過去の仲間たち
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― 翌日・江戸の街 ―
久々の江戸の空気は、どこか優しくて、懐かしくて、あやかの胸をじんわり温めた。
真島と銀時を連れての街歩き。
人の賑わい、香ばしい団子の匂い、子どもたちの笑い声――どれもが、あやかに「帰ってきた」と教えてくれる。
「神室町とはまた違った景色やな……人の目が穏やかや」
真島がそう呟けば、横を歩く銀時はダルそうに肩を揺らす。
「オレはもう帰ってゴロゴロしてぇんだけどなぁ……ほら、あやかも思い出したろ? 江戸って意外とクソみてぇに歩かされる街なんだって」
「歩くだけで文句言う人は連れてこなかったらよかったかな」
「はいはい、冷たいですねぇ。妹が帰ってきたってのに、兄の扱いがこれだよ」
そんな軽口を交わしながら歩いていると、あやかの目に“幾松”の暖簾が映り込んだ。
「……あっ!」
その瞬間、店先から現れた長髪の男に目が止まる。
整った顔立ちに、凛とした空気をまとったその男――
「小太兄さん!」
あやかが思わず声を上げると、男――桂小太郎はピタリと動きを止めた。
振り返った彼の目が、驚きに見開かれる。
「……もしや、あやかか……!?」
「うん……ただいま、小太兄さん」
駆け寄ったあやかを、桂は両手で抱きしめるように包んだ。
「……無事だったのか……よかった……本当に、よかった……!」
「……ごめんね、心配かけて……」
後ろからその光景を見つめながら、銀時は口の端を持ち上げる。
「……ヅラ、泣きそうになってんじゃねぇよ。目ぇ潤んでんぞ?」
「ヅラじゃない、桂だ! ……って、お前はいつもそうだな……」
「へいへい、でも会えて良かったな、桂」
そんな兄たちのやり取りを聞いて、真島は思わず笑みをこぼした。
「……あんたの兄貴連中、ええ味出しとるな。まるで漫才やで」
「ふふ……でも、皆こう見えて、本当に頼れる兄さんたちなんだよ」
「……お前がこの江戸で、どう生きてきたかがちょっと分かってきた気ぃするわ」
あやかはにっこりと頷いた。
そして、真島の手をぎゅっと握る。
「……でも、今は真島さんも、あたしのそばにいる。ここが、全部“わたし”なんだよ」
真島の頬が少しだけ緩んだ。
「せやな……」
江戸と神室町、過去と現在、全てが交差する――
そんな温かな午後だった。
― 幾松の裏庭・縁側 ―
日が傾き始めた午後。
桂に案内され、幾松の店の裏庭へと移動したあやかたち。
静かな縁側に腰を下ろすと、どこか落ち着いた空気が漂った。
桂が湯呑に煎れたばかりの茶を渡してくれる。
「……それで、あやか。突然お前がいなくなった時、一体何があったんだ?」
その問いに、あやかはゆっくりと真島の顔を見てから、桂に視線を戻す。
「……あたしね。気づいたら“神室町”っていう、全く違う時代と場所にいたの」
「神室町……?」
「未来の日本、みたいなところ。高層ビルに、車に、ケータイ、ココみたいに天人は居なくて……全部が違った世界で。最初はどうしていいか分かんなくて……怖かった」
桂の目が真剣になる。
「そんな事が起こるのか? なら向こうではどうしていたんだ?」
「出会ったのがこの人。真島吾朗さん」
そう言って、あやかは隣にいる真島に目をやった。
真島は眉を少し上げながらも、静かに桂と目を合わせる。
「……この人が、あたしの命、何度も助けてくれた。居場所も、仕事も、全部……与えてくれた人」
桂はしばし、真島を見つめたまま口を閉ざす。
だが、すぐに穏やかな声で返す。
「……恩人なんだな。ありがとう、大切な妹を守ってくれて」
「礼なんて、いらん。惚れた女を守んのは、当たり前のことやからな」
「――なに?」
一瞬、桂の目がわずかに見開かれる。
あやかは照れ臭そうに頷きながらも、まっすぐ言葉を続けた。
「……真島さんは“極道”っていう……未来の世界のヤクザなんだ。黒の世界に生きる人。でもね、優しいの。誰よりも、熱くて、まっすぐで……」
「……お前が、選んだ人なんだな」
「うん……真島さんと出会って、あたし、未来でもう一度、生きるって決めたの」
桂はふっと息をついて、背中を縁側に預けた。
「……そうか。お前も、もう……俺たちの“守るだけの妹”じゃなくなったんだな」
そう言うと桂は少し悲しいような嬉しいような表情を浮かべていた。
その言葉に、あやかの目に涙が滲む。
「でも、今も皆はあたしの誇りだよ。あの頃のこと、全部が今の“あたし”だから」
真島が静かに、その手をそっと握る。
「お前の兄貴分たちに……胸張れる男でおらなあかんな、オレ」
真島は聞こえるか聞こえないくらいの声で呟いていた。
桂は真島をじっと見て、ゆっくりと頷いた。
「……頼む。俺たちの、大切な妹だ。」
縁側の風が、木の葉を揺らした。
時代を超えて交わされた、男たちの無言の誓いがそこにあった。