三兄弟の過去、土蜘蛛の過去の巻

「まず、吾輩には前世の記憶がある
吾輩は前世ではこの世界とは違う
別の世界に生きる存在であり
ヒーローではなく”妖怪”であった
そして、妖怪達の中でも二大勢力と
言われる軍の大将だった」




土蜘蛛の言葉に驚きで口を開ける
友情マンと勝利マンだったが
土蜘蛛のやけに達観した口ぶりや
行動にどこか、すとんと腑に落ちた。




「‥‥‥‥吾輩には多くの仲間がおった
だがその中でも、吾輩が特に特別な目で
見ており特に特別だと思っていた奴がいた
その名は”大ガマ”、吾輩と同じく
二大勢力の大将であった」





土蜘蛛は忘れない
むしろ忘れられない
まだ、会いたいと
きっと見つけてみせるどんな手を
とってでもと心に誓っている




「大ガマは吾輩よりも数百年
年下の若造だった、だがそんな
吾輩にすぐに肩を並べてきた
怨念から生まれた吾輩に比べ
あいつは聖なる存在
陰と陽、どこか反対だったが
気づけば吾輩と大ガマは
共に行動することが多くなっていた」





月と太陽のごとく、いくら喧嘩しようとも
あっさりと仲直りをしていた
気づけばいつの間にか隣にいた
大ガマを特別に思っていた
だが…





「その日は突然訪れた
吾輩らの故郷、妖魔界をY星人と
呼ばれる異星人が飛来し
妖魔界をあっという間に滅ぼした
大ガマと吾輩は最後まで抵抗したが
死んでしまった」




そこまで話し、土蜘蛛は目を細める。




「‥今でも思う、恨まれてでもいいから…
嫌われてでもいいからあいつだけでも
無理やりにでも逃がしてやるべきだったと
そうしていればこんなに後悔することは
無かっただろう‥‥‥だが」




俯き、悲痛そうな表情を隠した。






「いくら後悔しようと死んでからでは遅いのだ
…お主らが伝えたい事、今からでも
間に合うであろう?恨まれたままでは
嫌だと本当は思っておるのではないか」
「‥それはそうだが」
「……伝えられるうちに伝えておけ
吾輩の様に、伝えたいことが
沢山あっても伝えられなくなる前に」



2人はその言葉に少し黙り込むと頷いて‥
宇宙船のエンジン音が静かに響いた。





「(大ガマよ、お主の事はなんとしてでも見つけ出す)」




土蜘蛛の瞳がギラりと光った。
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