夫婦の証
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あやかは西田と南の話を胸に、ひとまず神室町のセレナへと足を運んだ。
夜の帳が降りかけた街に、看板の灯りが温かく揺れている。扉を開けると、カウンターには冴島が座っていた。
「……おう、あやかやないか。どうしたん?そないな顔して」
冴島はグラスを置いて、あやかの方に身体を向けた。
「ちょっと、ききたいことがあって……真島さんが昔……結婚してたって、本当ですか?」
その一言に、冴島の表情が僅かに揺れる。
「……ああ、その話か。前にな、一度だけ兄弟から――聞いたことがあるわ。」
「やっぱり、本当なんですね!」
「ただな……それがどういう結婚で、どんな理由で終わったんか……そこまでは俺も聞いてへん。兄弟自身、あんま語りたがらんかったしな。」
冴島は一拍おいて、穏やかな声で続けた。
「せやけど、あやか。これはな……兄弟に、直接聞くのが一番やと思うで。真島吾朗は、不器用やけど正直な男や。大事なもんには、嘘はつかん」
あやかは小さく頷いた。
「……はい、ちゃんと、話してみます」
冴島は少しだけ笑ってグラスを傾けた。
「怖がらんでええ。あいつは、今のあんたを一番に思ってる。……それだけは間違いないで」
夜の神室町はネオンの光で輝いていた。
仕事を終えた真島に連絡を入れたあやかは、
「話がある」とだけ告げて、2人は小さな隠れ家的バー《シュラック》に向かった。ここは、騒がしい繁華街の中でも、どこか落ち着いた空気を持つ場所だった。
中に入ると、ジャズが静かに流れ、カウンター越しにマスターが静かに微笑む。
2人は奥のソファ席に腰を下ろし、軽くグラスを合わせたあと、静寂の中にあやかの声が落ちた。
「珍しいのぅ。来ないなとこで飲みたいやなんて!」
「……そういえば今日、戸籍取りに行ったんだ」
真島はグラスを口に運ぶ手を止める。
「そしたら……あること見つけちゃって。真島さんに“結婚歴”と“離婚歴”があったこと」
一瞬、真島の目が揺れる。けれど、逃げるような素振りは一切なかった。
彼は黙ってグラスを置き、ゆっくりと、あやかの瞳を見つめ返す。
「……そうか。見つけてしもうたか…。まぁ内緒にしてた訳や無いんやけどな。」
「どうして言ってくれなかったの?」
あやかの問いは、責めるようなものではなかった。ただ、寂しげに、真実を知りたいという気持ちだけが込められていた。
真島はしばらく視線を伏せてから、小さく吐息をついた。
「いつか話そうかと思うた。けどな……お前と出会って、惚れて、毎日が楽しくて……気ぃついたら言いそびれてた。俺にとっては過去のことやし。もう終わった話やと思ってたからなぁ。」
「……そのー前の奥さんはどんな人だったの?」
あやかの声は、少しだけ震えていた。
真島は、しばらく黙っていたが、やがてぽつりと語り始めた――。
夜の帳が降りかけた街に、看板の灯りが温かく揺れている。扉を開けると、カウンターには冴島が座っていた。
「……おう、あやかやないか。どうしたん?そないな顔して」
冴島はグラスを置いて、あやかの方に身体を向けた。
「ちょっと、ききたいことがあって……真島さんが昔……結婚してたって、本当ですか?」
その一言に、冴島の表情が僅かに揺れる。
「……ああ、その話か。前にな、一度だけ兄弟から――聞いたことがあるわ。」
「やっぱり、本当なんですね!」
「ただな……それがどういう結婚で、どんな理由で終わったんか……そこまでは俺も聞いてへん。兄弟自身、あんま語りたがらんかったしな。」
冴島は一拍おいて、穏やかな声で続けた。
「せやけど、あやか。これはな……兄弟に、直接聞くのが一番やと思うで。真島吾朗は、不器用やけど正直な男や。大事なもんには、嘘はつかん」
あやかは小さく頷いた。
「……はい、ちゃんと、話してみます」
冴島は少しだけ笑ってグラスを傾けた。
「怖がらんでええ。あいつは、今のあんたを一番に思ってる。……それだけは間違いないで」
夜の神室町はネオンの光で輝いていた。
仕事を終えた真島に連絡を入れたあやかは、
「話がある」とだけ告げて、2人は小さな隠れ家的バー《シュラック》に向かった。ここは、騒がしい繁華街の中でも、どこか落ち着いた空気を持つ場所だった。
中に入ると、ジャズが静かに流れ、カウンター越しにマスターが静かに微笑む。
2人は奥のソファ席に腰を下ろし、軽くグラスを合わせたあと、静寂の中にあやかの声が落ちた。
「珍しいのぅ。来ないなとこで飲みたいやなんて!」
「……そういえば今日、戸籍取りに行ったんだ」
真島はグラスを口に運ぶ手を止める。
「そしたら……あること見つけちゃって。真島さんに“結婚歴”と“離婚歴”があったこと」
一瞬、真島の目が揺れる。けれど、逃げるような素振りは一切なかった。
彼は黙ってグラスを置き、ゆっくりと、あやかの瞳を見つめ返す。
「……そうか。見つけてしもうたか…。まぁ内緒にしてた訳や無いんやけどな。」
「どうして言ってくれなかったの?」
あやかの問いは、責めるようなものではなかった。ただ、寂しげに、真実を知りたいという気持ちだけが込められていた。
真島はしばらく視線を伏せてから、小さく吐息をついた。
「いつか話そうかと思うた。けどな……お前と出会って、惚れて、毎日が楽しくて……気ぃついたら言いそびれてた。俺にとっては過去のことやし。もう終わった話やと思ってたからなぁ。」
「……そのー前の奥さんはどんな人だったの?」
あやかの声は、少しだけ震えていた。
真島は、しばらく黙っていたが、やがてぽつりと語り始めた――。