第四話 組織の配置換え

 「お前たちに殺してほしいのは、モナウン調剤薬局のファティマという女だ。それから、その父親でセレンティア総合病院の院長、医師会会長のロドリーゴ、そのほかに病院関係の要人を専門に始末してもらう」
 ヴィクトールは絶句した。よりによって一番関わりたくない人たちを始末しなければならないとは。
 「理由は、わかるな?」
 ヴィクトールはカラカラに乾いた喉から返答を絞り出した。無論理由はよくわかる。
 「仇だから、復讐のため、ですか?」
 「そうだ。特にヴィクトール。お前は特にあいつらが憎いだろう」
 ヴィクトールの脳裏に逮捕されたときのファティマの姿がよみがえる。
 仁王立ちで、勝ち誇った顔をして、見下していた。確かに憎い。だが、彼の心の奥で、何かが彼の憎しみの後ろ髪を引いていた。小さな葛藤。
 「俺たち二人で殺るんですか?」
 エンリーケが確認する。
 「二人でやるか、単独で始末するかはお前たちに任せる」
 エンリーケはほっと胸をなでおろし、ヴィクトールと協力できることを素直に喜んだ。
 「よかったなヴィクター。俺たち二人でやれば、きっとなんとかなるよ。サクッと始末しようぜ」
 「あ、ああ」
 すると、ジャイルは二人の前に二丁の拳銃を置いた。
 「これを使え。上からのプレゼントだ」
 二人は拳銃を手にした。想像していたよりずっしりと重い感触に、生唾を飲み込む。
 「じゃあ、あとは任せたぞ」
 そう言うジャイルに、ヴィクトールは素直に疑問を口にした。
 「始末したら誰に報告するんですか?今まで通りジャイルさんに報告するんですか?」
 ジャイルはふっと口角を上げると、
 「報告は見張りの奴らが自動的にやるだろうから、指示通りにやればいい。俺は……この後始末されるから」
 と、力なく告げた。
 「始末……!」
 「え、ジャイルさん、なんであなたが?!」
 二人がうろたえると、ジャイルは椅子から立ち上がり、二人をまとめて抱きしめた。
 「下のモンがしでかした失態は、上司が責任取るもんだ。いいんだ。俺たちの班は結構楽しくやらせてもらったから、思い残すことはなにもねえよ。お前たち、ありがとうな」
 「ジャイル……さん……!」
 三人は抱き合ってひとしきり泣き、今生の別れを悲しむと、名残惜しそうに別れた。
 二人を眩しそうな顔で見送ったジャイルの背中に、黒服の男が銃を向けていた。
 銃声が一発、組織の廊下に響き渡った。
2/3ページ
スキ