第二十三話 見つけたよ、ファティマ

 そして、その「いつか」は、直後に訪れた。
 「どちら様ですか?この物件の所有者の方ですか?」
 窓の外でタバコ休憩をしていたはずの不動産屋が、誰かと話している。三人は窓の外を覗って――戦慄した。
 「うそ……カスパール?!どうしてここに?!」
 「誰?知り合い?」
 「まさか、お前の元婚約者?!ここまで追ってきたのか?!」
 ファティマはとっさに隠れようとした。クローゼットに隠れようとして、聞き覚えのある声に捕まってしまう。
 「ファティマ!!会いたかったよ!!ずっと捜していたんだ!!やっと会えた!!こんなところにいたんだね!!助けに来たよ!!さあ、帰ろう!!」
 カスパールは両手を広げてファティマに歩み寄った。すかさずヴィクトールとエンリーケが立ちふさがる。
 「ファティマは渡さねえ。もうお前のもんじゃないからな」
 「何だって?」
 「あいつには指一本触れさせねえ!どうしてもというなら……!」
 エンリーケは腰から銃を取り出し構えた。ヴィクトールも一拍遅れて銃を構える。
 「お前たちか。僕の愛しの婚約者を誘拐した悪党は」
 「ファティマはこれっぽっちも愛しくなかったみたいだがな」
 「何を馬鹿な」
 ファティマもクローゼットから半分顔を出して舌を出す。
 「親が勝手に決めた婚約じゃない!あんたもあたしを利用してただけでしょ!何が愛しのファティマよ。あたしは全然愛しくない。べーだ!」
 カスパールは米神に青筋を立ててゆっくりとスマートフォンを取り出し、警察に電話した。
 「私です。見つけました。このスマホのGPSまで」
 「どこに電話してんだ?」
 「警察に決まってるだろう」
 「てめえ!!」
 エンリーケが引き金を引く。カスパールは首をわずかに傾けてそれをかわす。
 「君から撃ってきたな。ありがとう。これで正当防衛だ。死ね!」
 カスパールは懐からメスを取り出して二人に躍りかかった。今撃てば罪が重くなる。咄嗟にそう判断したヴィクトールは銃を持つ右手でカスパールの突撃を食い止め、左手でメスを持つカスパールの右手を掴んで攻撃を阻止した。
 「ヴィクター!」
 「撃つなエンリーケ!撃ったらこいつの思うつぼだ!」
 エンリーケは瞬時に察して銃を仕舞い、カスパールを羽交い絞めにする。だが、カスパールは意外と体を鍛えていて、思うように攻撃の手を食い止めきれない。
 「貧弱な。お前たちのような軟弱なチンピラと僕を一緒にするなよ?」
 カスパールはエンリーケの拘束を振りほどき、ヴィクトールめがけてメスを振り下ろした。すんででヴィクトールがその手を掴んで食い止める。だが、強い。じりじりとメスがヴィクトールの眉間に近づいていく。食い止めきれない!と、
 「動くな!警察だ!」
 警察官が複数人屋敷に乗り込んできた。
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