• ある昼下がり。魔界の城でスミレが本を読んでいると、ひょっこりと魔王がやって来た。

  • 魔王

    スミレ

  • スミレ

    なんだ?

  • 魔王

    遊んで

  • 無垢な子供のような誘いに、スミレの頬杖が崩れた。いつもの魔王ではないような気がして、蔑むような目をして彼を振り返った。

  • スミレ

    ……子供かお前は。忙しいんじゃなかったのか?

  • 魔王

    今は暇。遊んで

  • なんとも単純だ。

  • スミレ

    ……はいはい

  • 仕方なくスミレは言われるがまま手を引かれてついていく。
    向かった先は魔王の研究室だ。

  • 魔王

    見てくれ。ホムンクルスがこんなに育ったんだ

  • スミレ

    ほ、ホムンクルス?ホムンクルスって、錬金術師のほら話じゃなかったのか!

  • ガラス瓶の中に、豆粒ほどのピンクの肉塊が蠢いている。

  • 魔王

    ホムンクルスは作れるぞ。瓶の中からは出せんがな

  • スミレが瓶の中の肉塊をまじまじと見つめている。魔王は誇らしくなった。

  • 魔王

    凄かろう

  • スミレ

    すごいすごーい!

  • 魔王

    そうだろうそうだろう。もっと褒め称えろ。

  • 魔王はうずうずしてきてスミレをこちら側に誘い込もうとした。

  • 魔王

    スミレも研究を手伝わないか?

  • スミレ

    わ、わたしには無理だよ!

  • 魔王

    大丈夫大丈夫。ガーデニングみたいなものだ

  • スミレ

    うーん、しかし、あまり興味はないかな

  • 魔王

    なん…だって…こんなに面白いのに…

  • 魔王は衝撃を受けた。こんなに面白い遊びを興味がないとな。とたんに彼は不機嫌になり、

  • 魔王

    もういい!スミレなんか嫌いだ!二度とこの部屋に入ってくるな!

  • とスミレを研究室から締め出した。

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