過去の仲間たち
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― 万事屋・奥の部屋 ―
「こっちだ。」
銀時に案内され、あやかと真島は万事屋の奥にある一室に足を踏み入れた。
そこには、布で丁寧に覆われた木箱や桐箱がいくつも重ねて置かれていた。あやかはその光景を見た瞬間、思わず息をのんだ。
「……これ……全部……」
「お前が“もしもの時”にって言ってたろ? あの時は、こんなことになるとは思ってなかったけどよ」
銀時は少しバツが悪そうに頭を掻いた。
「荒らされる前、お前んとこからコソっと持ち出してたもんがいくつかあってな。今は全部、うちが預かってた。形見とか、大事なもんばっかりだったからよ」
あやかは、そっと木箱の蓋を開けた。
中には、彼女が江戸で大切にしていた着物、剣道具、そして…1つの櫛が丁寧に収められていた。
「……これは……母の形見……」
小さく呟くあやかの声に、真島はそっと寄り添う。
彼女の手が震えているのに気づき、何も言わずに肩に手を置いた。
「……ほんとに……ありがとう。銀兄」
「別に礼なんざいらねぇよ。あやかがあの時、俺らのことちゃんと信じて託してくれたから、今こうして返せるだけだ」
銀時の言葉に、あやかはこくりと頷く。
「それに、俺らにはこいつを守る義務があんだろ?……あの日、一緒に剣を振るってきた仲間としてな」
「ちょっとかっこよすぎますよ…!」
「それに比べて神楽ちゃん、さっきから何やって――ってその隊服また着てんのか!」
「これはアタシのアル!」
「違うってばああ!」
どこか懐かしい、万事屋らしい騒がしさに、あやかは肩を揺らして笑った。
そしてそっと、箱の中の紅い羽織を手に取る。これは、あの時の自分の“証”――。
(ちゃんと、帰ってこれたんだ)
そして隣にいるのは、今の自分の“帰る場所”。
あやかはその全てを胸に、深く息を吸った。
「さ、落ち着いたら……次は“今の江戸”を見に行こう。何が変わってて、何が変わってないのか。ちゃんとこの目で、確かめなきゃね」
真島が、口元に笑みを浮かべて頷いた。
「せやな。ワシも付き合うで、最後まで」
― 江戸・お妙の家 ―
夜の帳が降りる頃、あやかと真島は新八とお妙の勧めで泊まることになった。お妙は久々の再会を喜び何日でも居ていいからねと優しく出迎えてくれた。
街の喧騒から外れた、静かな通りに建つその家は、どこか懐かしい空気を残していた。
「……ほんとに、よう戻ってきたな」
ふすまを開け、畳の匂いがふわりと鼻をくすぐる。
あやかは小さく息を吐きながら、紅い羽織を丁寧に壁にかけた。
「昔はここが、全部自分の居場所だったんだよね……。なんか、遠い夢みたい」
「夢ちゃうで。ちゃんと地に足つけて、ここにおる」
真島は、あやかの背にそっと手を添えた。
彼の手の温もりが、不安定だった心を少しずつ溶かしていく。
「本当に久しぶりに帰って来れて、大切な人の顔を見れて良かった。」
「そうやな!」
「うん。っていうか、本当みんな変わらず元気で良かった。」
その言葉に、真島は短く笑って「賑やかやったもんな。」と呟くと、荷物を片隅に置いた。
簡単な食事をふたりで取り、懐かしい話を交わすうちに、夜は更けていく。
ふと、あやかが縁側に腰を下ろし、月を見上げた。
「また人と並んで江戸の月を見る日が来るなんて、思わなかったな」
「ワシも、まさか江戸の月をこうして眺める日が来るとは思わんかった」
隣に腰を下ろした真島が、あやかの肩にそっと寄り添う。
静かな夜。
虫の声と、ほんのり冷たい風。
ふたりだけの時間が、ゆっくりと流れていた。
「……ここでも、お前と一緒なら悪くないな」
「……うん。私も、そう思うよ」
寄り添うふたりの影が、月の光に照らされて、ひとつに重なっていた。