過去と出会い
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案内されたのは、神室町にある韓来だった。
派手さはないが、常連客でにぎわっていて、真島の言う通り"ええ店"だった。
「ここの肉は美味いしタレも、絶品やで。他の店とちゃう、昔ながらのやつや。」
真島がそう言って笑うと、あやかは嬉しそうに小さくうなずいた。
「……ありがとうございます。連れてきてくれて。」
「ええよ。あやかちゃんやったけ?不思議な子やからな。ある時から気ぃになってしゃーなかったんや。」
真島とあやかは奥の座敷に座ることになった。
煙が立ち上る店内、鼻をくすぐる肉の香りに、あやえの目がぱちぱちと瞬く。
「…すごい、いい匂い。」
「そやろ?ここは裏切らんで。」
座敷に腰を下ろし、真島が店員に手慣れた様子で注文を入れる。
「カルビと上タン塩、それからホルモン盛り、頼んまっせ。あ、あと白ご飯も大盛りでな。」
「……わ、真島さん、すごい量…!」
「遠慮せんでええから。あやかも食えるだけ食い。」
鉄板の上に肉が乗り、じゅうじゅうと音を立て始める。
真島が器用にトングを使って肉をひっくり返す姿に、じっと目を向けた。
「真島さんって、こういうの慣れてるんですね。」
「そらまぁ、年季がちゃうからな。こう見えて、気ぃつこて生きてんねん。」
冗談めかして笑う真島に、あやかも思わずふっと笑った。
「なんか…こうやって人とご飯食べるの、久しぶりかも。」
「……そうなんか。」
真島は少しだけ真面目な顔になる。
「お前、なんや違う世界から来たんやろ?桐生ちゃんから聞いたで〜。」
「あっ、そうなんです。向こうでは中々人と一緒に、ご飯を食べることが無くて。」
「……けど、今は違うで。」
焼き上がったタンを、真島があやかの皿にそっと置く。
「ほれ。うまいもんは、うまいうちに食うんや。」
一瞬戸惑いながらも、タンを一口かじる。
「……!おいしい…」
「そやろ。これからや。神室町には、まだまだおもろいもんぎょうさんあるで。」
真島の笑顔が、ほんの少し優しく見えた気がした。
それは、あやかの中に無かった静かであたたかい時間。
そしてこの夜――
“ただの兵器”だった自分が、少しだけ「人間」に戻った気がした、そんな初めての食事だった。
数口食べたあと、小さく深呼吸をした。
そして、ぽつりぽつりと語り始める。
「私がいた世界は江戸の時代。攘夷戦争の頃。私は“天導衆”っていうところにいて……轆轤(ろくろ)って呼ばれてました。」
「……天導衆?」
真島の声には、わずかな警戒と戸惑い。
「……私は実際に人の形をした、兵器です。……そんなふうに、人間扱いされてなかった。」
言葉を選びながら、それでもどこか肩の力を抜いたように、あやかは淡々と話す。
けれど、真実の奥に宿る痛みは、確かにその声に滲んでいた。
「本当は…兵器として生きたく無かった。でも、物心ついた時から体に実験されて不老不死の兵器として完成すると、自分の意思を持つことが出来なかった。だから言われるまま戦って…、人を傷つけて…そんな中……気がついたら、ここにいました。」
「私なんて本当はこんな所で人とご飯食べられるような人じゃないんですよ…。」
真島は黙ったまま、彼女の言葉を最後まで聞いていた。
目をそらさず、否定もせず、ただ静かに。
やがて、彼は水のグラスを手に取り、少しだけ口元を緩めて言った。
「なるほどなぁ……それで、あの目ぇしてたんか。」
「……目?」
「人の死を見てきた獣のような目ぇや。その目には、生きたいっていう思いもあったで。ワシも、昔はよう見とった。」
その言葉に、あやかの手がぴたりと止まる。
真島はごく自然に続けた。
「まぁ、信じるか信じへんかは自由やけどな。ワシは――お前の言うてること、おもろいと思うた。そんだけでええやろ。」
一瞬の沈黙のあと、あやかはふっと笑った。
さっきまでどこか張り詰めていた空気が、ゆっくりとほどけていく。
「……真島さんって、変わってますね。」
「せやろ? 変人ってよぉ言われるわ。お褒めの言葉として受け取っとくで。」
笑ったまま、あやかはまた箸を動かす。
料理の味が、やけにあたたかくて、胸の奥まで沁みていく気がした。
そして彼女の中に、初めて――「ここで生きていけるかもしれない」という小さな光が灯った。
派手さはないが、常連客でにぎわっていて、真島の言う通り"ええ店"だった。
「ここの肉は美味いしタレも、絶品やで。他の店とちゃう、昔ながらのやつや。」
真島がそう言って笑うと、あやかは嬉しそうに小さくうなずいた。
「……ありがとうございます。連れてきてくれて。」
「ええよ。あやかちゃんやったけ?不思議な子やからな。ある時から気ぃになってしゃーなかったんや。」
真島とあやかは奥の座敷に座ることになった。
煙が立ち上る店内、鼻をくすぐる肉の香りに、あやえの目がぱちぱちと瞬く。
「…すごい、いい匂い。」
「そやろ?ここは裏切らんで。」
座敷に腰を下ろし、真島が店員に手慣れた様子で注文を入れる。
「カルビと上タン塩、それからホルモン盛り、頼んまっせ。あ、あと白ご飯も大盛りでな。」
「……わ、真島さん、すごい量…!」
「遠慮せんでええから。あやかも食えるだけ食い。」
鉄板の上に肉が乗り、じゅうじゅうと音を立て始める。
真島が器用にトングを使って肉をひっくり返す姿に、じっと目を向けた。
「真島さんって、こういうの慣れてるんですね。」
「そらまぁ、年季がちゃうからな。こう見えて、気ぃつこて生きてんねん。」
冗談めかして笑う真島に、あやかも思わずふっと笑った。
「なんか…こうやって人とご飯食べるの、久しぶりかも。」
「……そうなんか。」
真島は少しだけ真面目な顔になる。
「お前、なんや違う世界から来たんやろ?桐生ちゃんから聞いたで〜。」
「あっ、そうなんです。向こうでは中々人と一緒に、ご飯を食べることが無くて。」
「……けど、今は違うで。」
焼き上がったタンを、真島があやかの皿にそっと置く。
「ほれ。うまいもんは、うまいうちに食うんや。」
一瞬戸惑いながらも、タンを一口かじる。
「……!おいしい…」
「そやろ。これからや。神室町には、まだまだおもろいもんぎょうさんあるで。」
真島の笑顔が、ほんの少し優しく見えた気がした。
それは、あやかの中に無かった静かであたたかい時間。
そしてこの夜――
“ただの兵器”だった自分が、少しだけ「人間」に戻った気がした、そんな初めての食事だった。
数口食べたあと、小さく深呼吸をした。
そして、ぽつりぽつりと語り始める。
「私がいた世界は江戸の時代。攘夷戦争の頃。私は“天導衆”っていうところにいて……轆轤(ろくろ)って呼ばれてました。」
「……天導衆?」
真島の声には、わずかな警戒と戸惑い。
「……私は実際に人の形をした、兵器です。……そんなふうに、人間扱いされてなかった。」
言葉を選びながら、それでもどこか肩の力を抜いたように、あやかは淡々と話す。
けれど、真実の奥に宿る痛みは、確かにその声に滲んでいた。
「本当は…兵器として生きたく無かった。でも、物心ついた時から体に実験されて不老不死の兵器として完成すると、自分の意思を持つことが出来なかった。だから言われるまま戦って…、人を傷つけて…そんな中……気がついたら、ここにいました。」
「私なんて本当はこんな所で人とご飯食べられるような人じゃないんですよ…。」
真島は黙ったまま、彼女の言葉を最後まで聞いていた。
目をそらさず、否定もせず、ただ静かに。
やがて、彼は水のグラスを手に取り、少しだけ口元を緩めて言った。
「なるほどなぁ……それで、あの目ぇしてたんか。」
「……目?」
「人の死を見てきた獣のような目ぇや。その目には、生きたいっていう思いもあったで。ワシも、昔はよう見とった。」
その言葉に、あやかの手がぴたりと止まる。
真島はごく自然に続けた。
「まぁ、信じるか信じへんかは自由やけどな。ワシは――お前の言うてること、おもろいと思うた。そんだけでええやろ。」
一瞬の沈黙のあと、あやかはふっと笑った。
さっきまでどこか張り詰めていた空気が、ゆっくりとほどけていく。
「……真島さんって、変わってますね。」
「せやろ? 変人ってよぉ言われるわ。お褒めの言葉として受け取っとくで。」
笑ったまま、あやかはまた箸を動かす。
料理の味が、やけにあたたかくて、胸の奥まで沁みていく気がした。
そして彼女の中に、初めて――「ここで生きていけるかもしれない」という小さな光が灯った。