の中を見回って、結構動いてはいたと思うが、これでは全く体力作りには足りない。
本当は、もっと気分転換という名の運動をしたかった。しかし、何度も何度も無意味に階段の往復をすれば、流石にセバスにも私の意図がバレてしまう。
体力作りをしたいという気持ちをグッと抑えて、今日はもう部屋で大人しくしておく事にしよう。
「ありがとうセバス!あとね…」
ジッとセバスよりも上、天井を見上げながらハルは言葉を続けた。
「そんな所で見てなくても、ハルもう転んだり怪我しないよ」
ずっと気になっていた。誰かに見られている様な感覚。最初は、セバスが転ばない様に見ているのだと思っていた。
しかし、セバスが隠し部屋を開けている時にも何故か見られている感覚があった。
それはつまり、見ているのはセバスだけではなく、他の人間がいるという事だ。そしてそれは、一人ではなく、もしかしたら複数人いるかもしれないという可能性があった。
何故そんな考えに至ったのかと言うと、それは本当に小さな違和感からだ。
時々、天井からコツコツと小さな音がしていた。
最初は、ネズミか何かだと思っていたが、こんなに手入れが行き届いている屋敷にいるとは思えない。
それに、一定のリズムで私に付いて来ている様にも音は聞こえていた。
これで思いっきりネズミだったら、恥ずかしい黒歴史が爆誕する訳なのだが。
「天井裏に、誰かいるよね…?」
恐らく天井にいるであろう相手に話し掛けるが、うんともすんとも言わない。
もしかして、本当にネズミだったのだろうか?
不安になりかけていると、セバスがパチンと指を鳴らした。その音を合図に、スタッと天井から降りて来たのは、まだ10歳くらいの二人の子供だった。
流石に天井裏にいるのが、子供だとは思っていなかったので、その事には驚きを隠せない。
「この二人は、ハルお嬢様の護衛のリアとディルでございます」
リアと呼ばれた人物は、綺麗な金髪を一つに結わえたポニーテールの女の子。もう一人のディルは、茶髪の短髪で、雀斑が特徴的な男の子だった。
「よろしくね〜!……って、護衛!?」
最初は普通にしていたが、護衛という言葉をしっかりと考えられる様な状態になった瞬間、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
待て待て待て、なんだ護衛って初耳なんだけど!?そもそもこれから屋敷の中でしか過ごさない人間に必要なのか!?
「護衛なんて聞いてないよ!?」
「大旦那様が密かに付けられていましたので、ハルお嬢様が知らなくても仕方がございません」
マジか、じーちゃん。どんだけ過保護なの……。
そりゃあ、後頭部強打して何日も目を覚まさなかった私が悪いですよ?悪いですけど、これは流石にやり過ぎだと思う。
「ハルティーナお嬢様は何故、お分かりになられたのでしょうか?」
「コツコツって音が聞こえた…から?」
「あ、ごめんそれ俺だ〜」
呑気な声で語尾を伸ばしながら、ディルは悪びれる様子もなくそう言ってのけた。
後に、大物になりそうな予感がひしひしと伝わってくる様な呑気具合だ。
「この位の音なら、おチビにはバレないだろ〜って思ってさぁ…?」
おチビ、案外凄いんだな〜と言いながら、ディルは私の頭を撫でていた。
私からすれば、護衛対象にそんな口調で接せるキミのが凄いと思うよ。ディル達の後ろにいるセバスの顔が笑ってる様に見えて全然笑ってないもん。
それに気が付いたリアは少し
「おチビじゃないよ、ハル!」
「俺よりも全然おチビじゃんか〜」
あははー、と笑いながら言うディルだったが、私が言いたかったのは身長じゃない。名前の話だ。
それくらい察して欲しいと思いながら、私は頬を膨らませていた。
「……私にバレたら二人、じーちゃんに怒られる?」
ディルとのやり取りをしていて、不意にそう言えば護衛対象にバレたらどうなるのだろうか。という疑問が浮かび、そのまま口に出していた。
「バレずに遂行せよ、との事であれば……怒られますね」
セバスはそう言って少し考える素振りをしながら、リアとディルを見る。
「じーさまは、そんな事言ってなかったな〜」
「じ……!?大旦那様からは、特に指示はございませんでした」
どうやらディルは、誰に対してもこの口調らしい。ディルの言葉にリアが一瞬だけ動揺しつつ、すぐに冷静さを取り戻し普通に話していた。
「そっかー!じゃあ、二人とも怒られないね!」
私のせいで怒られるのではないかと少し不安に思っていたので、良かった良かったと安堵していれば、そんな私の様子を見たディルが口を開いた。
「おチビ、気にし過ぎ〜そんなんだからおチビなんだぞ〜?」
「ディルは気にしなさ過ぎ〜だから音出しちゃうんだよ〜」
わざとディルの口調を真似して、言い返してみれば、ディルは苦虫を噛み潰した様な声を出していた。
4歳児に言われるのは、流石に嫌だったらしい。
「お前、ホントに4歳なのかぁ…?」
「……4歳だもん」
危ない、危ない。危うく前世の年齢を言おうとしてしまった。それこそ痛い目で見られてしまう所だった。
そんなやり取りをしていると、ノックされ扉の向こうから声を掛けてきたのはドルクスだったので、自分で扉を開けた。
「どーしたの?ドルじーちゃん」
「おや、ハルティーナお嬢様自ら開けて下さったのですか?」
ドルクスにそう問われ、頭上に一瞬だけ
物語の中で読んだ記憶しかないが、貴族等は、普通自分で扉は開けない。これも従者の仕事に含まれている。
前世の一般人としての記憶が残っているのでつい、自分でやりがちだ。
「そーだよ、ハルが開けたの!力持ちでしょ?」
なるべく、彼等が怒られない様に自分が勝手にやりましたを装いながらドルクスに言えば、セバス達を怒れるはずもないだろう。
……もしかしたら、後で私が居ない所で怒られるかもしれないけど。
「えぇ、ハルティーナお嬢様は力持ちでございますね」
ドルクスは、いつもと変わらぬ口調で言った後、ほっほっほっ、と笑っていた。
「んで、どーしたん?ドルじーさま」
「「「!!!」」」
このまま何事もなくドルクスから話を聞こうとした矢先にこれだ。
折角、皆が怒られない様に話してたのに、空気を読まないディルに、ハルの開いた口が塞がらなかった。
8/8ページ