走れ!恋心/駆けろ!恋は盲目
「アル、はいこれ」
黄色のリボンが結ばれた濃い青色の小箱を、おずおずとチャコが差し出してきた。差し出されるがまま小箱を受け取ったアルペックは、チャコと小箱を交互に見比べる。
「バレンタインだから王国の子供たちに配ってたんだけど、1つだけ余っちゃって。よかったら貰ってくれない?」
「あっ、今日バレンタインか!オレにもくれるん?えーめっちゃ嬉しい!」
「あははっ、アルってば大袈裟だよ」
はにかんだような表情でアルペックの言葉に耳を傾けていたチャコは、ふっと口元を綻ばせてやわらかく笑った。その笑顔に、思わず見惚れてしまいそうになる。……なんでだろう、いつもかっこよくてクールなチャコが、今日はなんだかとても可愛く見える。
「ありがとなチャコ!ホワイトデー楽しみにしとって!」
「アルって律儀だよね。……別に余り物を押し付けただけだし、そんなの気にしなくて良いよ?」
「律儀っちゅうか、オレがチャコにお返ししてえだけやけん!」
今度はほんの少しだけ寂しげに笑ったチャコの言葉に、アルペックはちょっぴり大きくなってしまった声で返事をする。理由は上手く言えないけれど、チャコには笑っていてほしい。空いていた左手で、チャコの頭をフード越しにわしゃわしゃとアルペックは撫でた。
「ちょっ、アル!?髪が乱れるから……!」
「髪なら直せば大丈夫!」
拒むように自身の頭に手を伸ばしたチャコだったが、本気で止めようとはせず照れたように頬を赤らめながら、されるがままで大人しくむくれている。……チャコもこんな表情するんだな。騎士としてチャコと共に行動するようになってからそこそこになるが、チャコの新たな一面を知れた気がしてアルペックは嬉しくなった。これからもっと知っていけたら嬉しい……なんて考えながら、チャコの頭からアルペックが手を離すと、表情を隠すように口元を袖で隠していたチャコが、何食わぬ顔でささっと乱れた髪を整える。一通り整え終わり満足したのか、まだ頬に赤みがさしたままのチャコがアルペックの方に向き合った。
「まったく、アルは……とにかく!お返しは気にしなくて良いからね?俺の気持ちだから。あと、ちょっとお城で呼ばれてるから、また後でね?」
「えっ?ちょ、チャコ!?」
有無を言わさずにそう告げたチャコは、またね?とイタズラっぽい笑みをアルペックに向けた後、くるりとその場で踵を返す。そのまま急ぐようにお城の方へ走って行ってしまった。
「お返しくらいさせてくれてもええやんー……」
遠ざかっていくチャコの背中を見送ったアルペックは、右手に持っていた黄色いリボンの青い小箱に目を向けた。
「あれー?アルペック様のだけラッピングが違う!」
「本当だ!黄色のリボン可愛いね!」
ふと足元から可愛らしい二つの声が聞こえ、そちらへ目を向ける。そこには赤いリボンが結ばれた、ピンク色のラッピング袋を手にした男児と女児が立っていた。
「おっ!それ、チャコから貰ったん?」
「うん!バレンタインだからってチャコ様がくれたんだよ!
「そっかー、オレもみんなとお揃いでチャコから貰ったんだ!」
「でも、アルペック様のは僕たちのとちょっと違うね?」
「た、たしかに……?オレのは青と黄色やな」
再び手元の小箱へと視線を落とす。濃い青色に黄色のリボン、どこかで見たような……?
「わかった!アルペック様のお洋服の色!チャコ様はきっと、アルペック様の色で作ったんだね!」
「たしかに……!?でも、余ったからくれるって言っとったしなあ」
先ほどのチャコの言葉を思い出す。こちらに向けるやわらかな笑顔に、思わず見惚れてしまいそうになったことも一緒に。
「1つだけ違う色のが余るなんておかしいもん!きっとアルペック様のために用意したんだよ!」
「だよねだよね!それに、バレンタインは自分の気持ちを伝える日ってお母さん言ってた!チャコ様もアルペック様に伝えたいことがあるのかな?」
「チャコが、オレに……?」
兄妹だったらしい子ども達の名前を呼ぶ声が、どこからか聞こえてくる。バイバイ!と子ども達はアルペックに手を振りながら、母親と思わしき人物の元へ駆けて行った。手を振り返しながら、アルペックはぼんやりと思考を巡らせる。
チャコがオレのためにわざわざ?でも、確かにラッピングが自分の物だけ違う。それにチャコ、さっき俺の気持ちだって言ってた……?オレは?オレの気持ちは?
アルペックの手のひらに収まる青い小箱を見つめながら、数分前に見送ったチャコの背中を思い出す。
はにかんだ表情がやけに可愛くて、寂しげな表情に笑っていてほしいと思った。チャコの新たな一面を知れて嬉しかったし、これから一緒に過ごしていく中で、もっと知りたいと思った。
——ダメだ、今すぐにチャコの顔が見たい。
この気持ちの正体が何なのか。今のアルペックにはまだ分からないし、これからチャコと共に過ごしながら知っていければ良いと思っている。ただ、アルペックには今すぐチャコに伝えたい気持ちがあるというだけだ。
黄色のリボンが結ばれた小箱を片手に、芽生えたばかりのチャコへの想いを胸に——
軽快な足取りで、アルペックはその場から走り出した。
黄色のリボンが結ばれた濃い青色の小箱を、おずおずとチャコが差し出してきた。差し出されるがまま小箱を受け取ったアルペックは、チャコと小箱を交互に見比べる。
「バレンタインだから王国の子供たちに配ってたんだけど、1つだけ余っちゃって。よかったら貰ってくれない?」
「あっ、今日バレンタインか!オレにもくれるん?えーめっちゃ嬉しい!」
「あははっ、アルってば大袈裟だよ」
はにかんだような表情でアルペックの言葉に耳を傾けていたチャコは、ふっと口元を綻ばせてやわらかく笑った。その笑顔に、思わず見惚れてしまいそうになる。……なんでだろう、いつもかっこよくてクールなチャコが、今日はなんだかとても可愛く見える。
「ありがとなチャコ!ホワイトデー楽しみにしとって!」
「アルって律儀だよね。……別に余り物を押し付けただけだし、そんなの気にしなくて良いよ?」
「律儀っちゅうか、オレがチャコにお返ししてえだけやけん!」
今度はほんの少しだけ寂しげに笑ったチャコの言葉に、アルペックはちょっぴり大きくなってしまった声で返事をする。理由は上手く言えないけれど、チャコには笑っていてほしい。空いていた左手で、チャコの頭をフード越しにわしゃわしゃとアルペックは撫でた。
「ちょっ、アル!?髪が乱れるから……!」
「髪なら直せば大丈夫!」
拒むように自身の頭に手を伸ばしたチャコだったが、本気で止めようとはせず照れたように頬を赤らめながら、されるがままで大人しくむくれている。……チャコもこんな表情するんだな。騎士としてチャコと共に行動するようになってからそこそこになるが、チャコの新たな一面を知れた気がしてアルペックは嬉しくなった。これからもっと知っていけたら嬉しい……なんて考えながら、チャコの頭からアルペックが手を離すと、表情を隠すように口元を袖で隠していたチャコが、何食わぬ顔でささっと乱れた髪を整える。一通り整え終わり満足したのか、まだ頬に赤みがさしたままのチャコがアルペックの方に向き合った。
「まったく、アルは……とにかく!お返しは気にしなくて良いからね?俺の気持ちだから。あと、ちょっとお城で呼ばれてるから、また後でね?」
「えっ?ちょ、チャコ!?」
有無を言わさずにそう告げたチャコは、またね?とイタズラっぽい笑みをアルペックに向けた後、くるりとその場で踵を返す。そのまま急ぐようにお城の方へ走って行ってしまった。
「お返しくらいさせてくれてもええやんー……」
遠ざかっていくチャコの背中を見送ったアルペックは、右手に持っていた黄色いリボンの青い小箱に目を向けた。
「あれー?アルペック様のだけラッピングが違う!」
「本当だ!黄色のリボン可愛いね!」
ふと足元から可愛らしい二つの声が聞こえ、そちらへ目を向ける。そこには赤いリボンが結ばれた、ピンク色のラッピング袋を手にした男児と女児が立っていた。
「おっ!それ、チャコから貰ったん?」
「うん!バレンタインだからってチャコ様がくれたんだよ!
「そっかー、オレもみんなとお揃いでチャコから貰ったんだ!」
「でも、アルペック様のは僕たちのとちょっと違うね?」
「た、たしかに……?オレのは青と黄色やな」
再び手元の小箱へと視線を落とす。濃い青色に黄色のリボン、どこかで見たような……?
「わかった!アルペック様のお洋服の色!チャコ様はきっと、アルペック様の色で作ったんだね!」
「たしかに……!?でも、余ったからくれるって言っとったしなあ」
先ほどのチャコの言葉を思い出す。こちらに向けるやわらかな笑顔に、思わず見惚れてしまいそうになったことも一緒に。
「1つだけ違う色のが余るなんておかしいもん!きっとアルペック様のために用意したんだよ!」
「だよねだよね!それに、バレンタインは自分の気持ちを伝える日ってお母さん言ってた!チャコ様もアルペック様に伝えたいことがあるのかな?」
「チャコが、オレに……?」
兄妹だったらしい子ども達の名前を呼ぶ声が、どこからか聞こえてくる。バイバイ!と子ども達はアルペックに手を振りながら、母親と思わしき人物の元へ駆けて行った。手を振り返しながら、アルペックはぼんやりと思考を巡らせる。
チャコがオレのためにわざわざ?でも、確かにラッピングが自分の物だけ違う。それにチャコ、さっき俺の気持ちだって言ってた……?オレは?オレの気持ちは?
アルペックの手のひらに収まる青い小箱を見つめながら、数分前に見送ったチャコの背中を思い出す。
はにかんだ表情がやけに可愛くて、寂しげな表情に笑っていてほしいと思った。チャコの新たな一面を知れて嬉しかったし、これから一緒に過ごしていく中で、もっと知りたいと思った。
——ダメだ、今すぐにチャコの顔が見たい。
この気持ちの正体が何なのか。今のアルペックにはまだ分からないし、これからチャコと共に過ごしながら知っていければ良いと思っている。ただ、アルペックには今すぐチャコに伝えたい気持ちがあるというだけだ。
黄色のリボンが結ばれた小箱を片手に、芽生えたばかりのチャコへの想いを胸に——
軽快な足取りで、アルペックはその場から走り出した。
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