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note/米森

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  • ▽ 2015 03.19

    20150319(木)00:00
    お題:昼寝
    #私に書いて欲しい物語ってありますか
    本文は追記から。
    追記

     わたしがベッドでうとうとしていると、もぞもぞと何かが入ってくる気配がした。
     ここはわたしのベッドだぞ分からず屋め。キックをくらえ。

    「ううん、ふわふわであったかい……」

     しかし効かなかった。ぽんぽんと、わたしをなだめるかのような手。わたしの体をなぞる、ひんやりと優しい手。
     わたしとて撫でられるのが嫌いなわけじゃない。特に、この男に撫でられるのは。

     ……仕方のない奴だ。全く。夜更かしした挙げ句、こんなお日様が窓からあいさつしてる真っ昼間に寝ようとするとは。しょうがない、一緒にお昼寝してやるとしようじゃない。





     窓からの光が赤くなってきた夕方。男より一足先に目が覚めたわたしはベッドからするりと這い出る。
     無防備な男の寝顔。お疲れだったんだね。でもそろそろ起きようね。お腹空いた……無論わたしが、ね。

     わたしは男の鼻を、口を塞ぐようにのし掛かる。前足は胸元へ折り畳んで。

    「……ぶはっ!!」

     わたしを顔から押しのけてがばっと起き上がる男。やっぱりこの方法がいろいろ手っ取り早いわね。ただ鳴いてるだけじゃこの男起きないんだもん。

    「あぁ、もうこんな時間か。ご飯にしようね」
    「にゃーん」

     腹に飛び乗れば男のひんやりした手が私の喉を撫でる。ごろごろと喉を鳴らせばぎゅむっと抱きつかれて。猫パンチをお見舞いするも男の笑顔を助長させるだけだった。……知っててやるわたしもわたしだけどね。

     これはご飯を貰うために我慢してやってるんだから。別に愛でて貰うのが嬉しいわけじゃないんだからね!
     そう自分の心に言い聞かせるも、目を細め尻尾を揺らし喉を鳴らしてしまう、正直なわたしだった。

    * * * * *
    20150319
    お題:昼寝
    #私に書いて欲しい物語ってありますか
  • ▽ 2015 03.18

    20150318(水)00:00
    題:この感情は、きっと冬が終わるせいだ。
    #私に書いて欲しい物語ってありますか
    本文は追記から。
    追記
    「だからあたし元カレに言ってやったんだ。バレンタインもホワイトデーもろくに出来ない、文句ばっかしの奴はあたしから願い下げだって」 

     未だ涙の跡を残したまま女子は吐き捨てる。頭のてっぺんまでむらなく染まった茶髪は巻かれていて、メイクは目元が少々崩れているものの元の顔立ちを引き立たせるようなもので。爪は塗られ、短いスカートからは白い太ももが覗く。見てしまうことに罪悪感はない。徴税だ徴税。

     そもそもどうして俺はこんなギャルの話に付き合わされているのだろうか……。高校入学して一番の不思議に、今現在向き合っている。机と椅子があるにも関わらず二人してロッカーの上に座って。暦ではとうに春だと言えども日当たりの悪い教室は寒く、お互いコートまで着て。

    「武村はこんな元カレみたいな奴どー思う?」
    「そういう人種もいるんだなとしか」
    「そーね。そうそう、そんな人種もいたんよ」

     あっはっはと笑う女子は、初めよりも明るかった。忘れ物を取りにクラスのドアを開けたら、床にへたりこみ泣きじゃくるのがいた俺の驚きを知ってほしいものだ。まったく。

     話はようやっと、そろそろ終わりだろうか。涙も乾いただろう。俺は腰を浮かす。

    「そーいや武村ってさ、彼女いんの?」
    「……教室では日陰者、昼休みも部室に逃げるような男にいるとでも?」
    「部室に彼女でもいるん?」
    「だからいないって。そもそも文芸部は男しかいないから。そこで彼女出来てたら大変だから」
    「そっかー……武村って変わってんね」

     俺が立ち上がると女子も真似して、俺の横に立つ。ふーんといいながら俺の顔をのぞき込んでくる。なんなんだ一体。

    「もう少し髪短くしてセットし直したらタイプなんだけどなー」
    「なにが?」
    「武村が。背も顔もけっこーいいじゃん。いい美容院教えようか?」
    「それはどうも」

     自分の机からカバンを回収して女子に背を向ける。扉を開けながら「じゃあな、元気だして」と小さく声を発して。

    「長々した愚痴に付き合ってくれてありがと。次付き合うなら、武村みたいなまじめクンタイプもいいかもね」

     不意に聞こえてきた声。思わず振り向くも、そこには白い塗装が剥げつつある金属製の扉しかなかった。開ける勇気は、ない。

     この感情は、きっと冬が終わるせいだ。春めいてきた空気に浮かれているだけだ。絶対そうだ。
     言い聞かせながら手で叩いた頬は、熱を帯びていた。

    * * * * *

    20150318
    お題:「この感情は、きっと冬が終わるせいだ。」
    #私に書いて欲しい物語ってありますか
  • ▽ 2015 03.18

    20150318(水)00:00
    なんてったって僕はひとりきり。そう唱えれば何も怖くない気がした。窓の向こうは宵闇、光る街灯、淀む空気。ここは僕の心の依り所、誰とも相容れない僕の墓場。「一人でだって生きていけるさ」コートを羽織ってブーツを履いて、ホルスターの中身を確かめて。さあ往こう。:@moso_propro 様
  • ▽ 2015 03.16

    20150316(月)00:00
    題:白衣の彼と収率と
    #私に書いて欲しい物語ってありますか
    本文は追記から。
    追記

     思わず手が震えた。
     目の前の化学天秤は、理論値とはかけ離れた数値を示している。秤量瓶の重さが生成物入れる前に減ったということは有り得ない。……まずい、これはまずい。

    「重量いくらんなった? 収率何パーくらい?」
    「……1.2734 g。暗算で 10パーくらい」
    「えっ……来週の実験の必要量下回ってんじゃん」

     実験ペアも絶句してる。
     やばい。収率はこの際置いておくにしても、来週の実験は今回の生成物を 3 g 使わなきゃならない。なのに足りない。
     再実験だけは嫌だ。白衣を着ているはずなのに寒気がし始めた。

    「濡れ重量でこれだから来週になったらもっと値小さいよね……」
    「そうだな……。ごめん俺のせいだ。攪拌足りなかったんだと」
    「いや私のせいだよ加島くんじゃない。ガスバーナーでファイアーし過ぎて錯体が熱分解したんだと思う」

     でも、実験結果として出たものはもうしょうがない。化学天秤から中身が青紫色した秤量瓶を取り出し机に戻る。相方が関数電卓で収率計算をすれば、8.76% だった。隣の班の結果を見せてもらえば皆 30% ほど。
     これは、確実にやらかした。思わず顔を覆いかけて、手を洗ってないことに気づき洗い場へと向かう。

     何度目だ。実験はやらかした方が考察考えやすくてレポートは書きやすい……が、やっぱり上手に行った方が嬉しいわけで。

    「ホールピペットも折っちゃうしさ……本当今日もごめんね」
    「誰だってミスはあるさ、気にしないで。あとはもう、先生チェックをどうにかして乗り切るしかないな……」

     二人して手を洗いながら思わずお互いにため息が漏れる。顔を上げればちょうど、先生が向かってくるところだった。








     出席番号前後で実験ペアが決まるものだから、加島くんとはこの一年ずっと一緒に実験をしている。
     私は決して実験が上手くない。収率高くなる実験でも収率低くなることはよくあるし、また、Excel でデータまとめるのも時間がかかってしまう。検量線作るのですら四苦八苦して。
     だから、失敗する度に成績いい彼に申し訳がない。実験結果が成績を左右してしまうと思うと、本当に。

    「良かった再実験にはならなくて。他の班から分けてもらえばいいわけだし」
    「そうだね。ありがとう、加島くんが先生に説明してくれたおかげだよ」

     再実験を免れる代わりに実験室の後片付けを命じられ、加島くんと二人、机を拭いていく。

     加島くんは優しい。今だって、今までだって私がミスすると慰めてくれるし、庇ってくれる。だから尚更、ペアが私で申し訳なくなるのだ。

    「よくよく考えると、栗城さんと実験するのも来週が最後なんだなーって。学生実験も残り一回か」
    「ふがいないペアでごめんね。他の子と組みたかったでしょ」

     本音を吐いて彼をちらりと見ると、眼鏡の奥の瞳が心なしか困惑の色を呈していた。図星を突いてしまったか。
     しかし、加島くんの口から出てきたのは思いがけない言葉で。

    「俺は栗城さんとペア組めておもしろかったよ。一生懸命予習してくるから俺も進行しやすかったし。収率云々はご愛嬌だよ。それで留年はあるまいし」

     白衣を脱ぎつつ加島くんは微笑んでくれた。いつの間にか器具ボックスも仕舞われていて。身長届かない私はハナから加島くんに頼むしかなかったことではあるけど。私も白衣脱ぎつつ、ああなんていい人か……と再確認させられた。

    「……それに、さ」
    「それに?」
    「感謝してるんだよ実は。俺男子校上がりで、大学で初めて女子混ざってさ。一緒に実験やった初回の俺、話しにくい奴だったでしょ」
    「まぁ今よりは……?」
    「栗城さんが優しいから俺も慣れてきて。女子と話すの。まだ共学の人等には及ばないけど……ありがとう」

     照れ臭そうにする加島くんに、私も顔が熱くなる。
     もしかして、やっぱり、私って。

    「じゃ、帰ろっか」
    「……うん」

     実験室を出れば先生がちょうど研究室から戻って来るところで。鍵を渡して私たちはロッカー室に向かう。

    「そういやさ、研究室どこに入るか決めた?」

     加島くんと私の帰路は別々。このまま帰るのは惜しくて、私は質問を投げてみる。

    「有機系がいいなとはぼんやり考えてるかな。高分子やりたいから」
    「そうなんだ。一緒だ。でも有機系、そん中でも高分子の研究室って毎年倍率高いよね。私入れるかな」
    「入れるよきっと。……一緒にまたやれたら俺嬉しいな」

     小さく呟かれた言葉に隣を歩く加島くんの顔を窺うも、そらされてしまった。
     私も一緒にまたやれたら嬉しいな。なんて、言ったらどうなるのだろう。でも、言うのはなんとなく躊躇われて。

    「来週最後の実験、頑張ろうな」
    「うん」

     来週、また。来週が最後。
     決めた。泣いても笑っても、来週は絶対に、この想いを。


    * * * * *


    ☆おまけ 瀬田(作者)が化学実験でやらかしたこと☆
    1. ホールピペットを何本か折る
    2. ガラスセルを割る(一個一万円)
    3. 生成物を零す
    4. 収率100%超え

    ……果たして伝わる方はどれほどか。

    お題:化学ネタ、リケジョ
    #私に書いて欲しい物語ってありますか
  • ▽ 2015 03.15

    20150315(日)00:00
    好きです、なんて君から伝えてくるなんて。出逢ったときと同じ、上弦の月が輝く小道のこと。「顔赤いよ」「そっちもね」「泣くなよ」頬に手をあてがいあった、そんな雪の夜。また逢えた喜びに、雪を溶かすような体温を二人して確かめ合って。@roubaititle様:赤い頬が生きていると伝える夜
  • ▽ 2015 03.14

    20150314(土)00:00
    題:代替的ホワイトデー
    本文は追記から。
    追記

    「これ、良かったら食べて」

     あたしは目の前の男子に小箱を差し出す。
     ピンク地に白いリボンを巻いたのは今朝のこと。中身のチョコレートも頑張ったのだからと、持ってくる際には壊れないようにかつ君に気付かれないようにと細心の注意を払って。
     待ち合わせは改札前、先日まで通っていた高校の最寄駅。授業をやっている頃なのもあって後輩の姿はなく、また近隣住民の姿もまばらだ。狙った通り。

     差し出された小箱を前に、見慣れない私服姿の君は目をしばたたかせる。そして首を傾げつつも箱を手に取ってくれた。あたしがほっとするのもつかの間のこと。
     そう、これからが勝負だ。この日のために可愛いワンピースとコートを買いに行ったんだもん。気合は十分。

    「今日って何の日か知ってる?」
    「……ホワイトデー? もしかしてそれ絡みで俺にくれんの?」
    「そう。正確にはバレンタインデーの代わりかな。二月は受験で用意できなかったから」
    「そっか。お互い合格おめでとうってことで何か俺も持ってくりゃ良かったかなー」

     リボンを弄びつつ笑う君の姿に、自分の中のスイッチが入った音がした。
     頑張れあたし、今日がもう二度とないチャンスだと思え。
     ぎゅっと、拳を握りしめ息を吸って。

    「今日は出来なかったバレンタインのつもりでこれ持ってきたから」
    「ん? どういうこと?」
    「あたしたち大学で離ればなれになるでしょ? だからその前に言っておきたくて。
     あたしは君のこと、好きです。それだけははっきり伝えておきたくて」

     言い切った。思わず正面の彼から目を逸らしてしまう。
     でもそれじゃいけない。泣いても笑っても、最後まであたしは見なくちゃいけない。この恋心が砕けるのか、それとも。
     意を決して目線を戻す。大いに疑問符を浮かべていた君の顔がみるみるうちに赤く染まっていくのが手に取るように分かった。

    「……まじか」
    「まじです」
    「……俺はどうしたらいい?」
    「それあたしに聞くの」
    「すんません」

     顔を隠すように、今度は君があたしから目を逸らして。
     意気地なしなんていう人もいるのかな。それでもあたしは、優しい君がずっと好きで。……そんな君だから、あたしははっきりと好きだと伝えるのが怖くて。
     でも、この先離れ離れ。進学先も違う。だから、あたしはぬるま湯に揺蕩うのをやめることにした。
     返事をちょうだい。君からの言葉なら諦めることだって頑張れるから。
     
    「……とりあえず、今俺が持ってる飴でも食う?」
    「くれるの? ありがと。そういや知ってる? キャンディをお返しにくれる意味って『好き』ってことらしいよ。それでいいの?」
    「その意味は初めて知ったけど……それでいいよ。ていうか、どっか行こうぜこのまま。今日はいい天気だしさ」

     だから、これからもよろしく。なんて君は照れながらあたしの手を引いて。
     大きく温かい、手から手へと伝わる体温。

     あたしがどれだけ緊張して、覚悟していったのかきっと君は知らないんだろうなぁ。
     でもいいや、一緒に居られるようになったんだもの。あいまいな関係のままじゃなく、恋心は砕けずに。

     空を見上げる。二月の雪はどこにもなく、明るく澄み渡る青空に君との幸せを願った。 
  • ▽ 2015 03.12

    20150312(木)00:00
    あんまりにも貴方が美味しそうに頬張るものだから。おおよそ似つかわしくない猫耳を生やした貴方は食べかけのクレープを差し出す。手を伸ばせば、かつりと阻むディスプレイ。「ここは遊園地、僕が手を引く貴女はお姫さま」。微笑み返して飲み込んで。暗く寂しい、思慕と偏愛。:@0daib0t 様
  • ▽ 2015 03.11

    20150311(水)00:00
    暦では春といえどもまだまだ寒くて。朝ご飯にとパンの袋を開ける。「ついでに俺のもー」トースターにパンを二枚セットしたら、こたつが私を吸い込んだ。「焼けたら私のも取ってきて」「寒いからやだ」足で攻防戦を繰り広げながら、こうして少しずつ体温を取り戻す。幸せな日課。:@0daib0t 様
  • ▽ 2015 03.09

    20150309(月)00:00
    嗚呼。泡沫ばかりが浮かび上がり、沈んでいくのは私の身体。優しくて残酷な貴方は手を伸ばしてくれた。でも、これは私が勝手に決めたことだから。これでいいの。嗚呼、嗚呼。貴方の顔が揺らめいて消えていく。どうかお元気で。では貴方が逝く時まで、さようなら。@roubaititle様:疑似海底
  • ▽ 2015 03.08

    20150308(日)00:00
    私の右手首に紅い蕾がついたのはいつだったか。何度むしっても生えるそれをどうすることも出来ずに時は過ぎた。そんな蕾は今朝、遂に満開を迎えた。バージンロードを歩きながら花弁は紅を散らす。彼と愛を育むたびに綻んだそれを失えば、私に何が残るだろう。@momo_propro様:手首に咲いた紅花