紅と白
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
⸻
【神室町・廃墟ビル跡】
コンクリの床に響くヒール音。
淡い月明かりの中、すでに一人の少女がそこにいた。
骸──今井信女
真っ直ぐな立ち姿。制服のような白の服。
腰には刃。目には一切の感情がない。
「久しぶり、骸。……いまのあなたは“信女”とは名乗らないの?」
「名前なんて、意味はない。“骸”で十分。昔のお前がそう呼んでたように」
短いやり取り。
かつて教え、育て、心を渡した相手が、今──刃を向けて立っている。
「……君は、私を殺しに来た。けど私は、そう易々と殺される訳には行かないんでね。護るものがあるから……」
「そういう言葉、飽きるほど聞いてきた。……“いつもそうだ護るものの為なら自分の命も惜しまない。」
信女の目に、かすかに揺れるもの。
「……私のこと良く、分かってるじゃん。なら答えは…分かるでしょ?」
一瞬、骸の眉が動いた。
その刹那、風が吹き抜け、銃声のような音を立てる。
お互いの間の空気が、張り詰めていく。
そして──
二人の足が、同時に動いた。
刹那、空気が裂けた。
一閃──金属音が鳴り響く。
あやかと骸(信女)、その刃が交差するたびに、火花が舞った。
どちらも、命のやり取りに一切の迷いがない。
この戦いに、慈悲も容赦も存在しなかった。
骸の動きはしなやかで、まるで闇そのもの。
人間離れした速度、鋭く研ぎ澄まされた斬撃。
だが、あやかは後れを取らなかった。
刃を受け流し、次の瞬間には骸の懐に踏み込む。
拳が入り、膝蹴りが鳩尾に叩き込まれ、骸の身体が壁に叩きつけられる。
──だが、骸はすぐに起き上がる。
「やっぱり、そう来なくちゃ。兵器として本気出して貰わないと。」
その声に、あやかの目が鋭くなる。
「それでも、君に殺される気はない。……私は、“あの頃の約束”を守りたい」
骸が応じるように、再び刀を振るう。
鉄骨を裂く音。割れた窓から夜風が吹き込む。
──ガンッ!!
刃と刃がぶつかり合い、互いの腕に痺れが走る。
あやかの瞳が鋭く光る。その瞬間、兵器としての力が解放された。
身体能力が跳ね上がり、踏み込みの速さが増す。
その拳には、圧倒的な殺意と制御された力が込められていた。
骸も負けじと反応し、紙一重でかわす──
だが、一撃、二撃……
あやかの拳が骸の腹をえぐり、壁へ投げ飛ばす。
骸の口元から血が流れる。それでも、彼女の目はまだ死んでいなかった。
「やっぱり…あんたの刃は鈍い。ここに来て殺す覚悟が、揺れてる」
「──そうかもね。でも、私は護るものためにここに立ってる。そして、あんたとの約束を守るために。」
また、刃が走る。
両者の視線は一瞬も外れず、呼吸すら計算された動きの一部。
──そして、ビルの上層、吹き抜けの瓦礫の間で、二人の姿が交差した。
血飛沫が、舞った。