本当の気持ち
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―神室町・チャンピオン街 裏路地/深夜―
蒸し暑い夜の空気が、狭い路地に重たく淀んでいた。
「あっちから出ようかな…!」
あやかは買い物帰りに通り抜けようと、ふとチャンピオン街の裏へ足を向けていた。
その途中、小さな怒声と物音が耳に届く。
「……!」
物陰からそっと覗くと、そこには数人の極道風の男たちと、柄蛇のジャケットに身を包んだひとりの男。
真島吾朗――。
彼は鬼炎のドスを手に、無駄な動きひとつなく男たちを圧倒していた。
「あんた……ッ、どこまでやる気や……ッ!」
「1度やるゆうたら、最後までやるに決まっとるやろがい!」
冷えた声、鋭い目つき。
さっきまでの笑顔のかけらもなくて――まるで、別人のようだった。
あやかは言葉を失い、その場にただ立ち尽くす。
しばらくして男たちが這うように逃げ出していき、路地裏に静けさが戻る。
真島は息を整えると、ふと気配に気づいたように目線を向けた。
「……見とったんか」
姿を現したあやかに、真島はわずかに苦笑した。
「こっちは……見せないつもりだったのにな」
「……どうして、あんな……」
問いかける彼女の声に、真島はふと夜空を見上げた。
「ワシは、極道や。どんだけ抗っても、足引っ張ってくる過去がある。敵もおる。――いつ死んでもおかしない。せやからな……」
その視線をあやかに戻す。
「笑って過ごせるようなったお前を、また黒の世界に引きずり込ませたくないねん……もうそんな姿見たないねん」
「でも……!」
あやかが言いかけたとき、真島は軽く首を横に振った。
「この街で、穏やかに笑ってるお前を見て、ホッとしたんや。せやけどそれと同時に、ワシと一緒におったら、また命落とすことになるかもしれへん……って思うたんや」
「……」
「せやから、あの日、あえて遠ざけた。嫌われてもええ思うてな。けどな……」
静かに、けれどどこか寂しげに真島は笑った。
「――それでも、こうして顔見たら、また手ぇ伸ばしたなってまうんやから……困ったもんやな」
あやかの胸が、ぎゅっと痛んだ。
彼の言葉のひとつひとつに、嘘はなかった。
本当に、守りたいと思ってくれているのだと――わかってしまった。
それが、嬉しくて。
それが、悲しくて。
あやかは、一歩だけ彼のそばに歩み寄った。
「……それでも、わたしは――あなたのそばにいたいって思ってしまうんです」
一瞬、真島の瞳が揺れた。
それでも、彼は何も言わず、ただその場に立ち尽くしていた。
路地裏の闇の中、ふたりの間に言葉にならない想いだけが、そっと流れていった――。