トーリン形成外科へようこそ

「何とか誤魔化せたか……。危なかった」
 アルカディウス医師はふうと大きく溜め息をついた。患者の血をあんな情けない様で下品に啜ってしまったのは醜態だった。今後は血を渇望しないように、適度に血液を摂取して、取り乱さないようにしよう。
「アンジェリカ……。おそらくまだ処女だな。瑞々しい、清らかな血だった。実に美味だった」
 もう二度と彼女がこの病院にかかることはないと思うと、少し惜しいような気がしないでもない。
「さて、次の患者に気持ちを切り替えなくては」
 アルカディウス医師は自身の両頬をパシンと叩いて気合を入れると、次の患者を呼んだ。

 今日もテレビでは爽やかなトーリン形成外科のCMが流れている。
「当院ではあなたの美しさを引き出すお手伝いをしています。トーリン形成外科」

END.
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