絶望の淵にて(金ガ/モセモモ)
※2キャラネタバレご注意※
もし救援が遅れていたら……な妄想です。書きたいところだけなので急に始まって急に終わります。
大丈夫です、この後ちゃんと助けは来ます。
そしてもーせすくんはこんなに甘くないか、でも彼お茶目さんだしなぁ……と悶々としながら書かせていただきました。ももんさんの一人称が「僕」なの本当に可愛い。よろしくお願いいたします🙇
──────
目覚めて真っ先に判ったことは、ここがエリオス城塞の医務室であること、そしてチューバたちがもうこの世にいないという事実だった。涙でじわりとぼやけだした視界に、影が差す。
「やあ。よく眠れたかい、モモン?」
逆光でその表情は見えずとも、どこか愉しげで飄々とした、少年とも少女ともつかない声には聞き覚えがあり過ぎた。
「……ッ、モーセス……!」
「さすが魔物だね。オレが手ずから治療してやったとはいえ、あれ程の怪我から動けるようになるまで丸一日かからないなんて」
『動ける』とモーセスは言ったけど、指一本動かそうとするだけでもとてつもない労力を必要とした。それでも、寝かされていたベッドから片肘を頼りに身を起こし、渾身の怒りを込めてモーセスを睨みつける。すると彼は態とらしく肩をすくめて言った。
「あー、コワイコワイ。これは何をされるか分かったもんじゃないなァ。どうせこのままじゃナニもできないし、もう少し眠っていてもらおう」
「っ、」
熟練された手つきで注射針を刺し込まれる。鎮静剤の類いを注入されたらしい、と認識するより早く薬剤は効果を発揮した。
「おやすみ、モモン。良い夢を」
────
夢を見ている。
僕の友だちが、家族が、みんな生きている夢。
やさしくて、あたたかくて、なつかしい夢。
其処にはみんなの本の持ち主たちもいて、でもかつてのように争うことなく、安らかな表情で談笑してさえいる。
その輪の中にはシスター・エルの姿もあり、となりにはサンビームさんとウマゴンが座っている。少し離れた位置からぼう然とあたたかい光景を見守っていた僕に、シスターが微笑みながら手を差し伸べてくれる。僕は少し躊躇ったあと、彼女たちに向かって駆け出した──
「どうして泣いているんだ?」
──俄に意識が浮上する。あぁ、そうだ。僕はしあわせな夢を見ていたんだ。これは夢だと自覚していたはずなのに、突如終わりを告げたぬくもりに余計に涙が止まらなくなる。どうせ無理矢理眠りに就かせるなら、そのまま放っておいてほしかった。
でも、僕には自分で決めた使命があるから。希望の地図を描くという仕事を遂行しないといけないから。ここで諦めることはゆるされない。臆病な僕にできること、それを途中で投げ出すことはできない。
「あ、泣き止んだ。どういう心境の変化だ。喋ってくれなきゃつまんないなぁ」
マイペースにモーセスは感想をこぼしている。
正直に言えば、奇跡でも起こらない限りここからの脱出は不可能だ。万全の状態でも攻撃手段を持たない僕が、ベッドの横で首を傾げてこちらを不思議そうに観察しているモーセスに勝てる可能性はほぼゼロだと思う。
彼は僕の手足を、首を、鎖で繋いで、この病室だった場所に閉じ込めている。そう、まだ生かしているんだ。この命がある限り、逃げられる可能性は全くのゼロでもない筈、と思いたい。そのためにはこちらもモーセスを観察する必要がある。彼にも隙はある筈だから。
「……僕を生かしたのは、実験するため」
「お、喋った。そうだよ、君の感知能力には目を瞠るものがある」
「実験が終われば僕を処分する、そうだね?」
確信を持って問いかけたけど、返ってきたのはちょっと想定外な答えだった。モーセスは斜め上を見上げて思案する様子を見せて言った。
「ん〜、それはどうかなぁ。最後まで心が折れないようだったら、面白いから飼ってあげてもいいかなって。もちろん他の奴らには秘密でね」
「飼う……?」
「寝てる間に触ってみたら、君、なかなかいい毛並みをしてるじゃないか。ペットには最適かなって。ほら、この仕事も楽しいけど、時には癒しも必要だろ?」
「正気か?」
思わず口をついて出た言葉にモーセスは愉しげに笑った。
「ハハッ。その調子だ。そうやってオレに歯向かって、その度にオレは君を躾ける。でも殺したりはしない。それが一番楽しいって知ってるから。残った君の仲間たちが潰されていくのをオレの隣で一緒に見るんだ。当然君は抵抗するだろうけどそれは無意味。逃さない。それに君は他者を傷つける事ができないだろ。能力的にも、精神的にも」
目を見開いてモーセスを見上げる。すると、得意顔で彼は演説を続けた。
「君の術を調べたんだ。他の拠点にあったから少し面倒だったけど。随分と回避に特化していて、攻撃呪文は一つもなかった。一つも、だ。それと、君を追った兵たちに聞いてみたら、逃げに徹していて反撃する素振りすら無かったってさ。……モモン、君は優しいねぇ」
最後にそう皮肉って、モーセスは酷薄な笑みを浮かべた。
「さて、」と彼がデスクに向かう。また鎮静剤でも打つのかと身構えていると、この部屋に漠然とあった術の気配が明確になり、こちらに戻るモーセスと共に近づいてきた。まだ本調子ではないからぼんやりとしか捉えられなかった友だちのなつかしい感覚に、僕の耳はぴんぴんと反応する。
それを見たらしいモーセスが、術の瓶を抱えて「やっぱり!」と愉快そうな声を上げた。
「君、耳だけはホント可愛いな! ほら、オトモダチの術だよ。術だけでも会えて嬉しいだろ?」
「……嬉しいわけないじゃないか」
「そうは言いつつ、君の耳は実に正直だなぁ」
言って、モーセスが僕の耳に無造作に触れた。その瞬間。
「ひぁ……ッ」
「ん?」
思わぬ声がまろび出て、僕は鎖で繋がれた両手で口元を抑えた。じゃらりと軽薄で重厚な音がする。
その間もモーセスは僕の耳に触れていて、自分のものとは信じたくない情けない声が洩れ出てしまうから正直今すぐやめてほしい。
「……なるほど」
涙で烟る視界の中で、モーセスがウンウンと頷いているのが分かった。そしてまた彼は一人で語りだした。
「サメという生き物を知ってる? 軟骨魚類の代表格。そいつらにはロレンチーニ器官という特殊な部位がある。微弱な電流を感知する事に特化した場所なんだけど、同時に弱点とも成りうる。何故か? 敏感だからさ」
そこでモーセスは言葉を区切る。声を抑えるのに必死な僕の耳は、彼の声の振動を捉えて勝手に震えてしまう。
モーセスが口端を吊り上げるのが見えた。何をするつもりなのかなんとなく悟った僕が「やめて」と言う前に、それは実行に移されてしまった。
彼は僕の耳を柔く握り込んだ。親指の腹で耳の前部を撫でつけられれば、自然と身体がびくびくと跳ねる。
「敏感は敏感でも、君の場合は性的にも弱いみたいだね。だってほら、ここも反応しちゃってる」
一番恥ずかしい場所をつんつんとつつかれ、背を弓形にしてその甘い痺れを逃がすのに躍起になる。
「や、もぅ……やめ、て……くれ」
「うーん、どうしようか。ペットの性欲をどうにかしてやるのも飼い主の役割だしなぁ」
今度は指で僕の耳を揉み込みながら思案顔をしてみせるモーセスに、腹を立てる余裕すら最早無い。
「フフッ。ズイブンよさそうだね。この調子なら耳だけでイけちゃうんじゃないの?」
「……は?」
改めて思う、正気か彼は、と。
これから何をされ、何が起こるのか、かの人に憧れて鍛え続けてきた頭脳を使わずともわかってしまう。
無意味だと理解しつつもいよいよ暴れ出した僕のおなかに、モーセスがヒラリと跨がる。彼に手を伸ばそうとしても、ギリギリの位置で調整された鎖が抵抗を阻む。ニヤニヤと笑むモーセス。金属音が過敏になった耳に酷く障った。
もし救援が遅れていたら……な妄想です。書きたいところだけなので急に始まって急に終わります。
大丈夫です、この後ちゃんと助けは来ます。
そしてもーせすくんはこんなに甘くないか、でも彼お茶目さんだしなぁ……と悶々としながら書かせていただきました。ももんさんの一人称が「僕」なの本当に可愛い。よろしくお願いいたします🙇
──────
目覚めて真っ先に判ったことは、ここがエリオス城塞の医務室であること、そしてチューバたちがもうこの世にいないという事実だった。涙でじわりとぼやけだした視界に、影が差す。
「やあ。よく眠れたかい、モモン?」
逆光でその表情は見えずとも、どこか愉しげで飄々とした、少年とも少女ともつかない声には聞き覚えがあり過ぎた。
「……ッ、モーセス……!」
「さすが魔物だね。オレが手ずから治療してやったとはいえ、あれ程の怪我から動けるようになるまで丸一日かからないなんて」
『動ける』とモーセスは言ったけど、指一本動かそうとするだけでもとてつもない労力を必要とした。それでも、寝かされていたベッドから片肘を頼りに身を起こし、渾身の怒りを込めてモーセスを睨みつける。すると彼は態とらしく肩をすくめて言った。
「あー、コワイコワイ。これは何をされるか分かったもんじゃないなァ。どうせこのままじゃナニもできないし、もう少し眠っていてもらおう」
「っ、」
熟練された手つきで注射針を刺し込まれる。鎮静剤の類いを注入されたらしい、と認識するより早く薬剤は効果を発揮した。
「おやすみ、モモン。良い夢を」
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夢を見ている。
僕の友だちが、家族が、みんな生きている夢。
やさしくて、あたたかくて、なつかしい夢。
其処にはみんなの本の持ち主たちもいて、でもかつてのように争うことなく、安らかな表情で談笑してさえいる。
その輪の中にはシスター・エルの姿もあり、となりにはサンビームさんとウマゴンが座っている。少し離れた位置からぼう然とあたたかい光景を見守っていた僕に、シスターが微笑みながら手を差し伸べてくれる。僕は少し躊躇ったあと、彼女たちに向かって駆け出した──
「どうして泣いているんだ?」
──俄に意識が浮上する。あぁ、そうだ。僕はしあわせな夢を見ていたんだ。これは夢だと自覚していたはずなのに、突如終わりを告げたぬくもりに余計に涙が止まらなくなる。どうせ無理矢理眠りに就かせるなら、そのまま放っておいてほしかった。
でも、僕には自分で決めた使命があるから。希望の地図を描くという仕事を遂行しないといけないから。ここで諦めることはゆるされない。臆病な僕にできること、それを途中で投げ出すことはできない。
「あ、泣き止んだ。どういう心境の変化だ。喋ってくれなきゃつまんないなぁ」
マイペースにモーセスは感想をこぼしている。
正直に言えば、奇跡でも起こらない限りここからの脱出は不可能だ。万全の状態でも攻撃手段を持たない僕が、ベッドの横で首を傾げてこちらを不思議そうに観察しているモーセスに勝てる可能性はほぼゼロだと思う。
彼は僕の手足を、首を、鎖で繋いで、この病室だった場所に閉じ込めている。そう、まだ生かしているんだ。この命がある限り、逃げられる可能性は全くのゼロでもない筈、と思いたい。そのためにはこちらもモーセスを観察する必要がある。彼にも隙はある筈だから。
「……僕を生かしたのは、実験するため」
「お、喋った。そうだよ、君の感知能力には目を瞠るものがある」
「実験が終われば僕を処分する、そうだね?」
確信を持って問いかけたけど、返ってきたのはちょっと想定外な答えだった。モーセスは斜め上を見上げて思案する様子を見せて言った。
「ん〜、それはどうかなぁ。最後まで心が折れないようだったら、面白いから飼ってあげてもいいかなって。もちろん他の奴らには秘密でね」
「飼う……?」
「寝てる間に触ってみたら、君、なかなかいい毛並みをしてるじゃないか。ペットには最適かなって。ほら、この仕事も楽しいけど、時には癒しも必要だろ?」
「正気か?」
思わず口をついて出た言葉にモーセスは愉しげに笑った。
「ハハッ。その調子だ。そうやってオレに歯向かって、その度にオレは君を躾ける。でも殺したりはしない。それが一番楽しいって知ってるから。残った君の仲間たちが潰されていくのをオレの隣で一緒に見るんだ。当然君は抵抗するだろうけどそれは無意味。逃さない。それに君は他者を傷つける事ができないだろ。能力的にも、精神的にも」
目を見開いてモーセスを見上げる。すると、得意顔で彼は演説を続けた。
「君の術を調べたんだ。他の拠点にあったから少し面倒だったけど。随分と回避に特化していて、攻撃呪文は一つもなかった。一つも、だ。それと、君を追った兵たちに聞いてみたら、逃げに徹していて反撃する素振りすら無かったってさ。……モモン、君は優しいねぇ」
最後にそう皮肉って、モーセスは酷薄な笑みを浮かべた。
「さて、」と彼がデスクに向かう。また鎮静剤でも打つのかと身構えていると、この部屋に漠然とあった術の気配が明確になり、こちらに戻るモーセスと共に近づいてきた。まだ本調子ではないからぼんやりとしか捉えられなかった友だちのなつかしい感覚に、僕の耳はぴんぴんと反応する。
それを見たらしいモーセスが、術の瓶を抱えて「やっぱり!」と愉快そうな声を上げた。
「君、耳だけはホント可愛いな! ほら、オトモダチの術だよ。術だけでも会えて嬉しいだろ?」
「……嬉しいわけないじゃないか」
「そうは言いつつ、君の耳は実に正直だなぁ」
言って、モーセスが僕の耳に無造作に触れた。その瞬間。
「ひぁ……ッ」
「ん?」
思わぬ声がまろび出て、僕は鎖で繋がれた両手で口元を抑えた。じゃらりと軽薄で重厚な音がする。
その間もモーセスは僕の耳に触れていて、自分のものとは信じたくない情けない声が洩れ出てしまうから正直今すぐやめてほしい。
「……なるほど」
涙で烟る視界の中で、モーセスがウンウンと頷いているのが分かった。そしてまた彼は一人で語りだした。
「サメという生き物を知ってる? 軟骨魚類の代表格。そいつらにはロレンチーニ器官という特殊な部位がある。微弱な電流を感知する事に特化した場所なんだけど、同時に弱点とも成りうる。何故か? 敏感だからさ」
そこでモーセスは言葉を区切る。声を抑えるのに必死な僕の耳は、彼の声の振動を捉えて勝手に震えてしまう。
モーセスが口端を吊り上げるのが見えた。何をするつもりなのかなんとなく悟った僕が「やめて」と言う前に、それは実行に移されてしまった。
彼は僕の耳を柔く握り込んだ。親指の腹で耳の前部を撫でつけられれば、自然と身体がびくびくと跳ねる。
「敏感は敏感でも、君の場合は性的にも弱いみたいだね。だってほら、ここも反応しちゃってる」
一番恥ずかしい場所をつんつんとつつかれ、背を弓形にしてその甘い痺れを逃がすのに躍起になる。
「や、もぅ……やめ、て……くれ」
「うーん、どうしようか。ペットの性欲をどうにかしてやるのも飼い主の役割だしなぁ」
今度は指で僕の耳を揉み込みながら思案顔をしてみせるモーセスに、腹を立てる余裕すら最早無い。
「フフッ。ズイブンよさそうだね。この調子なら耳だけでイけちゃうんじゃないの?」
「……は?」
改めて思う、正気か彼は、と。
これから何をされ、何が起こるのか、かの人に憧れて鍛え続けてきた頭脳を使わずともわかってしまう。
無意味だと理解しつつもいよいよ暴れ出した僕のおなかに、モーセスがヒラリと跨がる。彼に手を伸ばそうとしても、ギリギリの位置で調整された鎖が抵抗を阻む。ニヤニヤと笑むモーセス。金属音が過敏になった耳に酷く障った。
