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約束
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翌日、花之が持ってきた物は装置の図解だった。
「これはね、私が作った装置の説明書。虫を触れないから作ったの」
シノは図解を受け取ると、ぱらぱらとめくって見た。
「こうすれば、虫を逃がせると思って……どう?」
妙な物を作る……。シノは2ページ目に戻って絵に指をさした。
「これでは不十分だ」
「どのへんが?」
シノの説明に花之は身を乗り出す。
筒とプラスチックの隙間を塞ぐのは、マスキングテープでは具合が悪い。シノがそう伝えると、花之はしぶしぶ頷いた。
「……やっぱり?そっかぁ……。」
シノが装置の問題点をひと通り説明し終えると、花之はしみじみとこう言った。
「本当に触れなくてさ。だから、筒」
「うむ」
「でもね、なるべく殺したくないんだ」
「……」
虫の処理方法はいくらでもある。人を呼ぶ、叩き落とす、ティッシュで包む。
どれでもなく、触らずに済む装置を発明するとは。シノは目の前にいる花之をまじまじと見つめた。
……変な奴だ。
「来週は来る?」
「ああ」
シノはまだ答えを持っていなかった。任務が入るかもしれない。雨が降るかもしれない。だが、「ああ」と答えた。
「よかった。直してくる」
「……昼に来い」
「うん!」
花之はぱっと笑顔になり、また背を向けた。
小さくなってゆく彼女を見送ってから、シノは足元に視線を落とした。
花之はどんどん走っていった。
やった。話せた。シノと話せた。約束できた。来週だ。また話せる。嬉しい。嬉しい。
来週までに装置を改良しよう。
そして、また見てもらおう。
家に出没する虫を、私が全部逃がせるまで。
「……やった!約束だっ」
いつか、シノみたいに。
虫を傷つけずに、そっと逃がす。
触れないけれど、虫を逃がすんだ。
シノみたいに。
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