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note/米森
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記事一覧
▽ 2016 12.31
20161231(土)00:00しんと冷えゆく体を毛布に埋める。思い通りにならぬこの身も付き合うこと長く、今年も、先細な幸せを甘受するのみで精一杯だった。ベッド脇の小窓、白く曇る硝子。円を描くように露を拭いとる指先は、行先を指すように震え。蕾は未だ固く。されど、春来にけらし。私も咲かん。必ずや。▽ 2016 12.22
20161222(木)00:00首をしゃんと伸ばし、耳をそばだて。さく、さく。わざわざ霜柱を踏んでいくその足音はどんどん大きくなっていって、ぼくの体もうずうずする。開け放たれる扉。鼻を赤くした笑顔のご主人。尾っぽを振って出迎えるぼく。「お散歩行こう!」「わん!」さくさく、さくさく。楽しいね!
▽ 2016 12.22
20161222(木)00:00鮮やかなネオンが遠くなってどれくらい経ったのか。世界を照らすのは疎らな街灯と、私たちを乗せた車のヘッドライト。喧騒から逃れるようにアクセルを踏んで、夜を駆けて。コンクリート壁から解き放たれた私たちの正面の、山の向こうから朝日が顔を覗かせる。深呼吸、心をリセット。▽ 2016 12.21
20161221(水)00:00規制線の向こうは雪の原、一部分だけ雪の溶けた跡が見える。ここで行方不明の少女が見つかった……遺体で。黄色のテープをくぐって近付く。集められる視線が私を刺すが、心地は良い。「私が殺しました」君は死してなお春をもたらした。おそらく私に最後の春を、罪を明らかにせんと。▽ 2016 12.18
20161218(日)00:00澄みきった水面の奥の奥へと、次第に遠ざかっていく君の姿。嫌いだったよ、と嘯いた唇から浮かぶ泡は小さくなっていく。…ねえお願い、掬わせて。君にすら嘲笑われた貧弱な腕では、君の腕を掴むことすら叶わないかもしれないけれど。半身を沈め、距離を知り、君を追って潜っていく。▽ 2016 12.13
20161213(火)00:00学問の名の下に、ぐらぐらと鍋を煮立す日々。脊椎動物はこの鍋の中身のように死して骨を残すが、名と知識をも残さねばならぬのが学者という生物。未だ孵らぬ研究成果を抱え、窓のない研究室に一人籠もる。名を残すなら心臓が動くうちにと。標本棚、ホルマリン漬けの雛と目があった。
▽ 2016 12.12
20161212(月)00:00名前とおんなじ、私は「鈴」のような人間。綺麗だ綺麗だと他人は誉めそやすけど、所詮は転がしやすい女だと嘲笑われているだけ。いつしか心に巣食う黒い錆を隠すように、高価な着物を纏い髪を結って。女ざかりは今のうち、と自分に言い聞かせ。からっぽ、虚勢の音を今宵も響かせる。▽ 2016 12.11
20161211(日)00:00大好きな歌とは違って、望遠鏡もラジオも、難しいこと考えられる頭も持たないまま、私は流れ落ちてくる星々を眺める。寒いねと隣で震える君はジャージ姿。流行歌になれそうもないくらいキマってないね。でも、幸せなストーリーは人それぞれだからさ。
@moso_propro様:喜びと星の唄▽ 2016 12.09
20161209(金)00:00ぐるぐる。環の中をぐるぐる歩き続ける。既視感に目眩。足だけは前に進み続けていて、上っているのか下っているのか、なんていつからか分からなくなって。ぐるぐる。変わらず、変われず、終われずに。果たして環の切れ目はどこだろう。切れ目なんてあるのかな。ぐるぐる、ぐるぐる。▽ 2016 11.27
20161127(日)00:00ダイヤモンドの指輪。貴方と永遠を誓った冬の教会。ようやく愛を手に入れられると思っていたのに。割れた窓。落ちた照明。散乱する食卓。もうたくさんだ。愛のない永遠など。トランクを抱え、誰を迎え入れるわけでもなかったドアを開ける。月明かりを受けて、指輪だけが輝いていた。