TwitterSSまとめ

一部はnoteにも同時公開しております。
note/米森

記事一覧

  • ▽ 2019.03.12

    20190318(月)20:52
    君の涙が滴り落ちる。生温かいそれを頬で受け止めながら、僕は君と過ごした日々を思い出していた。告白した教室、手を繋いだ観覧車。そして今はベッドの上。お願い、死んで。何度も繰り返し口にしながら君は僕の首に回した手に力を込める。これはきっと最後の思い出。それも、悪くはない。好きだ。君だけが。
  • ▽ 2019.03.03

    20190303(日)20:50
    綺麗な着物を着た人形たちが僕を見下ろしている。今日はひな祭りだ。両親と妹は朝から買い物。ぼくはお留守番。「女の子のお祭り」だから今日は妹が主役。うらやましい。このひな人形は妹のものだ。いいな。きれいなもの、かわいいものは女の子の特権じゃないのに。だから今のうちに一人占めするんだ。
  • ▽ 2018.06.24

    20180624(日)17:28
    試すように。疑うように。嘲るように。わたしは訊ねる。「あなたはだれ?」答えはない。悲しい。楽しい。そんな顔をしている…気がする。でもきっと、心には何の感情もない。「あなたはだれ?」わたしは、だれ? 曇り鏡に問い掛けながら、口紅をつける。わたしがいなくなる。あなたは微笑む。
  • ▽ 2018 06.22

    20180622(金)20:20
    底が見えない。詰められているきらきらした砂をスコップで掬い捨てていくけど、未だ。掬い続けて、スコップが折れても次は両手で、掬い上げるのを止めず、指先から滴る血が砂を染めていって。そして遂に底に達した。何もなかった。ああ、どうしたらいいの。詰め直そうにも、もう、何もない。
  • ▽ 2017 09.03

    20170903(日)00:00
    唇が乾く。点滅するスマホのライト。私はそれをじっと見つめていた。舌で唇を舐める。リップクリームの微かな甘さ。渇いたままの体、ひとつ震わせ夜空を仰ぐ。こんなに広い世界なのに私はひとりだ。ひとりぼっちになってしまった。私を照らす光は、熱は、どこにもない。虚しいね。唇をなぞる。
  • ▽ 2017 08.20

    20170820(日)00:00
    夕時には村の砦に幼子が集まる。「勇者の話を!」と目を輝かす子らに囲まれ、門番は楽しげに冒険譚を紡いだ。落日近く、子らは帰っていった、一人を除いて。「ほんとの続きは?」聡い子が門番に尋ねる。門番は首を振った。勇者の…今は門番なれども、冒険はまだ続いているのだから。
  • ▽ 2017 07.24

    20170724(月)00:00
    箱の中は空っぽ、否、底の見えない闇がある。この箱は持ち主が求める物を一つだけ出してくれるのだという。私は満ち足りているし欲しいものなんてない、と思っていたのに。この闇は何だろう。手を突っ込む。冷気が指を撫でる。…怖い。寂しい。唇を震わす。すると、たちまちただの箱になった。
  • ▽ 2017 07.11

    20170711(火)00:00
    赤い体が大きく伸び、縮こまる。硝子鉢の中でぷかりと泡を浮かべる金魚。嗚呼、何とも暢気で羨ましい。ここは平穏無事だと言わんばかりにゆったりと尾を揺らし、大きな出目で私を見る魚。割れた窓から吹く風は生温いばかり。ぱくぱくと、口開け酸素を求めている。赤い眼をした私も魚かな。
  • ▽ 2017 07.08

    20170708(土)00:00
    近所の公園で揺れていた短冊。ああ。七夕ってことすら忘れさせるような日々の忙しさよ。願い事は、特に思いつかないな。夢を見たところでねぇ?悲しくなるだけ。今夜もお酒飲んで寝るだけなのに。…そうだな、もし願うなら、素直さを取り戻すような毎日を過ごせるように。なんてね。
  • ▽ 2017 07.03

    20170703(月)00:00
    アイスクリームが溶けて、貴方のしなやかな指から滴る。形の良い唇から覗いた紅い舌が、白い雫を舐めとった。私の視線に気がつく貴方。艶やかに微笑んで、ほら、君のも溶けているよ。と、私の手を握る。眩暈。動悸。喉が渇いて、全身が熱くて。真夏の日差しのせいかしら。それとも。