第二十一話 己が正義を貫いて

 カスパールはロドリーゴに最近の異変について聞いてみることにした。ロドリーゴならば何か知っているかもしれない。
 「院長、最近おかしな患者が増えているとみんなが噂しています。僕の科は静かだが、みんな奇妙な薬を欲しがっているのは共通しているようだ。何かご存じないですか?」
 ロドリーゴはしらばっくれた。
 「知らんな。私の診療科もいつも通りだが?何か感染症が流行っているのかもしれないな」
 「感染症に限らないようですよ。整形外科も混んでいる。どこも怪我していないにもかかわらずだ」
 ロドリーゴはワナワナ震えだし、カスパールを恫喝した。
 「下らん!刑事ごっこのつもりか?いつもとなにも変わらんよ!余計な詮索はするな!馬鹿馬鹿しい!」
 カスパールは急に声を荒らげるロドリーゴに疑いを濃くした。
 「どうしたんですか院長?あなた最近おかしいですよ?」

 ロドリーゴは察しのいいカスパールを消そうと考えた。カスパールは院長の椅子を狙っている。この計画の邪魔をする頭はあるだろう。ロドリーゴは組織のギリエムにカスパールを消してくれと依頼した。
 ある夜、カスパールが一人帰宅の途に就いていると、物陰から視線を感じる。気にせず車に乗ると、煽り運転の車につけ狙われた。自宅に着いて車庫入れしようとしたら煽ってきた車がこの周囲を周回している。
 「僕の命を狙ってるのか?」
 カスパールは物陰に潜んで不審人物が追跡してくるのを待ち構えた。案の定、不審人物は家の敷地をうろうろしだし、カスパールを探しているようだった。近くにやってきたところでカスパールは不審人物を捕獲し、万年筆を急所にあてがって脅した。
 「少しでも動くと殺すぞ。万年筆一つでもお前を殺すのは簡単だ」
 不審人物は息を止めて抵抗を諦めた。
 「誰からの差し金で僕をつけ狙っているんだ?」
 「それは言えない」
 「血を見たいのか?」
 「ロドリーゴだ。ロドリーゴの依頼だ」
 カスパールはその告白がスッと腑に落ちた。あの男ならやりそうだ。
 「ありがとう」
 カスパールはスマートフォンで警察を呼び、不審者を脅しながらそれを待った。そして警察に突き出し、カスパール暗殺計画は失敗に終わった。

 ロドリーゴは黒だ。絶対に裏で何か働いている。そう確信したカスパールは手掛かりとして紹介状に目を付けた。紹介状を書いた病院に掛け合えば嘘か誠かわかるはずだ。すると、案の定紹介状はでたらめで、紹介状を書いた病院など一件もヒットしなかった。
 「これを警察に提出して、捜査をしてもらおう」
 警察の捜査によると、薬の密売サイトが摘発され、ロドリーゴの通話履歴からギリエムの電話番号が炙り出された。ロドリーゴと犯罪組織が繋がっている証拠が次々と明らかになった。
 そしてついにロドリーゴの自宅に家宅捜索が入る。すると、信じられない余罪が次々見つかったのだ。
2/3ページ
スキ