第一章 奇跡使いと言霊使い
「いつもありがとうございます」
「こちらこそ。それでは、私達はこれで」
ケフィとアルシャインが施設に小瓶を運ぶと、施設の職員が伝票を確認し、何段にも詰み上がった箱を受け取った。
代金はテンパランスの口座に振り込まれることになっている。
滞りなく配達が終わり、二人が屋敷に帰ってくると、真っ赤なスポーツカーが玄関前に停まっていた。アルシャインはその車に見覚えがあった。
「またあの人来てるのか。ちょっと車邪魔だなあ。どこに停めよう?」
「あの人?知り合いなんですか?」
「うん。ちょっと厄介な人だ」
スポーツカーが邪魔で門の中に入れなかったアルシャインは、門の前に路上駐車し、車から降りた。ケフィもそれに続いて車から降りる。と、
「あたしから何もかも奪って楽しいわけ?!何とか言ったらどうなのよ?!」
「………」
頭にピンクのリボンを斜に巻いた茶髪の女が、玄関前でテンパランスに食って掛かっている。全身赤一色の派手なドレスも相まって、性格の悪そうな印象を受ける。
アルシャインはスポーツカーの横を通り過ぎ、テンパランスに帰宅を告げた。
「ただいま戻りました、テンパランス様」
「おかえりなさい」
「あたしを無視すんじゃないわよ!!」
赤いドレスの女は尚もガミガミ突っかかってくる。
ケフィは恐ろしくなって、気配を消すことにした。コソコソさりげなくアルシャインの陰に隠れる。
「今日はどんな御用なんですか?」
溜息交じりにアルシャインが訊くと、赤い服の女はよくぞ聞いてくれましたとばかりに、
「あなたも関係あるんだからね!先日のモンスター退治の案件は、本当は私たちが請け負う仕事だったのよ!それをこの蝋人形女が私から仕事を奪って…!」
「だから言ってるでしょう?市役所の職員はあなたのことなんか一言も言ってなかった。私が奪ったと文句を言うなら、私に割り振った職員に文句を言うことね」
「もう文句言ってきたわよ!!だからあんたがあの案件請け負ったってことが判ったんであって……!」
アルシャインは「またいつもの言いがかりか」と、それ以上口を挟むのを諦めた。
「ミルドレッドー!気が済んだだろう?帰ろうぜ?テンパランスは知らなかったって言ってるんだから」
スポーツカーの運転席で待ちぼうけしながらやり取りを眺めていた男が、赤い服の女に声をかけた。
波打つ癖毛の長い金髪を首の後ろで一つに束ねた、赤ら顔の青い目の男だった。
「俺腹減ってきたよ」
と言いながら、彼は大きく欠伸をした。
ミルドレッドと呼ばれた女は尚も食い下がる。
「市役所とあんたを相手に裁判起こしてもいいのよ!」
「諦めなさい。無駄にお金を投げ捨てるだけよ」
テンパランスは相変わらず表情を崩さず、冷静だ。
「こちらこそ。それでは、私達はこれで」
ケフィとアルシャインが施設に小瓶を運ぶと、施設の職員が伝票を確認し、何段にも詰み上がった箱を受け取った。
代金はテンパランスの口座に振り込まれることになっている。
滞りなく配達が終わり、二人が屋敷に帰ってくると、真っ赤なスポーツカーが玄関前に停まっていた。アルシャインはその車に見覚えがあった。
「またあの人来てるのか。ちょっと車邪魔だなあ。どこに停めよう?」
「あの人?知り合いなんですか?」
「うん。ちょっと厄介な人だ」
スポーツカーが邪魔で門の中に入れなかったアルシャインは、門の前に路上駐車し、車から降りた。ケフィもそれに続いて車から降りる。と、
「あたしから何もかも奪って楽しいわけ?!何とか言ったらどうなのよ?!」
「………」
頭にピンクのリボンを斜に巻いた茶髪の女が、玄関前でテンパランスに食って掛かっている。全身赤一色の派手なドレスも相まって、性格の悪そうな印象を受ける。
アルシャインはスポーツカーの横を通り過ぎ、テンパランスに帰宅を告げた。
「ただいま戻りました、テンパランス様」
「おかえりなさい」
「あたしを無視すんじゃないわよ!!」
赤いドレスの女は尚もガミガミ突っかかってくる。
ケフィは恐ろしくなって、気配を消すことにした。コソコソさりげなくアルシャインの陰に隠れる。
「今日はどんな御用なんですか?」
溜息交じりにアルシャインが訊くと、赤い服の女はよくぞ聞いてくれましたとばかりに、
「あなたも関係あるんだからね!先日のモンスター退治の案件は、本当は私たちが請け負う仕事だったのよ!それをこの蝋人形女が私から仕事を奪って…!」
「だから言ってるでしょう?市役所の職員はあなたのことなんか一言も言ってなかった。私が奪ったと文句を言うなら、私に割り振った職員に文句を言うことね」
「もう文句言ってきたわよ!!だからあんたがあの案件請け負ったってことが判ったんであって……!」
アルシャインは「またいつもの言いがかりか」と、それ以上口を挟むのを諦めた。
「ミルドレッドー!気が済んだだろう?帰ろうぜ?テンパランスは知らなかったって言ってるんだから」
スポーツカーの運転席で待ちぼうけしながらやり取りを眺めていた男が、赤い服の女に声をかけた。
波打つ癖毛の長い金髪を首の後ろで一つに束ねた、赤ら顔の青い目の男だった。
「俺腹減ってきたよ」
と言いながら、彼は大きく欠伸をした。
ミルドレッドと呼ばれた女は尚も食い下がる。
「市役所とあんたを相手に裁判起こしてもいいのよ!」
「諦めなさい。無駄にお金を投げ捨てるだけよ」
テンパランスは相変わらず表情を崩さず、冷静だ。