目覚めの朝
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翌日。
ゆっくりと瞼を開けると、目に映ったのは見慣れない白い天井だった。
周囲を見渡せば、薄いカーテンが周囲を囲んでいる。
――病院だ、とようやく理解する。
昨夜のことを記憶の奥から辿ろうとしたその時。
カーテンの向こうから、明るい声が響いた。
「失礼しまーす! おはようございます!」
若いナースがカーテンを開け、柔らかな笑みを浮かべてベッドへ近づいてきた。
「気分はどう? まだ少しだるいかもしれないけど……大丈夫?」
少女は声を返せず、ただゆっくりと首を横に振った。
ナースは少女の容態を一通り確認すると、カルテをぱらりとめくりながらふっと表情を緩めた。
「……そうだ。昨日ね、あなたのことをここまで運んでくれた人がいたの」
少女の指先がピクリと震える。
ナースはその反応に気づいたのか、優しく続けた。
「痩せてるのにね、びっくりするくらい力持ちでさ。しかもすっごい心配してたよ。
あなたが眠ったあとも、ずっとそばにいて……」
言いながら、ふとクスッと笑う。
「片目の眼帯した……ちょっと怖そうなんだけど、実は優しい人?」
少女の胸の奥がじわりと温かくなり、昨日の最後の光景――大きな手に抱き上げられた感触だけがふっと蘇る。
ナースは気遣うように声を和らげた。
「あとで来るんじゃないかな。朝から何度か様子見に来てたみたいだしね」
少女は言葉にならないまま、それでも静かに目を伏せて頷いた。
ナースから「先ほど、彼女が目を覚ましましたよ」と電話を受けた瞬間、真島の指先がわずかに止まった。
「……マジか。ほな今すぐ行くわ」
短くそう告げて電話を切ると、真島はコートを肩に引っかけ、柄本医院の廊下を早足で進んだ。
靴音がコツ、コツ、と落ち着かないリズムで響く。
部屋の前で一度だけ深呼吸する。
思っていた以上に胸がざわついていた。
(……無事でよかったわ)
ノックしようとした手を上げたその時、
カーテン越しに小さな影がゆっくりと動くのが見えた。
その気配だけで、昨夜抱き上げた時の軽さや温度が蘇る。
怒りと焦りでぐちゃぐちゃだった感情の中で、唯一確かだった“守らなあかん”という衝動。
真島は短く息を整え、静かに扉を開けた。
「よう。……起きたんやってな」
低い声が病室に落ちる。
ベッドの上の少女は、その声を聞いた瞬間、はっと顔を上げた。
真島と視線が合うと、怯えではなく――安心の色がゆっくり広がっていく。
真島は眉を少し下げ、
昨夜とは違う穏やかな声音で続けた。
「無理して喋らんでええ。……取りあえず、生きとってくれてよかったわ」
少女の喉が小さく震え、涙が滲む。
声にならないまま、それでも“ありがとう”と伝えるように、そっと頭を下げた。
真島はその仕草に、胸の奥がじんと熱くなるのを感じていた。
す
ゆっくりと瞼を開けると、目に映ったのは見慣れない白い天井だった。
周囲を見渡せば、薄いカーテンが周囲を囲んでいる。
――病院だ、とようやく理解する。
昨夜のことを記憶の奥から辿ろうとしたその時。
カーテンの向こうから、明るい声が響いた。
「失礼しまーす! おはようございます!」
若いナースがカーテンを開け、柔らかな笑みを浮かべてベッドへ近づいてきた。
「気分はどう? まだ少しだるいかもしれないけど……大丈夫?」
少女は声を返せず、ただゆっくりと首を横に振った。
ナースは少女の容態を一通り確認すると、カルテをぱらりとめくりながらふっと表情を緩めた。
「……そうだ。昨日ね、あなたのことをここまで運んでくれた人がいたの」
少女の指先がピクリと震える。
ナースはその反応に気づいたのか、優しく続けた。
「痩せてるのにね、びっくりするくらい力持ちでさ。しかもすっごい心配してたよ。
あなたが眠ったあとも、ずっとそばにいて……」
言いながら、ふとクスッと笑う。
「片目の眼帯した……ちょっと怖そうなんだけど、実は優しい人?」
少女の胸の奥がじわりと温かくなり、昨日の最後の光景――大きな手に抱き上げられた感触だけがふっと蘇る。
ナースは気遣うように声を和らげた。
「あとで来るんじゃないかな。朝から何度か様子見に来てたみたいだしね」
少女は言葉にならないまま、それでも静かに目を伏せて頷いた。
ナースから「先ほど、彼女が目を覚ましましたよ」と電話を受けた瞬間、真島の指先がわずかに止まった。
「……マジか。ほな今すぐ行くわ」
短くそう告げて電話を切ると、真島はコートを肩に引っかけ、柄本医院の廊下を早足で進んだ。
靴音がコツ、コツ、と落ち着かないリズムで響く。
部屋の前で一度だけ深呼吸する。
思っていた以上に胸がざわついていた。
(……無事でよかったわ)
ノックしようとした手を上げたその時、
カーテン越しに小さな影がゆっくりと動くのが見えた。
その気配だけで、昨夜抱き上げた時の軽さや温度が蘇る。
怒りと焦りでぐちゃぐちゃだった感情の中で、唯一確かだった“守らなあかん”という衝動。
真島は短く息を整え、静かに扉を開けた。
「よう。……起きたんやってな」
低い声が病室に落ちる。
ベッドの上の少女は、その声を聞いた瞬間、はっと顔を上げた。
真島と視線が合うと、怯えではなく――安心の色がゆっくり広がっていく。
真島は眉を少し下げ、
昨夜とは違う穏やかな声音で続けた。
「無理して喋らんでええ。……取りあえず、生きとってくれてよかったわ」
少女の喉が小さく震え、涙が滲む。
声にならないまま、それでも“ありがとう”と伝えるように、そっと頭を下げた。
真島はその仕草に、胸の奥がじんと熱くなるのを感じていた。
す