第十八話 孤独な死闘

 「許さねえ……許さねえ……全員、一人残らず、皆殺しだてめえらああ!!!」
 エンリーケは両手に銃を構え、手下たちに突っ込んでいった。
 エンリーケの戦闘能力は正気を失って頭に血が上っている一方で、限界を超えて研ぎ澄まされていた。次々正確に手下を撃ち抜き、数を減らしていく。エンリーケもまた数えきれないほど被弾していたが、不思議と痛みは全く感じなかった。熱くて冷たい。そんな不思議な錯覚を感じ、エンリーケは撃って撃って撃ちまくった。手下が倒れれば銃を奪い、弾を切らさず撃ち続けた。
 組織の増援がやってきてもエンリーケの超越した戦闘能力は衰えなかった。銃を構える前に殺す。走ってくる間に殺す。物陰から顔を出したら殺す。
 一発も撃たれることなく持ち主が死んだマシンガンを手に入れたエンリーケは、さらに狂ったように撃ちまくった。辺りは蜂の巣になり、屍の山が積みあがった。気が付いた時には、誰もいなくなっていた。
 組織の支部のメンバーで応援に駆け付けた者達は、一人残らずエンリーケに殺され、組織の支部は壊滅してしまった。
 静かになった廃工場跡で、エンリーケは辺りを見渡した。動いている人間は誰もいない。
 「へへへ……ふふ、あははははははは!」
 限界を超えて酷使した肉体に、肺活量はほとんど残っていなかったが、息も絶え絶えに狂ったように笑うエンリーケ。ひとしきり笑うと、ジャイルから手渡された思い出の銃のみを腰に差し、ふらふらと歩きだした。
 「へへ、馬鹿どもが……。皆殺しにしてやったぜ……。馬鹿に、しやがって……。舐めやがって……」
 廃工場跡の敷地の外まで歩いてくると、その門扉を構える塀に体を預け、エンリーケはズルズルとその場に腰を下ろした。
 「ヴィクターには、悪いことしたな……。結局、誰も守れなかった。馬鹿だ、俺ぁ。誰も守れないで、友達もなくして、俺ぁ、独りになっちまった。謝って、許してもらえるかな……ははは」
 エンリーケはスマートフォンを取り出し、ガラスの割れまくったモニタを何とか操作し、最後の力を振り絞ってヴィクトールに電話をかけた。
 「よお、元気してっか……?」
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