第四話 組織の配置換え

 「どうするヴィクター?どうやって殺す?」
 「まずはあの女を観察するところから始めようぜ。迂闊に動いたら簡単に足がついて、刑務所に逆戻りだ」
 二人はモナウン調剤薬局に張り込み、ファティマの生活パターンを観察した。
 朝8時10分前に薬局に到着。昼13時に昼食を買いに出かけ、17時45分に帰宅の途に就く。距離を開けて尾行するうちに、自宅の場所も帰宅ルートも判明した。
 「18時15分前後に街灯のない道に差し掛かるな」
 「周囲に遮蔽物もないし、民家もない。そこで始末するか」
 「そうだな」
 ファティマは時々仕事帰りに男の車に乗り込んで外食する日があるようだ。決まった帰宅ルートを歩くのは月曜、水曜、木曜の三日間しかチャンスがない。
 「次の月曜……。やるか」
 ファティマの行動を監視しているうちに、ヴィクトールに複雑な感情が芽生えた。自分を罠にかけて仁王立ちで嗤っていたファティマ。確かに憎い。憎くて気が狂いそうで、今にもこの銃で殺したい。しかし、ファティマの可愛らしさから目が離せない。監視すればするほど、目で追えば追うほど、意識せずにはいられない。たまに現れる金髪眼鏡の優男の存在が気になる。あの男はファティマの男なのだろうか。ファティマはあの男に抱かれているのだろうか。あんな男に……あの女が……。
 ヴィクトールの心に名状しがたい感情が膨らみ、今にも破裂しそうである。殺せばこの心に決着がつくのだろうか?あの女をこの手で殺せば、この不愉快な感情がすっきりと晴れるのだろうか。ファティマが死ぬ瞬間をイメージしてみる。すると、心が余計かき乱された。あいつが死ねば、解決する?本当に?
 自宅の玄関をくぐるファティマの後姿を見送ると、ヴィクトールは決断した。
 「エンリーケ。殺しは待ってくれ。車を借りよう。例の場所で誘拐する」
 「誘拐?!」
 「とりあえず誘拐して、家に連れ込んで、それからどうするか決めよう」
 「そ、そうか……。まあ、お前がそういうんなら……」
 そして次の月曜日、二人はモナウン調剤薬局から少し離れた場所に、レンタカーを停車させてその時を待った。
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