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カフェオレ
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「その後ね、……いなくなってた」
「そうか」
「飛べたんだね!グルーミングした後!」
花之は嬉しそうに声を弾ませている。
「ちゃんと生き返れたんだねえ。見つけた時はもうだめかと思ったけど、ちゃんと飛べた!」
ふふっと花之が笑うと、シノは軽く頷いてやった。
「……」
「今日の話はおしまいっ。教えてくれてありがとー」
元気よくそうまとめると、花之はそのまま前を向き、特に意味もなく鞄をごそごそやり始めた。
こういうことがある日のシノは、少しくすぐったいような心地がした。
たいてい受ける質問は防虫対策だからだ。
「こいつどうやって追い払う?」
「虫を家に入れないコツは?」
「この虫は危険?」
油女一族は虫の生態に詳しい。彼らに聞けば虫を生活圏から遠ざける方法がわかるはずだ。
そう考えて防虫対策を聞いてくる者はいても、虫の生態を聞いてくる者はほとんどいない。同族でもない限りーー。
「綺麗好き……か」
虫を汚物だと思っている人間は少なくない。蝿の類も嫌われやすい。
花之は驚いてそのカフェオレをこぼしただろうか。
花之はどんな顔でそいつを見ていただろうか。
そこまでは聞かなかったが、シノは花之からたまに話しかけられるとその後によくそんなことを考える。
前回はテントウムシの話だった。その前はセミの話だった。話しかけられた時の話は全部憶えている。
教室から虫を逃す時、花之は必ずオレを見ている。他のクラスメイトも当然オレを見ている。なぜなら、虫を逃さないと授業を続けられないからだ。
台所に出没する小蝿なら、アレかアレだろう。今度名前を教えてやろうかーー。
いや、今日の会話で充分だ。
なぜなら、あいつは満足そうに話し終えたからな。
シノは翌日、少し早めに教室に着く。花之がどこに座るのか見ておきたい。
その理由を、彼はまだ知らなくていいと思っている。
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