私を嫌ってたはずの後輩が過保護になった件
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「好きじゃない。むしろ、ああいう落ち着きのないタイプ苦手なんだよ」
1年の教室の奥から聞こえてきた言葉に体が固まった。
地方の任務を終え、お土産を片手に後輩たちの教室にスキップをしそうなくらいに軽い足取りで向かったのが数分前。「伏黒って名前さんのこと好きなんだろ」教室の扉に手が触れようとしたところでそんな野薔薇ちゃんの声が聞こえ、ぴたりと手を止める。
いや、野薔薇ちゃん突然なんてことを言い出すんだと、私は扉の前で固まり次の言葉を待つ。
「……なんでそう思う」
少しの沈黙のあと聞こえてきた伏黒くんの声はすごく落ち着いた大人の男性のような声だった気がする。元々低い声をしていたけど、そんな声だせたんだってくらい、いつもより格段に低い声だった。
「だってあんた、いつもあの人のこと見てんじゃない」
「あの人なんて失礼だろ」
そんな野薔薇ちゃんの返しに絶対そのツッコミは違うでしょ、と言いたくなるような伏黒くんの声が聞こえてくる。
野薔薇ちゃん、悠仁くんのどうなんだと言うわいわいと楽しそうな声と共に聞こえる、ドキドキとうるさい自分の心臓の音。
ふぅ、となるべく静かに息を吐いてどうしたものかと思考を巡らせ聞こえてきたのは「好きじゃねえ」と吐き捨てるような声。
伏黒くんのことを恋愛的な目線で見たことなんかなくて、努力家で呪術師としての才能もあって。彼のことは後輩だけど呪術師としては尊敬すらしてる。そして、可愛い後輩だなとも思っていた。
まあ、少なからず伏黒くんも私のことは良い先輩くらいには思ってくれてるだろうなんて考えていれば、バン!と何かを叩いたような大きな音が彼らのいる教室から聞こえた。
「好きじゃない。むしろああいう落ち着きのないタイプ苦手なんだよ」
悲報。良い先輩どころか、可愛がっていた後輩にどうやら嫌われていたらしい。
確かに、真希ちゃんにもよく「お前はもうちょっと落ち着け」なんて言われるけど.....!
苦手ってつまりは嫌いというこだ。自惚れてた自分への羞恥心やら、嫌われてたことへのショックやらで最早泣きそうだ。
さすがにこの空気の中、「お疲れー!これお土産だよ〜!!」なんて入って行けるほど空気の読めない人間でもなけりゃメンタルも強くない。多分そんなこと出来るのは五条先生くらいだろう。
......うん。
ここは一旦帰ろう。明日出直そう。お土産も幸いに日持ちするやつだ。何も今渡さなくてもいい。うん、帰ろう。というか、一刻も早く帰りたい。
盗み聞きなんかしてごめんなさい。心の中で1年生に謝罪をして、自分の部屋へと足早に戻った。
部屋に戻って落ち着こうにも頭の中はずっと今日の伏黒くんのあの言葉しか考えられない。よく話もするし仲良いって思っていた分、あまりにもダメージが大きい。そんな私よりも嫌いな人に構われ続けた伏黒くんの方がよっぽどストレスだったに違いない。
どうするべきか、と頭をフル回転させる。んんん。今まで伏黒くんに対してした事と言えば、とにかく静かに話を聞いてくれる彼に私が喋り倒したり、頭撫でたり......。いや、嫌いな人間に触られるってめちゃくちゃ嫌じゃん。
やっぱりちょっと距離を取ろう。伏黒くんのためにも、私がこれ以上伏黒くんに嫌われないためにも。もうこれしかない。
明日から伏黒くんと距離をとる。そう心に決め眠りについた。
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2024.1.31 修正
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