VTuberとイラストレーター、それぞれの夢と現実が交錯する二人の物語。
大切なのは、自分にとって本当に大事なものを見つけること――

VTuber「影山タクト」として軌道に乗った大翔（ひろと）。しかし、その表向きの成功とは裏腹に、彼は次第に活動への疲れを感じるようになっていく。ファンに期待される「タクト」の姿を演じ続けることに葛藤し、さらにマネージャー役であり彼女である詠美（よみ）から強まるコントロールに疑念を抱き始めている。
詠美のアドバイスや指示に従うことで得た人気ではあるものの、「タクト」であることが徐々に自分を縛るものにも思えてきてしまい、そして、詠美の期待と自分が求める方向性との狭間で揺れ動くようになる。

一方、まだ高校生の杏沙（あずさ）は、ひょんなきっかけから大翔と詠美に近づき、夢だったイラストレーターとしてタクトの活動にかかわるように。推しをサポートする役割を担うことに喜びを感じつつも、詠美からの厳しい言葉に疲れ、不安を募らせていく。彼女の憧れていた大人の世界は、思っていたよりも厳しく、時に冷たくさえ感じられるが、それでも夢を諦めたくはない。杏沙は大翔や詠美との関係の中で成長し、悩みながらも少しずつ自分の「理想のイラストレーター像」および「推し活」を見つけ出そうとするのだった。


それぞれの立場から夢に向き合い、葛藤しながらも前に進もうとする二人。
これは夢を追い、悩み、成長していく彼と彼女と、彼女の話。

※こちらは2024/12/1 文学フリマ東京39にて頒布予定の作品のサンプルです。