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魔王とスミレがスミレの故郷ブナ村に里帰りしたある日のこと――
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スミレ
お前がブナ村に来るのはこれで2度目だな。もう道覚えただろう?
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魔王
む…。ま、まあな。
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スミレ
……。
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魔王
……。
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スミレ
……おい、あれ?おい!どこへ行く!こっちだぞ!
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魔王
む?そうか?すまんすまん。
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スミレ
びっくりしたー。どこへ行く気なのかと思ったぞ。
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魔王
すまん。実は方向音痴なんだ。
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スミレ
え?!今までお前、ずっとスタスタ前を歩いていたじゃないか?
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魔王
どうもな、3回以上角を曲がるとどこを歩いているかわからなくなってな。
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スミレ
え……。そんなんでよく今まで生きてきたな?
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魔王
私、一度行ったところは瞬間移動で飛ぶし、あんまり歩かないし、必ずお供の者が先導してたから、考えながら歩くことってないもん。
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スミレ
た、確かに…いわれてみればお前が長距離歩くところをまともに見た記憶がない。
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魔王
スミレ、先歩いて。
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スミレ
…ったくしょうがないな。これだから王様ってやつは。
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魔王
王様だから仕方ない。
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スミレ
けど方向音痴なんて可愛いところあるんだな。
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魔王
皆には、秘密だから!!スミレだから教えるんだぞ!
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スミレ
一応気にしてるのか…。地図は読めるか?
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魔王
戦略を立てる地図なら読める。道路地図は回さないと読めない。
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スミレ
困ったなあ…。
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魔王
お前は読めるのか?
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スミレ
もちろん。世界地図も読めるし、道路地図も読める。一人でどこまででも行けるぞ。
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魔王
じゃあ、私が遠出するときはスミレを連れていくことにする。
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スミレ
困った王様だなあ…。
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その後、スミレが先導してもあらぬ方向へ歩こうとする魔王を引き留めることが帰宅までに5回ほどあったそうな。
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