血の決戦
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「抗争続きやからこのマンションも護衛つけてあるわ。出掛ける時は組員連れてくんやで!ええな?」
「はーい!行ってらっしゃい!」
あやかは真島を見送った後、しばらく玄関の前で先程の会話を立ち尽くし思い出していた。
「護衛ねぇ……はぁ、心配かけちゃったな」
ぽつりと独り言を漏らしながら、部屋に戻る。そして静かにクローゼットを開くと、奥にしまってあった一着の衣装に手を伸ばした。
真選組の隊服――。
ゆっくりとその服を手に取り、袖を通した。
「……これで外出るの、ひさびさ。」
鏡に映る自分の姿を見て、小さく笑う。
かつての仲間たちのこと、春雨との因縁、神威との歪な関係、そして龍崎の脅迫――。
「真島さん……ごめんね。全部言えたらいいのに」
でも、それでも。
「この世界を、あなたを、守りたいって思うの。あたしにできるやり方で」
彼女は腰のあたりに小刀を隠し髪を結い直す。マンションの裏手の窓から、あらかじめ確認しておいたルートを通って抜け出した。配置された真島組の組員の目をかいくぐるように。
再び表に出た目は、覚悟を帯びていた。
「あたしが今追わなきゃ、大好きなこの世界が潰されちゃう」
龍崎の真の目的、春雨の侵食の手がかりを探るために。
そして――
“未来を護るため”に。
あやかは軽やかな足取りでマンションの屋上を駆け上がり、確認しておいた隣のビルとの距離を一瞥する。
「よし…いけるっ!」
ふわりと風を切るように跳び、隣のビルの屋上に着地。少しだけ足元が滑るも、体勢を立て直して再び走り出す。
──真島組の組員には悪いけど、これは自分のケジメだ。
「アンタたちの“姐さん”は、まだまだやることがあるのよ」
あやかの姿はまるで忍者か、はたまた潜入捜査官のようにビルとビルの間を縫うように進む。
そして、到着したのは神室町のやや外れ、他の組事務所とは一線を画す静けさを持つ一角。
──龍崎組 事務所。
表の看板は小さく、派手な主張は一切ない。だがその分、異様な静けさと張り詰めた空気が辺りに満ちていた。
ビルの裏手にある非常階段を見つけ、息を潜めながら上階を目指す。
調べでは、龍崎の部屋は4階。警備は少ない。油断しているのか、それとも何かを隠しているのか。
「どこかに…証拠があるはず。あたしに脅しなんてかけたこと、後悔させてやる…!」
瞳は、闇に溶け込むほど鋭く冴えていた。
慎重に窓から室内を覗き込むと、薄暗がりの中、誰もいないのを確認。静かにガラスの隙間から中へと侵入する。
──龍崎のデスクには、真新しい資料の束、そしてパソコン。
その一角には、春雨の船や機密兵器に関する図面、そして見覚えのある顔写真――“神威”のもの。
あやかは小さく息を呑んだ。
「やっぱり、繋がってる…!」
さらに机の引き出しを開けようとしたその時――
カチリ、と何かのロック音が響いた。
「……!」
部屋のドアノブが、ゆっくりと回り始める。
あやかは即座に身を潜め、拳を握りしめた。
──次の一手が、運命を大きく動かす。