SwordsMaiden短編集

こんな居場所が欲しかった。猫ちぐらならぬ人ちぐら。私は狭いところが大好き。誰にも邪魔されない、私だけのお城。
お父様が買ってくださった。東の果ての島国で、猫用の猫ちぐらを作る職人から、オーダーメイドで作らせた。人一人がやっと入れる、大きな人ちぐら。
子供の頃は無邪気に遊んでた。自由に出入りして、私だけの秘密基地。
でも、今は、こんなに体を折り曲げて、やっと入れるぐらい。
いいのよ。狭いところは大好き。ここにいれば、誰も私を傷つけられない。
護身用にナイフを一本携えて。誰かがこの城に侵入してきたら、このナイフでぐさり。
お外は怖いことだらけよ。両親の喧嘩。怒声、罵声、悲鳴。何かがぶつかって壊れる音。悪口、陰口。嫌なことばかり。
お見合いなんて行きたくないの。パーティーなんて行きたくないの。学校なんて行きたくないの。百貨店なんて行きたくないの。お外でなんて遊びたくないの。友達なんか嘘っぱちなの。どこにも出ていきたくないの。人ちぐらがいい。この狭いお城がいい。ここにいれば快適なの。ここにいれば安全なの。
朝も昼も夜も、ここに入って夢を見るの。奇想天外な夢の世界だけが私の現実。たまに怖い目に遭って目覚めても、この中だったと気が付くと、安心するの。
人ちぐら、人ちぐら。怖い怖い外の世界から、私を守って。
いつか戦う勇気が出て、この城から出られる日がくる、その時まで。
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