Phi-Brain

ここから始まる

木でできた床に、二人分の軽快な足音が鳴り響く。
まさか壁が動いて道が現れるなんて考えもしなかった。予想外の答えにテンションが上がったのもあってか、アスレチックコースを進むみたいにどんどん駆け抜けていく。走るともし間違えた時に命が危ない、というのはさっき思い知らされたのに、カイトが走り出したから私もつられて追いかけてしまっていた。
カイトが進むなら、きっと安全よね。そんな理由を後から付けてみたけれど、本当は罠があることも一瞬忘れていたくらいだ。
だって、カイトがあまりにも嬉しそうだから。
高校生になって再会した幼なじみは、背が高くなって声変わりもして、そしてあまり笑わなくなっていた。パズルが得意なところは変わっていなくて、むしろ放っておくと寝食も忘れてずっとパズルを解くくらいにはパズルバカだけど、だからお目付役として世話を焼くようになったけれど、それでも昔のように打ち解けるにはまだ距離がある。私に対してだけではなくて、学校の皆に対してもカイトは積極的には関わろうとせず、どこか一線を引いている印象だ。
そんなカイトが、今は心から笑っている。

「解けないパズルを解いたぜ!」

そう言って誇らしげな顔を見せたカイトは、幼い頃のカイトと全然変わっていない。
あぁ、やっぱりカイトだ。パズル部で出されたナンプレも入り口のスライドパズルも解けて当たり前、簡単すぎてつまらないみたいな態度だったけれど、今ここにいるのは私のよく知っている、パズルが大好きなカイトだ。

「…うん!」

嬉しくなって頷けば、カイトはパズルの苦手な私を先導するみたいに、また前を見てゴールまで迷わず進む。
よく分からない電子端末に届いた、放っておけない危険なパズル。それを解いた先に何があるのか、解いたことで何が変わるのか、今はまだ分からないことだらけだけど。
それでも、カイトと一緒なら怖いものなんてない。幼い頃と同じようにカイトの隣に並びながら、心の内でわくわくした感情をそっと抱き寄せた。



fin.

(文庫ページメーカーで画像化してツイッターに掲載した話。1期1話のこの場面が好きです。)

2019/11/04 公開
17/90ページ