過去と未来
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【玲子の足跡を辿って──最後のノート】
夜の神室町、雑踏の中を歩くあやかの足取りはどこかゆっくりだった。
煌びやかなネオンの裏で、ひっそりと灯る小さなスナック。かつて玲子がわずかに過ごしたこの場所へ、あやかはまた足を運んでいた。
「来てくれてありがとね、あやかちゃん」
店のママがカウンター越しにあやかへ笑いかける。どこか懐かしげな、母を見るような眼差しだった。
「実はね…預かってたものがあるの。あの子が置いていったの」
ママが奥の棚からそっと取り出したのは、一冊の古びたノート。革の表紙は時を感じさせ、何度も手に取られた跡があった。
「あの子って──玲子、ですよね?」
ママは頷く。
「そう。あの子が…」
ノートを開いた瞬間、時間が巻き戻るかのようにあやかの世界が揺れる。
⸻
【ノートに記されていた内容】
「江戸の空は、今日も蒼い。攘夷戦争の煙が少しずつ空を濁らせてはいるけれど、私は負けない。」
「私は天導衆・春雨第七師団団長。江戸の人々と心を通わせるため、私はここに来た。でも、まだこの世界はよそ者を許さない。孤独だった──けれど」
「…彼に会った。松岡賢人。優しい眼をした、武士。初めて、心から笑えた気がした。何度も会い、想いが通じた。そして、私は彼の子を宿した。分かった時はこれ程嬉しかったことは無い…。」
「けど、天導衆である極秘兵器研究が動き出した。その研究の、第一人者は首領のあの方。私は第7師団という役職から実験体へと変わってしまった。何故と私が問うと、夜兎族の血が実験に多いに役に立つと言うこと。夜兎族は私しかいない。天導衆の中で唯一の夜兎。」
「もう、かれこれ大切な彼にも会えていない。毎日薬品を投与される。初めは家に帰れていたのに。次第に私はこの薄暗い鏡張りの部屋から出ることが出来ない。薬を打つ度身体に変化が現れ始めた。泡を吹いて窒息したり、貧血で気を失う日々いつになったら終わるのか…。ここは牢獄といった地獄だろう。身体を研究され、心も壊されそうになった──」
「でも、転機が訪れた。攘夷戦争が更に激しくなり研究が一時ストップに。誰かが私の部屋の鍵を開けたままにしたらしい。私は逃げた。逃げて逃げ回った。二度とないチャンスを逃さないと…。たまたま研究室にあった黒光りした刀を持って…気づいたらこの世界へ来ていた。この神室町という異世界へ飛ばされた。」
「ここは江戸とはまた違った世界だったが、色んな人の助けを借りながら少しの間、生活することになった。けれど私の心はずっと江戸の世界にあった。あの人に会いたくて、帰りたくて。胸が張り裂けそうだった。お腹も次第に大きくなってきた。大切な命…私の宝物。毎日、懺悔の連続だ。ここに来ても天導衆は追っ手を使いこの国の病院と結託し見つかってしまった。大切な貴方を危険な巻き込んでしまったこと。私は江戸に帰っても追われる。恐らくこの子も酷い目に遭ってしまう…。
でも、私はまた刀を握った。もう一度あの人に会うために、帰るために。」
⸻
ページの最後には、1枚の写真と震える文字でこう綴られていた。
「もしこのノートを未来の子どもが読む日が来たなら──」
「こんなお母さんでごめんなさい。でも、あなたは私の宝物。あの人と私の希望。どうか、あの空の下で、自分を信じて幸せに生きてほしい。私は空の上から、いつも見守ってる。」
ノートを閉じたあやかの目には、涙が浮かんでいた。やはり、玲子は正真正銘あやかの母親だった。
玲子の想い。愛。戦い。逃亡。希望。
それはまるで、今の自分自身の物語の原点だった。
あやかはママに深く頭を下げて言った。
「…ありがとうございました。このノート、絶対に無駄にしません」
母の命を、想いを受け継ぎ、次は自分が歩いていく番だった。
【玲子の足跡を辿って──最後のノート】
夜の神室町、雑踏の中を歩くあやかの足取りはどこかゆっくりだった。
煌びやかなネオンの裏で、ひっそりと灯る小さなスナック。かつて玲子がわずかに過ごしたこの場所へ、あやかはまた足を運んでいた。
「来てくれてありがとね、あやかちゃん」
店のママがカウンター越しにあやかへ笑いかける。どこか懐かしげな、母を見るような眼差しだった。
「実はね…預かってたものがあるの。あの子が置いていったの」
ママが奥の棚からそっと取り出したのは、一冊の古びたノート。革の表紙は時を感じさせ、何度も手に取られた跡があった。
「あの子って──玲子、ですよね?」
ママは頷く。
「そう。あの子が…」
ノートを開いた瞬間、時間が巻き戻るかのようにあやかの世界が揺れる。
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【ノートに記されていた内容】
「江戸の空は、今日も蒼い。攘夷戦争の煙が少しずつ空を濁らせてはいるけれど、私は負けない。」
「私は天導衆・春雨第七師団団長。江戸の人々と心を通わせるため、私はここに来た。でも、まだこの世界はよそ者を許さない。孤独だった──けれど」
「…彼に会った。松岡賢人。優しい眼をした、武士。初めて、心から笑えた気がした。何度も会い、想いが通じた。そして、私は彼の子を宿した。分かった時はこれ程嬉しかったことは無い…。」
「けど、天導衆である極秘兵器研究が動き出した。その研究の、第一人者は首領のあの方。私は第7師団という役職から実験体へと変わってしまった。何故と私が問うと、夜兎族の血が実験に多いに役に立つと言うこと。夜兎族は私しかいない。天導衆の中で唯一の夜兎。」
「もう、かれこれ大切な彼にも会えていない。毎日薬品を投与される。初めは家に帰れていたのに。次第に私はこの薄暗い鏡張りの部屋から出ることが出来ない。薬を打つ度身体に変化が現れ始めた。泡を吹いて窒息したり、貧血で気を失う日々いつになったら終わるのか…。ここは牢獄といった地獄だろう。身体を研究され、心も壊されそうになった──」
「でも、転機が訪れた。攘夷戦争が更に激しくなり研究が一時ストップに。誰かが私の部屋の鍵を開けたままにしたらしい。私は逃げた。逃げて逃げ回った。二度とないチャンスを逃さないと…。たまたま研究室にあった黒光りした刀を持って…気づいたらこの世界へ来ていた。この神室町という異世界へ飛ばされた。」
「ここは江戸とはまた違った世界だったが、色んな人の助けを借りながら少しの間、生活することになった。けれど私の心はずっと江戸の世界にあった。あの人に会いたくて、帰りたくて。胸が張り裂けそうだった。お腹も次第に大きくなってきた。大切な命…私の宝物。毎日、懺悔の連続だ。ここに来ても天導衆は追っ手を使いこの国の病院と結託し見つかってしまった。大切な貴方を危険な巻き込んでしまったこと。私は江戸に帰っても追われる。恐らくこの子も酷い目に遭ってしまう…。
でも、私はまた刀を握った。もう一度あの人に会うために、帰るために。」
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ページの最後には、1枚の写真と震える文字でこう綴られていた。
「もしこのノートを未来の子どもが読む日が来たなら──」
「こんなお母さんでごめんなさい。でも、あなたは私の宝物。あの人と私の希望。どうか、あの空の下で、自分を信じて幸せに生きてほしい。私は空の上から、いつも見守ってる。」
ノートを閉じたあやかの目には、涙が浮かんでいた。やはり、玲子は正真正銘あやかの母親だった。
玲子の想い。愛。戦い。逃亡。希望。
それはまるで、今の自分自身の物語の原点だった。
あやかはママに深く頭を下げて言った。
「…ありがとうございました。このノート、絶対に無駄にしません」
母の命を、想いを受け継ぎ、次は自分が歩いていく番だった。