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note/米森
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記事一覧
▽ 2019.07.27
20190728(日)00:25あの頃の私は私でない。だが、元級友らにとってはあの化け物が私なのだ。酒を酌み交わし昔話に花を咲かす宴。私は急拵えの笑みで会釈する。過日の思いは心の奥に、何重にも縛り上げ閉じ込めた。それは私が私であるために。私は声をかける。初めまして、と。訝しげな友。陰に潜む化け物は私を嘲った。▽ 2019.06.13
20190616(日)12:46背表紙を指で横になぞっていく。本棚には小説、漫画、辞書、料理本…はたまた哲学書。まるで私の変遷を映すようだ。年々色んなことに興味が湧いて。でも、昔から好きなものはずっと好きなままで。あ、そうか、変遷というよりは蓄積なのかも。楽しいことが沢山詰まった本棚。今日は何を読もうかな。▽ 2019.03.12
20190318(月)20:52君の涙が滴り落ちる。生温かいそれを頬で受け止めながら、僕は君と過ごした日々を思い出していた。告白した教室、手を繋いだ観覧車。そして今はベッドの上。お願い、死んで。何度も繰り返し口にしながら君は僕の首に回した手に力を込める。これはきっと最後の思い出。それも、悪くはない。好きだ。君だけが。▽ 2019.03.03
20190303(日)20:50綺麗な着物を着た人形たちが僕を見下ろしている。今日はひな祭りだ。両親と妹は朝から買い物。ぼくはお留守番。「女の子のお祭り」だから今日は妹が主役。うらやましい。このひな人形は妹のものだ。いいな。きれいなもの、かわいいものは女の子の特権じゃないのに。だから今のうちに一人占めするんだ。▽ 2018.06.24
20180624(日)17:28試すように。疑うように。嘲るように。わたしは訊ねる。「あなたはだれ?」答えはない。悲しい。楽しい。そんな顔をしている…気がする。でもきっと、心には何の感情もない。「あなたはだれ?」わたしは、だれ? 曇り鏡に問い掛けながら、口紅をつける。わたしがいなくなる。あなたは微笑む。▽ 2018 06.22
20180622(金)20:20底が見えない。詰められているきらきらした砂をスコップで掬い捨てていくけど、未だ。掬い続けて、スコップが折れても次は両手で、掬い上げるのを止めず、指先から滴る血が砂を染めていって。そして遂に底に達した。何もなかった。ああ、どうしたらいいの。詰め直そうにも、もう、何もない。▽ 2017 09.03
20170903(日)00:00唇が乾く。点滅するスマホのライト。私はそれをじっと見つめていた。舌で唇を舐める。リップクリームの微かな甘さ。渇いたままの体、ひとつ震わせ夜空を仰ぐ。こんなに広い世界なのに私はひとりだ。ひとりぼっちになってしまった。私を照らす光は、熱は、どこにもない。虚しいね。唇をなぞる。▽ 2017 08.20
20170820(日)00:00夕時には村の砦に幼子が集まる。「勇者の話を!」と目を輝かす子らに囲まれ、門番は楽しげに冒険譚を紡いだ。落日近く、子らは帰っていった、一人を除いて。「ほんとの続きは?」聡い子が門番に尋ねる。門番は首を振った。勇者の…今は門番なれども、冒険はまだ続いているのだから。▽ 2017 07.24
20170724(月)00:00箱の中は空っぽ、否、底の見えない闇がある。この箱は持ち主が求める物を一つだけ出してくれるのだという。私は満ち足りているし欲しいものなんてない、と思っていたのに。この闇は何だろう。手を突っ込む。冷気が指を撫でる。…怖い。寂しい。唇を震わす。すると、たちまちただの箱になった。
▽ 2017 07.11
20170711(火)00:00赤い体が大きく伸び、縮こまる。硝子鉢の中でぷかりと泡を浮かべる金魚。嗚呼、何とも暢気で羨ましい。ここは平穏無事だと言わんばかりにゆったりと尾を揺らし、大きな出目で私を見る魚。割れた窓から吹く風は生温いばかり。ぱくぱくと、口開け酸素を求めている。赤い眼をした私も魚かな。