新・成り代わりハリー・ポッターと愉快な仲間達

 ホグワーツ生活が始まった。階段はマジで動くし、薬草学は楽しかった。普通の植物じゃないからほんと楽しい。あ、そういえばドラコとの絡みが全くなかったんだけどこの前、遂にあったんだ。魔法薬学の授業の前で。やれ、魔法使いには優秀な家系が云々、血筋が云々。俺が答えるより先にロンが動いた。

「えー?アタシとしては、ドラコと仲良くしたいんだけど?親同士の確執とか気にするのってダサくなぁい?」
「ア、アタ?」
「だぁーってー、アタシ別にドラコに何もしてないし、何も分からないし?それはドラコもでしょー?せっかくだから仲良くしましょうよ〜∠(。ゝ▽・)キラッ☆」
「な、なんなんだ君のその話し方!頭おかしくないか?!女みたいな話し方して!」
「えー、だってアタシ、女の子だもん♡」
「はぁあ?!」

 ドラコが完璧にロンのペースで乱されていて見ていて面白かった。

「おい」
「な、なんだ?グレンジャー。マグル出身が僕に対して随分な態度じゃないか」
「言っておくが、ロンは俺の女だ。間違ってもちょっかい出すなよ」
「出すかぁあ!!!」

 あー、ハーマイオニーの背中がとても楽しそうだ。ロンも楽しそうだ。このカップルは新しいオモチャを見つけたようだ。どんまい、ドラコ。君の未来は明るいよ……多分。
 俺は二人にからかわれて顔を真っ赤にしているドラコにジェスチャーで『ごめん』と謝りつつ席に着いた。教科書とノートを開いて机に置いた(羊皮紙はレポートの時に使う。基本はノートで取ることにした)
 3人で机に腰掛けて教授を待つ。するとバーン!とドアが壊れるんじゃね?という勢いで開けたスネイプ先生が登場。肌が白い。背が高い。バリトンボイスがマジやばい。左隣のロンはヽ(*>□<*)ノキャ━━ァ♡♡状態だ。見た目は普通にしてるけど。そしてそんなロンに気づいたハーマイオニーは殺気立っている。いや、スネイプに殺気飛ばすなよ、可哀想じゃん。
「この授業では、無駄に杖を振り回したり、呪文を唱えたりはしない」
 あれ、この流れって俺もしかして当てられるやつか?うーん……
「ハリー・ポッター!!」
「はい、分かりません!なのでご教授願います!」
「……吾輩はまだにも言っとらんがね?」
「いやだってこの流れは絶対嫌がらせで習う範囲外の質問投げて来るところじゃないっすか。父さんがスネイプにはそういう所があるから気をつけろって昔言ってたんで」
「なっ……!」
「あと、父さんがスネイプ先生を貶すことを言うたんびに母さんがめっちゃ怒ってました。確か2人って幼なじみとかなんですよね?」
「…………っ」
 あれ?今言うのはダメだった?
「ハリー…」
「今じゃないわ…言うのは、今じゃない」
「あれ?そうなの?ちなみに母さんはいつも自慢の幼なじみだーって言ってたけど」
「フルコンボじゃねぇか…」
「どんまい、先生!ハリーはこの通り天然です!」
 なんでか知らないけどこの流れで俺5点も減点されたんだけど酷くね?
 それから変身術の授業!!めっちゃ可愛い猫がいて、抱き締めに走ったらマクゴナガル先生で俺めっちゃ焦った。そして皆に笑われた。先生も笑いを堪えていた。解せん。
 ほうきの授業は、ちゃんとやったー。ほうきに乗るのは楽しかった。でも俺、高速恐怖症だから早くは乗れないんだ。だからきっと成績は平均だと思う。なんでみんなクィディッチやりたがるかね?危険極まりないスポーツだと思うんだけど。

「どう思う?リドル」
《とにかく君のホグワーツ生活が有意義だと言うことは伝わったよ》
「うん!めっちゃ楽しい!」
《それにしても高速恐怖症か…魔法界の移動は基本とても早いか、遅いかだけど大丈夫なの?》
「……遅い方を選びます」
《だろうね》
 クスクスと、耳元でリドルの笑い声が聞こえる。なんだか酷くくすぐったい。夢で見たのと同じ声。安心する声だ。
《まぁ、メールで毎日報告もらってたから内容は把握してるよ。教授達の人物像とか》
「……リドル、も…ホグワーツ生なんでしょ?」
《……まぁね。なんて言ったらいいかなぁ…ちょっと実験をしてね。上手くは、いったんだけど、まぁ、ゴーストみたいな状態になってるから成功したとは言えないかな》
「そうなんだ…夢で会ってた時は?」
《あの時は、実験する前だったよ。実験した後から君とは夢で会えなくなってしまったみたいだ》
「そっか…だからずっと夢に出てこなかったんだ…」
 何してるかって?電話してます。『必要の部屋』で、リドルと。いやなんでだよ?!ってツッコミが来そうなんですが、まぁ、色々ありまして。リドルの声が聞きたくなってしまったんだ。でもその色々を上手く言い出せなくて、改めてのホグワーツ生活の報告になっているところ。
《ハロウィンはどうだった?飾り付けとか、賑やかだったろ?》
「そーなんだよ!聞いてよリドル!ハロウィンパーティー中にさ、トロールが地下に現れてさ」
《は?》
「んで、そういえばハーマイオニーがいないと思ったら急な腹痛でトイレに行ったらしくてさ。ヤバいからロンと迎えに行ったんだよ」
《は??》
「そしたら、初めて来た女の子の日でハーマイオニーがパニクってて、ロンと二人でなだめてたら女子トイレにトロールが入ってきてさー」
《は???》
「とりあえず、生理用品諸共渡して必要なことは終わったあとだったんだけど虫の居所が悪いハーマイオニーがトロールにめちゃくちゃ八つ当たりしてさー」
《…………》
「持ってた木刀でノックアウトしたんだよ、いやー、凄かった。さすがハーマイオニー。剣術の達人。ロンも槍を持って臨戦態勢だったけど、出る幕はなかったな。あ、俺は危ないから下がってなさいって後ろに追いやられていたから怪我とか無いよ」
《ツッコミどころしかないんだけど……11歳でトロールを撃退したのは奇跡だからね?普通そんなことできないしやろうとしないよ……》
「ハーマイオニーならやっちゃうなー。やれちゃうからなぁ」
 ケラケラと笑いながら俺が笑うと、電話口でとても深い溜息を吐かれた。そうだよなー、傍から聞いたら俺も同じリアクションすると思う。
《あまり厄介事に首を突っ込まないでくれよ?》
「アハハハ〜、気をつけるよ」
《ところでハリー》
「ん?」
 この『必要な部屋』はほんとに便利だ。欲しいと思った瞬間にそれが出てくる。今、暖かいホットミルクが出てきた。それを手にして1口飲む。うん。大丈夫。少し落ち着いたかもしれない。

《空元気は、もう終わろうか》

 リドルの一言に、ヒュッと息を飲んだ。なんで、バレた?

《付き合いが浅ければバレなかったかもしれないね。でもね、ハリー。僕は割と人の感情のブレには機敏な方なんだ。特に君に関してはね。何があったの?声、震えてるよ。知ってた?》
 さっきまでとは違う、優しい声音でリドルが俺に問いかける。何かあったのか、と。俺は考える。何を話したかったんだろう。ただ、声が聞きたくて…

「なん、でもないよ。声が聞きたくなって…」
《何かあった?》
「メールだけじゃなくて、改めてちゃんと、ホグワーツでの生活を言いたくて」
《何かあった?》
「珍しい、トロール事件のこと、話したく……て…」
《ハリー、何でもいいんだよ。何か胸につっかえてるんだろ?》
「───…っ」
《大丈夫、話してごらん?》

 違うんだ。ほんとはね、ずっと誰かに話したかったんだ。きっと。

「……どこから、話したらいいのか」
《なんでもいいよ。話しやすいところから話して?》

 これを言うのは、どうなんだろう。リドルに言うのはおかしくないか?でも、なんでだろう。ハーマイオニーでも、ロンでもなくて、リドルに聞いて欲しい。

「……今日、ハロウィンでしょ?」
《うん》
「…今日なんだ。10年前の、今日なの」
《──…》
「父さんと、母さんが…《最後まで、言わなくていい。伝わった》

 “死んだ日”だと、最後までリドルは言わせてはくれなかった。そのことにホッとした俺の目からは、気がつけば涙が零れていた。このことで泣いたのは、何時ぶりだろうか。下手すれば、死んだあの日から泣いてないかもしれない。

「ずっと、誤魔化してきたけど……」
《うん》
「教授達、の目が」
《……うん》
「視線が……っ」
《君に両親を重ねてるんだね…》

 そうなのだ。どの教授も、ハグリッドも。俺に両親のどちらかを重ね見る。それが酷く居心地が悪かった。懐かしそうに目を細められた後に、やっと俺を認識する。それが毎日繰り返されていた。ぶっちゃけ、ダーズリー家ではそんなことはほぼ無かった。ペチュニア叔母さんですらそれがほぼ無かったんだ。

「わかってるんだけど…なんだか、それがすごく嫌で…でも言えなくて、ずっとモヤモヤして…」
《そっか》
「ハーマイオニー達に、これ以上甘えるわけにはいかないし……」
《甘えても良さそうだけど、話を聞く限りでは》

 恐らくそうだと思う。けれど、これ以上二人に負担をかけたくなかった。同等でいたい。だから、弱さを見せたくなかった。でもそうなると俺はリドルには弱さを見せられるということなのだろうか。なんでだろう。敵、なのに。

《でも、寄りかかる先に僕を選んでくれたこと、とても光栄に思うよ》
「……でも、会えない」
《……ハリー?》
「…会いたい」
《……》
「リドルに、会いたい…」

 夢で逢えたらこんな風に思わなかったかもしれない。フルーツタルトを作ったあの時間のように、またあの暖かい世界に行きたい。匂いも気配も感じられる、あの空間へ行きたい。気づけば、俺にとってリドルと会える夢の日々は、かけがえないものになっていたようだった。

《……ハリー》

 リドルは少しの沈黙の後、芯の通ったハッキリとした声で言った。

《クリスマスまで待ってて。会いに行くよ》
「え?」
《手段が無い訳じゃない。会いに行ける。ただ少し、時間をくれないか?クリスマスに必ず会いに行くから》
「──…そん…なこと《やってみせる。君の為なら》

 まっすぐに迷いの無い声で、さらにリドルは続けた。

《君の本当の願いは、僕が叶える》

 俺の、本当の願い。

 平和な学校生活?静かな生活?


 違うよ。

 ほんとはね。


《独りにしないよ》 『独りにしないで』




 
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