BO-BOBO

安心感はいつも隣に

明日は休日、仕事も休み。
それなら今日中にできることはやってしまおうとつい夜更かしをしてしまった現在、夜中のニ時過ぎ。さすがにそろそろ寝るかと布団に入った矢先、部屋の扉をノックする音が聞こえた。こんな真夜中にわざわざ訪ねてくるとは余程緊急の用事なのか、それともただの愉快犯か。後者だったら有無を言わせず追い返そう。そう考えて扉を開ける、と…
真夜中には最も似つかわしくない人物がそこにいた。

「なっ…レム!?」
「ランバダ様ぁ…」
「…いいから中に入れ、話はそれからだ」

どうして爆睡しているはずの彼女が、とも思ったが、廊下は立ち話ができるほど温かくもないので、とりあえず俺の部屋へ招き入れる。

「で、何があった」
「……」

うっすらと涙を浮かべてしばらく黙っていたレムだったが、やがて観念したように口を開く。

「ランバダ様…これ、一緒に見てください!」
「…は?」

持参した枕の陰から彼女が取り出したのは、いかにも幽霊や怪奇現象の類を扱ったとわかる見た目のDVD。いわゆる、ホラー映画という奴だ。

「お前、それだけのためにわざわざ来たのかよ…」
「だって明らかに怖そうじゃないですか!」
「じゃあ見ないで寝ればいいだろう」
「でも見ないと呪われそうで…そう考えたら眠れなくなっちゃって」

いつも寝てばかりの奴が眠れなくなるホラー映画ってどんなだよ。コイツの支離滅裂な言い分には呆れるが、どうしてもと言うので見てやることにした。



…が。

「さっき眠れないとか言ったのはどこのどいつだ」
「Zzz…」
「あーもう…レム!見ないと呪われるんじゃなかったのか!」
「Zzz…」

不満を口にしても、返ってくるのは寝息、いびき、たまに寝言。本格的に眠りについているようだ。こうなってはもう時間の経過に任せるしかない。
近くに置いてあったリモコンに手を伸ばし、もはや見る人を失った映画をためらうことなく消す。あんな趣味の悪いもの、間違っても一人で見る気にはなれない…怖いというわけでは断じてないが。

「せめて布団で寝ろよな…風邪ひいても知らないぞ」

まぁ、ぐっすり寝るコイツには聞こえていないだろうけど。
俺の腕を抱き枕にしたまま離さない彼女に無駄な独り言を呟くと、諦めて近くの毛布をかけてやる。

…明日の俺はきっと寝不足だな。
自嘲気味に少し笑うと、レムの持つ真拳の影響か、次第に訪れる眠気。明日の朝の彼女の反応を楽しみにしながら、俺はゆっくりと目を閉じた。



fin.

(ホラー映画を見る二人が書きたい!と思った結果がこれです。後半はもはや映画関係ないよ!)

2012/01/05 公開
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