第一章 奇跡使いと言霊使い

 そして、また今まで通りの日常がやってきた。
 ニコは少しずつ力を制限することを身につけていった。その一方で、ニコはイオナの雑用をよく手伝うようになった。テンパランスは精神修行にいいだろうと、イオナの手伝いを奨励した。
 イオナと一緒にいる時間が長くなるにつれ、ニコはイオナに特別な感情を抱くようになった。
 ニコにはその感情が何なのか理解できなかったが、彼女と一緒にいる時間が彼にとって特別な時間であるということは自覚していった。
「すっかりイオナに懐きましたね、ニコ」
 アルシャインが、ニコを見守りながらテンパランスに話しかけた。テンパランスもまたニコを見守りながら答えた。
「そうね。あんまり仲良くなりすぎると困るのだけれど」
「……」
 アルシャインは複雑な思いを見透かされた気分になって、何も言わなかった。
「そういえば」
 テンパランスはあることに気づいた。
「ニコ、あれだけ力を暴走させたのに、監視の神から罰が下らなかったわね」
「そういえば……」
 監視の神の罰には、何か法則性があるのだろうか。
「彼は、本当に神から愛されているのかもしれませんね」
「彼だけ特別扱いってこと?いやあね」
 テンパランスもアルシャインも、監視の神の罰の痛さを思い出して、ニコの特別扱いに嫉妬した。
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