第十六話 エンリーケ再び

 エンリーケは組織の人間に命じられてヴィクトールたちの居所を探した。そして、運転席の窓が割れたままの見慣れたワゴン車を確認し、組織の人間を呼び寄せた。明日、二人を見つけたら民間人のいない空き地で作戦決行だ。
 土地勘のない新しい土地で、ヴィクトールとファティマは街の中を散策していた。念のためヴィクトールは腹部のポケットとウェストポーチに銃と予備の弾丸カートリッジを、ファティマはリュックの中に武器を忍ばせて、周囲を警戒しながら歩く。
 ――見つけた。エンリーケは威嚇射撃がてらヴィクトールの目の前に銃を一発撃った。ヴィクトールとファティマは警戒し、そばに転がっていたドラム缶や積み上げられた建材の陰に隠れた。戦闘開始だ。
 ファティマはリュックから防毒マスクとゴーグルを取り出して装着し、リュックから催涙スプレー、火炎放射スプレー、猛毒水鉄砲を取り出して装備した。ヴィクトールも腹部のポケットから銃を取り出して構える。
 「ファティマ。どこから撃ってくるかわかんねえ。目を凝らしてヒットマンを探して仕留めろ。俺もなるべく銃の射程範囲で仕留める」
 「任せて。武器はいっぱい持ってるから、なるべく敵を行動不能にしてくるわ」
 「行け!」
 ヴィクトールはファティマを信頼してファティマにミッションを与えた。彼女なら小柄ですばしこいので、隠密行動ができるだろうと確信しての判断である。
 ファティマはまず屋上から撃ってくるヒットマンを見つけると、仕留めるためにビルの階段を駆け上がった。そしてヒットマンの後姿を確認すると、瓶の中で1液と2液を反応させて毒ガスを発生し、屋上の隅に仕掛けて屋上のドアに閂をかけてヒットマンを締め出した。ヒットマンは施錠される音に気付いてドアを破ろうとしたが、毒ガスを吸い込んで中毒症状を起こし、そのまま息絶えた。
 次に暗殺者の姿を見つけたファティマはわざと彼の目の前に飛び出し、逃げ出した。追いかけてくるのを確認すると、逃げながら地面に白色ワセリンをたっぷり仕掛け、追手を転倒させることに成功する。起き上がらないうちに近寄って、猛毒水鉄砲を顔面に放射して一丁上がりだ。
 ファティマは持てる薬剤ぶきを総動員して暗殺者たちを仕留めていった。

 一方ヴィクトールは戦場の中心で戦闘中である。場所を移しながらエンリーケを狙っていたが、彼はふと違和感に気付いた。
 エンリーケが、必ず弾を外すのである。
 「あいつ、殺す気がないのか?仲間がいる手前、殺す真似をして時間を稼いでいる…?」
 ヴィクトールが数発急所を外して被弾した弾は、すべて暗殺者たちの撃った弾である。エンリーケの狙いはいつもわずかにずれていた。
 「エンリーケには後で訊きださなくちゃいけねーな。奴は後回しだ。雑魚を仕留めよう」
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