姉妹の空
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【神室町・並木道】
風に桜の花びらが舞う。
ドーナツの甘い匂いと、都会のビルの匂いが交差するなか──
ゆっくりと歩くあやかと信女。
ふと、あやかがぽつりと呟いた。
「でもね、実は……江戸には、たまに帰ってるんだ」
「え?」
信女が驚いた顔であやかを見つめる。
「……あの紅桜で?」
「そう、紅桜は持ち主の“血”を吸うと、あの歪みがまた開くの。
……この前、真島と一緒に、こっそり行ってきた」
信女の目がさらに見開かれる。
「真島さん、江戸に?」
「うん、フルスーツで暴れてたよ。『あいつらケンカ売ってきたから返り討ちにしてきた!』って……」
「……やっぱり、変わった人なんだね」
あやかは小さく笑って頷く。
「でも、ちゃんと対策もしてたの。
私、顔バレしないようにね──コロンつけてたの。だから分からなくて当然かも!」
「……なんでコロン?」
「“天導衆にバレないため”にもね」
信女は呆れたように笑う。
「……本当に、あやからしいね」
「ふふ。だからいつでも戻れる。
信女ちゃんも、こっちの世界に来たくなったら何時でも来てね。」
「……ありがとう」
そう言った信女の横顔に、ふっと柔らかい笑みが浮かんだ。
少しだけ、ほんの少しだけ──
あの幼い頃、あやかの後ろを必死に追っていた、小さな彼女の面影がよぎった。
信女の泊まるアパートやと真島が合流。
帰り道、あやか・信女・真島の三人は、アパートへ向かう途中、ひと気のない裏路地へと差しかかっていた。
──その時だった。
「足を止めてください、ろくろ様。今ここで、お引き取り願います」
路地の両側から現れたのは、全身黒ずくめの天導衆の兵士たち。
気づけば、三人は囲まれていた。
「やれやれ……今日ぐらいは穏やかに過ごせるかと思ったのに」
あやかがため息まじりに呟く。
「この装備、天導衆直属の兵……つまり、まだ諦めてないってことね」
信女は腰の刀に手をかけながら、静かに目を細めた。
「よう知らんけど……」
真島がニヤリと笑う。
「この“夜の散歩”を邪魔するヤツは、全員ぶった斬るで」
兵士たちが一斉に刃を抜いた、その瞬間──
カッと火花を散らし、背中合わせに構える二人の女。
「行くよ、信女ちゃん」
「ええ、あやえ──」
「この奈落三羽、骸と轆轤に勝てると思ってるの?お前ら。」
その一言が、戦いの火蓋を切った。
──閃光のような剣戟が路地に舞う。
あやかの剣は、鋭く正確。兵器として強化された身体は、回避と打撃を容易に融合させる。
信女は、しなやかで無駄のない殺陣。人形のような冷たい殺意がその剣に宿る。
そこに割って入るように真島も、構えた一本の刀で敵を一閃。
「この街で暴れたいんなら、俺通してからや!」
敵が次々と倒れていく。血飛沫と刃が交錯する神室町の裏路地。
最後の一人が悲鳴をあげて逃げ出す前に、あやかの一閃がその喉元を断ち切った。
──静寂。
三人の呼吸が、徐々に落ち着いていく。
「全員……片付いたか」
「ふん、予想より随分と弱かったわね」
「なんや、もうちょい楽しませてくれてもええのになぁ」
真島が刀を肩にかけ、笑みを浮かべる。
「信女ちゃん、あの頃を思い出したでしょ?」
あやかが笑う。
「ええ。…なんだか、背中合わせになると落ち着く」
「ほな、次はちゃんと宿の準備してる部屋に向かおか」
──神室町の路地裏、血の跡を残して、三人は静かに立ち去っていった。