因縁
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――東城会本部会議室
「しばらくだな、真島の兄さん。」
「……六代目から呼び出しくらうっちゅうんは、久しぶりやな。こっちも仕事で忙しいんやけど?」
軽口を叩きながらも、真島はその目を鋭く光らせていた。
テーブルを囲んで座っているのは、東城会六代目・堂島大吾、そして桐生一馬。
話題はひとつ――神室町で続発する連続切りつけ事件。
「報道じゃわからんこともある。現場の状況、詳しく聞かせてもらおか。」
真島がそう言うと、大吾が頷き、数枚の資料を差し出す。
「今のところ、被害者は全員一般人。共通点は“夜道を歩いていた”ってだけだ。ただ……傷口が、どう見ても“刀傷”なんだよな。」
桐生が資料を覗き込みながら、真島に目を向ける。
「犯人の手口……兄さんは、何か気づいたことは無かったか?」
真島はタバコをくわえたまま、椅子に背を預けて天井を見上げた。
「――いや、正直に言うとな、ひとり……妙に反応しとるヤツがおる。」
「……あやかか。」
桐生の言葉に、真島の目が細くなる。
「せや。あいつ、ニュースで切り口見た瞬間、完全に表情変わっとった。まるで……何かを思い出したようにな。」
「何者なんだ? その“あやか”って」
大吾の問いに、真島は少しだけ黙って、煙をくゆらせた。
「正直、全部は話されとらん。でもな――“刀で生きてきた”って言っとた。それも、尋常な修羅場潜ってきたようやな。」
重苦しい空気が会議室に流れる。
「警察は動いちゃいるが、裏の線までは見てない。……オレらの方でも、独自に動いた方が良さそうだな。」
桐生の言葉に真島は頷く。
「この街で誰かが刀を振り回しとるっちゅうなら、それだけで放っとけへんわ。……それに――」
真島は目を伏せて、窓の外を見た。
「アイツの目ぇが、また昔みたいになったら……ワシは、嫌やねん。」
桐生はその言葉に一瞬目を見開き、やがて小さく微笑んだ。
「……あんたらしいな。」
「うっさいわ、……この件、ワシが追うわ。」
そう言って、真島は立ち上がった。
胸の奥ではもう、答えが出ていた。
(あやか、お前……何を思い出しとるんや)
その頃の――神室町・夕暮れの雑踏
人の波にまぎれ、あやかはいつものように真島建設の仕事帰り、商店街を歩いていた。
けれど、どこか胸騒ぎがしていた。ずっと、何かの気配を感じていたのだ。
(……紅桜? まさか……)
そのときだった。
――ガシッ
「……!?」
突然、背後から肩を強く掴まれた。反射的に体を捻るが、口を塞がれ、そのまま裏路地へと引きずり込まれる。
「やめっ……! 放してっ――!」
薄暗い路地。静寂。
目の前に立っていたのは、漆黒の羽織をまとった男――
「……久しいな、ろくろ。」
その声に、全身が強張る。
「……朧……?」
朧――天導衆の一番弟子。
江戸の世界で、共に修羅をくぐった男。あの“うつろ”の傍に最後までいた者。
「神室町……異質な世界だな。ここが“表”の世界か。」
「……どうして、ここに……」
「お前の刀、“紅桜”が教えてくれた。お前が、ここにいると。」
あやかの瞳が揺れる。紅桜は彼女の心と繋がるように作られた妖刀。
それが、この世界にも引き寄せたのか。
「……まさか、朧……あなたもタイムトリップを?」
「俺は、お前を連れ戻しに来た。“あの方”の命だ。」
「もう……戻らない。」
「それはお前の意思だろう。しかし――“帰る術”を知ってしまった以上、選べるということだ。」
「帰る術……?」
朧は懐から、小さな“勾玉”のような物を取り出す。古代の意匠が施されたそれが、淡く赤く、脈打っていた。
「これが“鍵”だ。時を越える術――“歪み”を開く媒体。お前を探すため、俺は――」
朧は、ふと手にした勾玉を見下ろし、静かに言った。
「……だが、ろくろ。これは忠告でもあり、警告でもある。」
「……警告?」
朧の瞳が、闇の中で異様な光を宿す。
「この時代にお前が留まるというのなら――お前が“新たに得たもの”を、一つずつ壊していく。」
あやかの心臓が、ギクリと跳ねる。
「……なにを、言って――」
「真島吾朗。桐生一馬。東城会に連なる者たち。
……お前がこの世界で触れた“温もり”を、一人ずつ、闇に葬っていく。お前が戻ると決めるまでな。」
「……っ……!」
その言葉に、あやかの視界が一瞬でぐらつく。
怒りとも恐怖ともつかない感情が、胸を焼くように突き上げた。
「やめて……っ! あの人たちは関係ない……!」
「関係ないのは“お前の勝手”だ。俺たちは兵器であり、天導衆の所有物。“自由”など、幻想に過ぎん。」
その冷酷な言葉が、まるで鋼の刃のようにあやかの胸を斬り裂いた。
「選べ、ろくろ。己の意思で戻るのか――それとも、奪われることで“戻される”のか。」
――ドサッ
朧の姿は風のようにかき消え、重苦しい静寂だけが路地裏に残った。
あやかはその場に崩れ落ちるように座り込み、震える手を見つめる。
(……真島さん……桐生さん……みんな……)
こみ上げる吐き気を抑えながら、あやかはそのままうつむいた。
「朧……!」
声がかき消されるように、路地に突風が吹いた。
再び気づいた時、朧の姿は、もうなかった。
ひとりきり残されたあやかは、壁にもたれて肩で息をした。
「……なんで、今……」
息を整えながら、自分の胸に手を当てた。
そこには確かに、“紅桜”の気配が、近づいてきている実感があった。
そして、“戻る術”を知ってしまったことが、彼女の中に複雑な迷いを生んでいた――
(私は……ここにいてもいいの……?)
「しばらくだな、真島の兄さん。」
「……六代目から呼び出しくらうっちゅうんは、久しぶりやな。こっちも仕事で忙しいんやけど?」
軽口を叩きながらも、真島はその目を鋭く光らせていた。
テーブルを囲んで座っているのは、東城会六代目・堂島大吾、そして桐生一馬。
話題はひとつ――神室町で続発する連続切りつけ事件。
「報道じゃわからんこともある。現場の状況、詳しく聞かせてもらおか。」
真島がそう言うと、大吾が頷き、数枚の資料を差し出す。
「今のところ、被害者は全員一般人。共通点は“夜道を歩いていた”ってだけだ。ただ……傷口が、どう見ても“刀傷”なんだよな。」
桐生が資料を覗き込みながら、真島に目を向ける。
「犯人の手口……兄さんは、何か気づいたことは無かったか?」
真島はタバコをくわえたまま、椅子に背を預けて天井を見上げた。
「――いや、正直に言うとな、ひとり……妙に反応しとるヤツがおる。」
「……あやかか。」
桐生の言葉に、真島の目が細くなる。
「せや。あいつ、ニュースで切り口見た瞬間、完全に表情変わっとった。まるで……何かを思い出したようにな。」
「何者なんだ? その“あやか”って」
大吾の問いに、真島は少しだけ黙って、煙をくゆらせた。
「正直、全部は話されとらん。でもな――“刀で生きてきた”って言っとた。それも、尋常な修羅場潜ってきたようやな。」
重苦しい空気が会議室に流れる。
「警察は動いちゃいるが、裏の線までは見てない。……オレらの方でも、独自に動いた方が良さそうだな。」
桐生の言葉に真島は頷く。
「この街で誰かが刀を振り回しとるっちゅうなら、それだけで放っとけへんわ。……それに――」
真島は目を伏せて、窓の外を見た。
「アイツの目ぇが、また昔みたいになったら……ワシは、嫌やねん。」
桐生はその言葉に一瞬目を見開き、やがて小さく微笑んだ。
「……あんたらしいな。」
「うっさいわ、……この件、ワシが追うわ。」
そう言って、真島は立ち上がった。
胸の奥ではもう、答えが出ていた。
(あやか、お前……何を思い出しとるんや)
その頃の――神室町・夕暮れの雑踏
人の波にまぎれ、あやかはいつものように真島建設の仕事帰り、商店街を歩いていた。
けれど、どこか胸騒ぎがしていた。ずっと、何かの気配を感じていたのだ。
(……紅桜? まさか……)
そのときだった。
――ガシッ
「……!?」
突然、背後から肩を強く掴まれた。反射的に体を捻るが、口を塞がれ、そのまま裏路地へと引きずり込まれる。
「やめっ……! 放してっ――!」
薄暗い路地。静寂。
目の前に立っていたのは、漆黒の羽織をまとった男――
「……久しいな、ろくろ。」
その声に、全身が強張る。
「……朧……?」
朧――天導衆の一番弟子。
江戸の世界で、共に修羅をくぐった男。あの“うつろ”の傍に最後までいた者。
「神室町……異質な世界だな。ここが“表”の世界か。」
「……どうして、ここに……」
「お前の刀、“紅桜”が教えてくれた。お前が、ここにいると。」
あやかの瞳が揺れる。紅桜は彼女の心と繋がるように作られた妖刀。
それが、この世界にも引き寄せたのか。
「……まさか、朧……あなたもタイムトリップを?」
「俺は、お前を連れ戻しに来た。“あの方”の命だ。」
「もう……戻らない。」
「それはお前の意思だろう。しかし――“帰る術”を知ってしまった以上、選べるということだ。」
「帰る術……?」
朧は懐から、小さな“勾玉”のような物を取り出す。古代の意匠が施されたそれが、淡く赤く、脈打っていた。
「これが“鍵”だ。時を越える術――“歪み”を開く媒体。お前を探すため、俺は――」
朧は、ふと手にした勾玉を見下ろし、静かに言った。
「……だが、ろくろ。これは忠告でもあり、警告でもある。」
「……警告?」
朧の瞳が、闇の中で異様な光を宿す。
「この時代にお前が留まるというのなら――お前が“新たに得たもの”を、一つずつ壊していく。」
あやかの心臓が、ギクリと跳ねる。
「……なにを、言って――」
「真島吾朗。桐生一馬。東城会に連なる者たち。
……お前がこの世界で触れた“温もり”を、一人ずつ、闇に葬っていく。お前が戻ると決めるまでな。」
「……っ……!」
その言葉に、あやかの視界が一瞬でぐらつく。
怒りとも恐怖ともつかない感情が、胸を焼くように突き上げた。
「やめて……っ! あの人たちは関係ない……!」
「関係ないのは“お前の勝手”だ。俺たちは兵器であり、天導衆の所有物。“自由”など、幻想に過ぎん。」
その冷酷な言葉が、まるで鋼の刃のようにあやかの胸を斬り裂いた。
「選べ、ろくろ。己の意思で戻るのか――それとも、奪われることで“戻される”のか。」
――ドサッ
朧の姿は風のようにかき消え、重苦しい静寂だけが路地裏に残った。
あやかはその場に崩れ落ちるように座り込み、震える手を見つめる。
(……真島さん……桐生さん……みんな……)
こみ上げる吐き気を抑えながら、あやかはそのままうつむいた。
「朧……!」
声がかき消されるように、路地に突風が吹いた。
再び気づいた時、朧の姿は、もうなかった。
ひとりきり残されたあやかは、壁にもたれて肩で息をした。
「……なんで、今……」
息を整えながら、自分の胸に手を当てた。
そこには確かに、“紅桜”の気配が、近づいてきている実感があった。
そして、“戻る術”を知ってしまったことが、彼女の中に複雑な迷いを生んでいた――
(私は……ここにいてもいいの……?)