手放した想い
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---あやかはふと、ぽつりとつぶやいた。
「……ほんとに、似てる。あの人に……」
真島の指が、あやかの背をそっと撫でる。
「……あの人?」
「……その人もね、ゴロちゃんと同じで左目を……戦いの中で、失ってしまったの。」
真島が一瞬、息を呑んだ気配がした。
「いつも、あたしの前を歩いていたのに気付いたら隣にいた。
あたしが見てるものと、同じ景色を見せてあげたくて……
でも、何時しか違うところを見てた。先ばっか見てた。あたしの隣にも居なくなって──“反対にある死”の方ばっかり……」
言葉を継ぐうちに、あやかの声が震えた。
「……気づいたら、その人は、あたしの前からいなくなってた。
左目だけじゃなくて、心も、身体も、あたしの前から消えちゃった……
何にも言わずに、前だけ見てあたしを置いて、勝手に遠くへ行っちゃったの」
真島は何も言わなかった。
ただ、あやかの肩を包むように手を回し、温もりでその揺れを止めようとする。
「でも……ゴロちゃんは違う。ちゃんとこっち見てくれる。あたしを置いて行かないでいてくれる。……生きて、そばにいてくれる。」
その言葉に、真島はふっと息を吐いた。
「──せやろな。
そいつは……生きとることに不器用やったんやろ」
少しの沈黙。
「左眼がないくらいで、大事なモンも見えんようにはならへん。
お前が見せてくれるもんがあれば、オレはなんぼでも前に進めるで。」
あやかはその胸に顔を埋めながら、かすかに笑った。
「そっか。なら私はこれからゴロちゃんの左眼になる!」
「……ヒヒっ。アホやな、そないなことせんでもええやんあやか」
真島が笑った。
いつものような陽気な調子ではない。
けれどその声には、確かに救われた男の温もりがあった。
「……そんなこと言うたら、ほんまに頼ってまうで?ほんまにオレの左眼に、なってくれんのか?」
あやかはゆっくりうなずいた。
「なるよ。だって、私の左目には……ゴロちゃんが映ってるから。私が見てる世界を、ちゃんとあなたの代わりに見てあげる。見えなかったものも、怖かったものも……全部、私が代わりに見る」
その目を真っ直ぐに見つめながら、そう言いきったあやかに、
真島は言葉を失って、ただ抱きしめた。
「……お前、ほんま……なんでそない、優しいんやろな」
頬を寄せ、息を重ね、
やがてそのまま彼は、あやかの髪に顔を埋めてそっと目を閉じた。
「しゃあないな……せやったら、これからはずっとオレの視界になれや。…逃がさへんで」
「……じゃあやっぱり、あたしが左眼にならなきゃだね。
今度こそ、その目に素敵な景色見せるから。」
「任せとき。ワシも、もう誰にも奪われへんように──
しっかり、オレの中にあやかのこと焼き付けとく」
ふたりの間を、静かな夜が優しく包み込んだ。
「……ほんとに、似てる。あの人に……」
真島の指が、あやかの背をそっと撫でる。
「……あの人?」
「……その人もね、ゴロちゃんと同じで左目を……戦いの中で、失ってしまったの。」
真島が一瞬、息を呑んだ気配がした。
「いつも、あたしの前を歩いていたのに気付いたら隣にいた。
あたしが見てるものと、同じ景色を見せてあげたくて……
でも、何時しか違うところを見てた。先ばっか見てた。あたしの隣にも居なくなって──“反対にある死”の方ばっかり……」
言葉を継ぐうちに、あやかの声が震えた。
「……気づいたら、その人は、あたしの前からいなくなってた。
左目だけじゃなくて、心も、身体も、あたしの前から消えちゃった……
何にも言わずに、前だけ見てあたしを置いて、勝手に遠くへ行っちゃったの」
真島は何も言わなかった。
ただ、あやかの肩を包むように手を回し、温もりでその揺れを止めようとする。
「でも……ゴロちゃんは違う。ちゃんとこっち見てくれる。あたしを置いて行かないでいてくれる。……生きて、そばにいてくれる。」
その言葉に、真島はふっと息を吐いた。
「──せやろな。
そいつは……生きとることに不器用やったんやろ」
少しの沈黙。
「左眼がないくらいで、大事なモンも見えんようにはならへん。
お前が見せてくれるもんがあれば、オレはなんぼでも前に進めるで。」
あやかはその胸に顔を埋めながら、かすかに笑った。
「そっか。なら私はこれからゴロちゃんの左眼になる!」
「……ヒヒっ。アホやな、そないなことせんでもええやんあやか」
真島が笑った。
いつものような陽気な調子ではない。
けれどその声には、確かに救われた男の温もりがあった。
「……そんなこと言うたら、ほんまに頼ってまうで?ほんまにオレの左眼に、なってくれんのか?」
あやかはゆっくりうなずいた。
「なるよ。だって、私の左目には……ゴロちゃんが映ってるから。私が見てる世界を、ちゃんとあなたの代わりに見てあげる。見えなかったものも、怖かったものも……全部、私が代わりに見る」
その目を真っ直ぐに見つめながら、そう言いきったあやかに、
真島は言葉を失って、ただ抱きしめた。
「……お前、ほんま……なんでそない、優しいんやろな」
頬を寄せ、息を重ね、
やがてそのまま彼は、あやかの髪に顔を埋めてそっと目を閉じた。
「しゃあないな……せやったら、これからはずっとオレの視界になれや。…逃がさへんで」
「……じゃあやっぱり、あたしが左眼にならなきゃだね。
今度こそ、その目に素敵な景色見せるから。」
「任せとき。ワシも、もう誰にも奪われへんように──
しっかり、オレの中にあやかのこと焼き付けとく」
ふたりの間を、静かな夜が優しく包み込んだ。