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note/米森

記事一覧

  • ▽ 2025.05.15

    20250518(日)12:25
    「また明日ね」なんて、いつぶりに聞いただろう。振り返ると、きみが手を振ってくれている。ま、た、ね。一音ずつゆっくりと息を吸って、吐いて。きみの姿が小さくなるころには、今日一日きちんとお話できたかな、なんて、緊張もほどけていた。花の雲が空を渡る午後。吹き抜けていく風が心地よかった。
  • ▽ 2025.05.14

    20250518(日)12:24
    部活帰り、明るい夕暮れの中。パピコを半分こしてたわたしたちはふたりきり。スカートの裾が重なりかけたとき、きみは笑顔で駆け出していった。明日、きみはあの時選ばれた彼と結婚する。あの日のまま、お似合いのふたりでいるんだろうな。チョコミントを齧りながら、引き留めなかった手を握り込める。
  • ▽ 2025.05.09-2

    20250518(日)12:23
    波音は、子守歌だと嘯いて、わたしの頭を撫でては通り過ぎていく。体に染みゆく夜の静寂、預けた心はがらんどう。新月はただ、わたしを見ては微笑うだけ。次第に遠く、深く、収斂して、終息していって。水の色、光の残滓。魂と交わりながら底へ、溶けていって。ここは最果て、わたしのいのちの最果て。

    (過去作改稿)
  • ▽ 2025.05.09

    20250509(金)20:25
    世界がツナマヨおにぎりで出来ていたら、争いは無くなるのだろうか。それとも「なぜ梅ではない」「おかかもいいぞ」と戦火は続くのだろうか。答えはない。だが腹は減る。空腹こそ言葉を超えた共通言語。結局、味覚こそが最終審判だろう。そして、誰も真理にたどり着くことはない――ヒトであるが故に。
  • ▽ 2025.05.08

    20250509(金)20:24
    お茶だけ買って発車寸前に駆け込んだのが運の尽き。右からはたこ焼きと串カツ、左からは豚まんが襲ってくる。不戦敗の俺は目を閉じてやり過ごす他ない。名古屋までの我慢だ。気づけば車内はバイキング会場に。ビリケンさんがお好み焼きをねじ込んで来た瞬間、ハッと飛び起きた。「次は終点、東京です」
  • ▽ 2025.05.07

    20250509(金)20:23
    昔から、毎朝の幸せは炊きたてご飯にこそあった。立ちのぼる湯気に鼻を寄せれば心が躍り、「おかわりあるよ」との声に頬が緩んだ。一人暮らしを始めてからは、炊飯器の音で目を覚ます。「いただきます」実家から届いた梅干しと一緒に味わう、まさに至福のとき。小さな幸せを口にして、今日も頑張ろう。
  • ▽ 2025.05.04

    20250509(金)20:22
    空虚を抱えた少年は心を知りたかった。ゆえに恋に震え、怒りに燃え、涙に暮れることを勤しみ、卒なくこなした。やがて大人になってから、真理にたどり着く。「心とは何か?」と問い続けていた頃こそ、一番人間らしかった。欲しかったのは答えではなく、問いを抱く痛み。遅すぎる悟りを風だけが慰める。
  • ▽ 2025.05.03

    20250504(日)15:12
    月曜の朝はいつもより憂うつだ。そんなときは朝ご飯をゆっくり食べて、登校する。二時限目のチャイムを聞きながら昇降口へ。水色のハンカチが落ちていた。拾おうとしたら、「それ。わたしの」返事するよりも先に手が重なる。隣の席の子だった。なんとなく笑いあって、一緒に教室へ。悪くない一日かも。
  • ▽ 2025.05.01

    20250502(金)09:44
    残された服を袋に詰めだして四十九日が過ぎた。袋を縛り、掃除機をかけるたびに思い出は削れていき、排気音が消えれば静寂だけが残る。手についた糸くずを指先で丸め捨てると、だんだんと一人きりの呼吸の仕方を思い出した。窓を開けたとて未だ春の陽気は馴染まない。夏が来ても息は浅いままだろうか。
  • ▽ 2025.04.30

    20250501(木)09:22
    バイト終わり、コンビニ前のベンチでミント味のアイスを半分こ。指がかすめ、笑い声が零れ、溶けた雫が腕を伝う。帰り道、信号待ちで絡んだ指がそっとほどけた。翌朝、袖に触れても残り香はどこにもなくって。やがて秋風が吹いてきて、あの子は風に乗って姿を消した。きっと、あれは夏だけの淡い幻だ。