血の決戦
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部屋のドアノブが「ギィィ…」と鈍く軋む音を立てて開く。
その瞬間、気配はすっと消えたかのように室内から掻き消えた。
彼女は素早く書棚の影に滑り込み、静かに呼吸を浅く整える。
まるでそこに「存在していない」かのような気配の消し方。
足音がひとつ、またひとつ…部屋の奥へと入ってきたのは龍崎本人だった。
「……ったく、あいつら使えねぇな。警戒が緩い。他に見られたらどうすんだよ」
ぼやきながらデスクに近づき、無造作に上着を放り投げると、龍崎はPCを起動し始めた。
──隠れていたあやかの耳には、キーボードを打つ音が小さく響く。
彼の独り言が、次第に核心に触れ始める。
「春雨のデータはこれでいい…阿伏兎が渡したサンプルは極秘保管っと。神威の到着予定は…ああ、明日深夜か。問題ねぇ、真島組をこのタイミングで潰せりゃ、東城会の上層部は混乱する」
(やっぱり……!)
心の中で拳を握る。
彼の計画は完全に“真島潰し”に向かっていた。それが成功した暁には春雨と手を組み、裏で東城会を崩壊させようとする大規模なもの。
──けれど今動けば、証拠も何もかもが無になる。
だからこそ、じっと気配を殺してその場をやり過ごす。
そして数分後。龍崎が部屋を出ていき、ドアが閉じられた瞬間――
「ふぅ…」
あやかは音を立てぬように書棚の影から出て、再びデスクに忍び寄った。
目を光らせ、PCのパスワード解除のログを記憶。机の中にはICレコーダーのような小型装置が隠されており、それもこっそり写真に収める。
「これで、真島さんに報告できる…!」
でも、心の奥にひとつ引っかかることがある。
(あいつ、“明日の夜”って言ってたよね…神威が来る…?)
──春雨の団長、神威。過去にあやかを攫い、煉獄に突き落とした戦闘狂。
背筋に、ほんの一瞬、ひやりとした冷気が走った。
(あたしは…また、あいつと会うのか…)
だけど、もう逃げるつもりはない。
そして静かに、ビルの窓から夜の神室町の闇へと、姿を消した――。
ビルの屋上に、夕日が出ていた。神室町の喧騒とは打って変わって、そこは静まり返っていた。
──その静寂を破ったのは、鮮やかな赤毛と無邪気な笑みを浮かべる男だった。
「やっぱり、来たねぇ」
神威は背を向けたまま、ビルの縁に腰かけていたが、気配を感じ取ってゆっくりと振り返る。
「久しぶりだねぇ、可愛い僕の花嫁さん」
その声音は軽やかで楽しげ。それがかえって、不穏さと狂気を孕んでいる。
険しい表情で、神威と距離を取るように足を止めた。風に舞う髪を押さえながら、じり、と構える。
「……あたしの動き、読んでたわけ?」
「うん、まぁね。君は優しすぎる。誰かが傷つくくらいなら、自分で何とかしようとする──それが君の良いところであり、僕にとっては分かりやすいところだよ」
舌打ちし、手元の小型爆竹を軽く指先で弄ぶ。油断すれば一瞬で切り込まれる──それは彼の戦闘力を知っているからこそ分かる。
「目的はなによ、またあたしを攫って煉獄にでも落とす気?」
神威はくすりと笑うと、屋上の柵から軽やかに立ち上がる。
「んー、今度はそんなつまんないことしないよ。君には選ばせてあげる。
真島っていう旦那さんとこのまま手を引いて死ぬか──
それとも、僕ともう一度踊るか。
どっちにする?」
「……お断りよ。こっちはあんたに付き合ってる暇なんかないの。帰って、春雨の仲間にでもホラ話してなさいよ」
ぴたりと風が止んだような空気になる。
その時、神威の目から無邪気さが消える。
「そっか……なら、仕方ないねぇ」
バッ、と次の瞬間、神威の姿が視界から掻き消える。
(来る──!!)
反射的に飛びのいた。すぐ目の前、先程までいた場所の床がひび割れている。神威の拳が空を裂いた痕。
「でも僕、諦め悪いんだよ。何度でも言うよ。君を僕の花嫁にするって」
抜き身の短刀を逆手に構えながら言い返す。
「うっさいバカ。あたしの旦那はあんたじゃなくて、真島吾朗よ」
二人の視線がぶつかり合う。その瞬間、ビルの屋上が再び戦場と化す──
その瞬間、気配はすっと消えたかのように室内から掻き消えた。
彼女は素早く書棚の影に滑り込み、静かに呼吸を浅く整える。
まるでそこに「存在していない」かのような気配の消し方。
足音がひとつ、またひとつ…部屋の奥へと入ってきたのは龍崎本人だった。
「……ったく、あいつら使えねぇな。警戒が緩い。他に見られたらどうすんだよ」
ぼやきながらデスクに近づき、無造作に上着を放り投げると、龍崎はPCを起動し始めた。
──隠れていたあやかの耳には、キーボードを打つ音が小さく響く。
彼の独り言が、次第に核心に触れ始める。
「春雨のデータはこれでいい…阿伏兎が渡したサンプルは極秘保管っと。神威の到着予定は…ああ、明日深夜か。問題ねぇ、真島組をこのタイミングで潰せりゃ、東城会の上層部は混乱する」
(やっぱり……!)
心の中で拳を握る。
彼の計画は完全に“真島潰し”に向かっていた。それが成功した暁には春雨と手を組み、裏で東城会を崩壊させようとする大規模なもの。
──けれど今動けば、証拠も何もかもが無になる。
だからこそ、じっと気配を殺してその場をやり過ごす。
そして数分後。龍崎が部屋を出ていき、ドアが閉じられた瞬間――
「ふぅ…」
あやかは音を立てぬように書棚の影から出て、再びデスクに忍び寄った。
目を光らせ、PCのパスワード解除のログを記憶。机の中にはICレコーダーのような小型装置が隠されており、それもこっそり写真に収める。
「これで、真島さんに報告できる…!」
でも、心の奥にひとつ引っかかることがある。
(あいつ、“明日の夜”って言ってたよね…神威が来る…?)
──春雨の団長、神威。過去にあやかを攫い、煉獄に突き落とした戦闘狂。
背筋に、ほんの一瞬、ひやりとした冷気が走った。
(あたしは…また、あいつと会うのか…)
だけど、もう逃げるつもりはない。
そして静かに、ビルの窓から夜の神室町の闇へと、姿を消した――。
ビルの屋上に、夕日が出ていた。神室町の喧騒とは打って変わって、そこは静まり返っていた。
──その静寂を破ったのは、鮮やかな赤毛と無邪気な笑みを浮かべる男だった。
「やっぱり、来たねぇ」
神威は背を向けたまま、ビルの縁に腰かけていたが、気配を感じ取ってゆっくりと振り返る。
「久しぶりだねぇ、可愛い僕の花嫁さん」
その声音は軽やかで楽しげ。それがかえって、不穏さと狂気を孕んでいる。
険しい表情で、神威と距離を取るように足を止めた。風に舞う髪を押さえながら、じり、と構える。
「……あたしの動き、読んでたわけ?」
「うん、まぁね。君は優しすぎる。誰かが傷つくくらいなら、自分で何とかしようとする──それが君の良いところであり、僕にとっては分かりやすいところだよ」
舌打ちし、手元の小型爆竹を軽く指先で弄ぶ。油断すれば一瞬で切り込まれる──それは彼の戦闘力を知っているからこそ分かる。
「目的はなによ、またあたしを攫って煉獄にでも落とす気?」
神威はくすりと笑うと、屋上の柵から軽やかに立ち上がる。
「んー、今度はそんなつまんないことしないよ。君には選ばせてあげる。
真島っていう旦那さんとこのまま手を引いて死ぬか──
それとも、僕ともう一度踊るか。
どっちにする?」
「……お断りよ。こっちはあんたに付き合ってる暇なんかないの。帰って、春雨の仲間にでもホラ話してなさいよ」
ぴたりと風が止んだような空気になる。
その時、神威の目から無邪気さが消える。
「そっか……なら、仕方ないねぇ」
バッ、と次の瞬間、神威の姿が視界から掻き消える。
(来る──!!)
反射的に飛びのいた。すぐ目の前、先程までいた場所の床がひび割れている。神威の拳が空を裂いた痕。
「でも僕、諦め悪いんだよ。何度でも言うよ。君を僕の花嫁にするって」
抜き身の短刀を逆手に構えながら言い返す。
「うっさいバカ。あたしの旦那はあんたじゃなくて、真島吾朗よ」
二人の視線がぶつかり合う。その瞬間、ビルの屋上が再び戦場と化す──