丘の魔王 第一部

むかーしむかし、誰も近寄れないくらい茨の生い茂った丘の上に、もう何十年も人の住んでいない古ーいお城がありました。
丘の麓にはのどかな村落があるばかりで、人々はただ平和に畑仕事や畜産などして暮らしていました。

しかしある日を境に、こののどかな村落に突然魔物が降りてきて、畑のものを食い荒らしたり、若い娘や子供たちが行方知れずになったりするという事件が相次いで起こるようになりました。
どうも、廃城に魔王が住みはじめたというのが原因ではないかというのです。
村は急遽消防団を強化して自警団を組織し、魔物退治や行方不明者の捜索に追われるようになりました。
が、折角の自警団もこんな村落では人手も追い付かず、村は、早馬をつかって近隣の街や村に募集をかけることにしました。

「魔物退治で六十金、行方探し、骨なら三十、生きて八十、丘の魔王を退治すれば五百金」

そこで、村には一攫千金を夢見る沢山の勇者達が続々集まってきました。
しかし、誰一人として魔王に勝てるものは居ませんでした。

ここへ、隣村から一人の勇敢な娘が名乗りを上げました。
燃えるような赤毛を高く結い上げた、雪のように白い肌のとても美しい娘でしたが、その深い紫色の瞳には、炎と強い決意が宿っていました。
「我が名はスミレ。このわたしが必ずや丘の魔王を打ち倒し、村に平和を取り戻してみせようぞ!」

かくして娘は、一振りの大剣を背負い、白銀の鎧に身を包み、単身丘の古城に向かいました。
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