手放した想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
⸻
「……ん……」
あやかが小さく身じろぎをした。
額に置かれたタオルの冷たさに気づき、ゆっくりと目を開ける。
真島がそっと手を握ったまま、安心したように微笑んだ。
「目ぇ覚ましたんか。ちょっと熱、下がったみたいやな」
あやかはぼんやりと天井を見つめたあと、横にいる真島の存在に気づく。
そして――ゆっくり、唇を開いた。
「……見ちゃったのね、あたしの……過去」
その言葉に、真島は一瞬だけ表情を曇らせる。だが、否定はしなかった。
その沈黙が答えだと悟ったのか、あやかは視線を逸らし、そっぽを向いた。
「……思い出したいようで、思い出したくない……そんな過去。今でもたまに夢に見るの」
声は静かで、どこか遠くを見ているようだった。
「真島さんのこと、見ると……その目が晋助と重なって見えるときがあるの。左目が、同じように見えないから……かな……」
そう言うと、ほんの少しだけ目元が潤んでいた。
「……ごめんね。そんな風に誰かと重ねて見るなんて、本当は失礼なことだって分かってる。分かってるのに……」
真島はその言葉をさえぎるように、優しく、しかし真っ直ぐに言った。
「それでええんや。重ねてもええ。似とるかもしれんなぁ。でもな、オレはオレや。……あいつと同じ目でも、俺はお前のこと……絶対、裏切ったりせぇへん」
あやかは驚いたように、ゆっくりと真島を見つめた。
「……うん……」
その答えは、とてもかすかで、でも確かだった。
ひとつ、心の奥の扉が、そっと開いた瞬間だった。
真島の顔を見つめながら、ふとぽつりと呟いた。
「ねぇ……あたしが、魘されて前に晋助に、“もう一度笑って”って言ったの、覚えてる?」
真島は静かに頷いた。
「……覚えとる。言うとったな。泣きながら……『もう一度、笑って』って」
あやかの瞳が揺れる。少しだけ、迷いのような影を落としながら、でもその奥にある芯の強さは変わらなかった。
「……あのときの気持ち、今も変わってないんだ。恋人としての感情はもう無いんだけど。過去がどうとか、誰が悪かったとか、そういうことじゃなくて……」
彼女は少しだけ視線を落とし、そして言葉を紡いだ。
「生きるって、つらくて苦しいことのほうが多いかもしれない。でも……それでも、生きててよかったって思える瞬間があるなら。あたし、それを誰かに届けたいの。……晋助にも、真島さんにも、そして自分にも」
目を閉じて、少しだけ微笑む。
あやかは窓の外を見ながら、ぽつりと呟いた。
「……いつか、届くといいな。晋助にも」
その声はまるで、風に乗せた祈りのようだった。今はもう、交わらなくなった道の先にいる彼へと――静かに、そっと届いてほしいという願い。
すると、真島が少し鼻で笑うようにして、でも真っ直ぐな声で言った。
「……届くに決まっとるやろ。お前の気持ちは、あいつも分かっとるはずやデェ」
あやかが驚いたように真島を見つめると、彼は少し照れ臭そうに肩をすくめて続けた。
「お前の言葉ってな、不器用やけど……まっすぐや。ワシでも響くんやから、あんな男に届かんわけないやろが」
その言葉に、あやかはふっと微笑んだ。
「……ありがと、真島さん」
ふたりの間に流れる静かな空気は、まるで遠い過去と現在を優しくつなぐ橋のようだった。
「……ん……」
あやかが小さく身じろぎをした。
額に置かれたタオルの冷たさに気づき、ゆっくりと目を開ける。
真島がそっと手を握ったまま、安心したように微笑んだ。
「目ぇ覚ましたんか。ちょっと熱、下がったみたいやな」
あやかはぼんやりと天井を見つめたあと、横にいる真島の存在に気づく。
そして――ゆっくり、唇を開いた。
「……見ちゃったのね、あたしの……過去」
その言葉に、真島は一瞬だけ表情を曇らせる。だが、否定はしなかった。
その沈黙が答えだと悟ったのか、あやかは視線を逸らし、そっぽを向いた。
「……思い出したいようで、思い出したくない……そんな過去。今でもたまに夢に見るの」
声は静かで、どこか遠くを見ているようだった。
「真島さんのこと、見ると……その目が晋助と重なって見えるときがあるの。左目が、同じように見えないから……かな……」
そう言うと、ほんの少しだけ目元が潤んでいた。
「……ごめんね。そんな風に誰かと重ねて見るなんて、本当は失礼なことだって分かってる。分かってるのに……」
真島はその言葉をさえぎるように、優しく、しかし真っ直ぐに言った。
「それでええんや。重ねてもええ。似とるかもしれんなぁ。でもな、オレはオレや。……あいつと同じ目でも、俺はお前のこと……絶対、裏切ったりせぇへん」
あやかは驚いたように、ゆっくりと真島を見つめた。
「……うん……」
その答えは、とてもかすかで、でも確かだった。
ひとつ、心の奥の扉が、そっと開いた瞬間だった。
真島の顔を見つめながら、ふとぽつりと呟いた。
「ねぇ……あたしが、魘されて前に晋助に、“もう一度笑って”って言ったの、覚えてる?」
真島は静かに頷いた。
「……覚えとる。言うとったな。泣きながら……『もう一度、笑って』って」
あやかの瞳が揺れる。少しだけ、迷いのような影を落としながら、でもその奥にある芯の強さは変わらなかった。
「……あのときの気持ち、今も変わってないんだ。恋人としての感情はもう無いんだけど。過去がどうとか、誰が悪かったとか、そういうことじゃなくて……」
彼女は少しだけ視線を落とし、そして言葉を紡いだ。
「生きるって、つらくて苦しいことのほうが多いかもしれない。でも……それでも、生きててよかったって思える瞬間があるなら。あたし、それを誰かに届けたいの。……晋助にも、真島さんにも、そして自分にも」
目を閉じて、少しだけ微笑む。
あやかは窓の外を見ながら、ぽつりと呟いた。
「……いつか、届くといいな。晋助にも」
その声はまるで、風に乗せた祈りのようだった。今はもう、交わらなくなった道の先にいる彼へと――静かに、そっと届いてほしいという願い。
すると、真島が少し鼻で笑うようにして、でも真っ直ぐな声で言った。
「……届くに決まっとるやろ。お前の気持ちは、あいつも分かっとるはずやデェ」
あやかが驚いたように真島を見つめると、彼は少し照れ臭そうに肩をすくめて続けた。
「お前の言葉ってな、不器用やけど……まっすぐや。ワシでも響くんやから、あんな男に届かんわけないやろが」
その言葉に、あやかはふっと微笑んだ。
「……ありがと、真島さん」
ふたりの間に流れる静かな空気は、まるで遠い過去と現在を優しくつなぐ橋のようだった。