裏切り者
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「せやけどなぁ……」
ふっと目を細め、顎にそっと手を添えて顔を引き寄せる。
驚いた表情を浮かべるあやかに、躊躇なく唇を重ねた。
深く、静かに、けれど逃げられんように強く。
ぴたりと重なる感触と、息が混ざる熱に、ただ目を見開いたまま動けずにいた。
やっと唇を離すと、少し潤んだ瞳を見つめながら、にやりと口角を上げる。
「勝手に男と連絡先交換した罰や。」
あやかは真っ赤になりながら、言葉を探すように視線を彷徨わせた。
「……そ、それは……別にそんな……!」
「言い訳は聞いとらん。」
再び顔を近づけ、囁くように低い声で。
「ええか、お前は俺のもんや。」
その一言に、あやかの体は一瞬びくりと震えた。
けれど何も言い返せず、目をそらして小さく頷くだけ。
「今日は西田か南に家まで送って貰うんやでええな?ほな、またな!」
「……はい。」
扉が閉まる音がしたあと、あやかはそっと自分の唇に触れた。
「……ずるいんだから、ほんと。」
ー真島宅マンション内ー
シチューの匂いが部屋いっぱいに広がる。
テーブルには二人分のスプーンとサラダ、そして煮込んだシチュー鍋。
時刻は夜8時過ぎ。
真島の帰りを待つあやかは、テレビをつけっぱなしのままソファに腰掛けていた。
「……そろそろかな。」
ぽつりと呟いたその時、スマホが震えた。
着信相手は「龍崎 仁」。
少し驚きながら通話ボタンを押す。
「もしもし、姐さんか?」
「……龍崎さん? はい、どうかしました?」
「急に悪いな。実は、今日真島さんが夕方うちの組に来てな。どうやら……うちの弟が、姐さんにちょっかい出したみたいで。」
「あ……あぁ、あのこと。」
思い出すのは、喫茶アルプスでの出来事。
新のまっすぐすぎる態度に困惑しながらも、断ったあの場面。
それでも龍崎仁にまで話が回っていたとは。
「弟にはちゃんと話した。あいつも悪気はなかったんだけどよ。」
「……いえ、大丈夫です。こっちも特に問題はありませんし!」
「そっか。それならええ。悪いな、せやけど弟のことは兄として責任持つ。今回はほんまにすまん。」
「気にしてません。……でも、わざわざありがとうございます。」
「……真島さん、すぐ帰る言うとったで。冷めんうちにシチュー食わせたってくれや。」
通話が切れたあと、あやかはしばらくスマホを見つめていた。
あの仁がわざわざ電話をしてくるあたり、兄としての“顔”が垣間見えた気がした。
(……やっぱり、ただの優男じゃないんだよね、あの人も。)
ふとシチュー鍋に目をやる。
少し火を入れ直しながら、小さく微笑んだ。
「……早く帰って来てよ、吾郎さん。」
玄関の鍵が回る音がしたのは、その数分後のことだった。
ふっと目を細め、顎にそっと手を添えて顔を引き寄せる。
驚いた表情を浮かべるあやかに、躊躇なく唇を重ねた。
深く、静かに、けれど逃げられんように強く。
ぴたりと重なる感触と、息が混ざる熱に、ただ目を見開いたまま動けずにいた。
やっと唇を離すと、少し潤んだ瞳を見つめながら、にやりと口角を上げる。
「勝手に男と連絡先交換した罰や。」
あやかは真っ赤になりながら、言葉を探すように視線を彷徨わせた。
「……そ、それは……別にそんな……!」
「言い訳は聞いとらん。」
再び顔を近づけ、囁くように低い声で。
「ええか、お前は俺のもんや。」
その一言に、あやかの体は一瞬びくりと震えた。
けれど何も言い返せず、目をそらして小さく頷くだけ。
「今日は西田か南に家まで送って貰うんやでええな?ほな、またな!」
「……はい。」
扉が閉まる音がしたあと、あやかはそっと自分の唇に触れた。
「……ずるいんだから、ほんと。」
ー真島宅マンション内ー
シチューの匂いが部屋いっぱいに広がる。
テーブルには二人分のスプーンとサラダ、そして煮込んだシチュー鍋。
時刻は夜8時過ぎ。
真島の帰りを待つあやかは、テレビをつけっぱなしのままソファに腰掛けていた。
「……そろそろかな。」
ぽつりと呟いたその時、スマホが震えた。
着信相手は「龍崎 仁」。
少し驚きながら通話ボタンを押す。
「もしもし、姐さんか?」
「……龍崎さん? はい、どうかしました?」
「急に悪いな。実は、今日真島さんが夕方うちの組に来てな。どうやら……うちの弟が、姐さんにちょっかい出したみたいで。」
「あ……あぁ、あのこと。」
思い出すのは、喫茶アルプスでの出来事。
新のまっすぐすぎる態度に困惑しながらも、断ったあの場面。
それでも龍崎仁にまで話が回っていたとは。
「弟にはちゃんと話した。あいつも悪気はなかったんだけどよ。」
「……いえ、大丈夫です。こっちも特に問題はありませんし!」
「そっか。それならええ。悪いな、せやけど弟のことは兄として責任持つ。今回はほんまにすまん。」
「気にしてません。……でも、わざわざありがとうございます。」
「……真島さん、すぐ帰る言うとったで。冷めんうちにシチュー食わせたってくれや。」
通話が切れたあと、あやかはしばらくスマホを見つめていた。
あの仁がわざわざ電話をしてくるあたり、兄としての“顔”が垣間見えた気がした。
(……やっぱり、ただの優男じゃないんだよね、あの人も。)
ふとシチュー鍋に目をやる。
少し火を入れ直しながら、小さく微笑んだ。
「……早く帰って来てよ、吾郎さん。」
玄関の鍵が回る音がしたのは、その数分後のことだった。