第一章 奇跡使いと言霊使い
ある日、ニコ、テンパランス、アルシャインは、難病ホスピスへ向かい、奇跡の力の真骨頂である、病気の治療にやってきた。
ホスピスへ入ると、スタッフや車椅子に乗った患者たちが皆笑顔で出迎えた。
「テンパランス様!お疲れ様です、今日はよろしくお願いします」
「おお、テンパランス様じゃ、テンパランス様が来るのは久しぶりじゃ!」
「こんにちは、テンパランス様。今日は三人かえ?」
出迎えた人々一人ひとりと握手するテンパランス。皆奇跡の力に与かり、苦しみを癒してもらおうと待っている。
まずは重症の患者の部屋から診療に入る。
管だらけでやっと生きているような瀕死の患者だ。テンパランスは涙型のクリスタルのペンダントを外し、クリスタルを患者に向けて奇跡を使った。
「生命の神!水の神!」
するとまばゆい光が患者を包み込み、しばらく輝くと、やがて光は集束した。
ニコは首を傾げた。
「それだけ?」
テンパランスは頷いた。
「それだけでいいのよ。大きすぎる力は患者の負担になるわ」
するとニコはつまらなそうに言った。
「僕治せる」
ニコは右手を患者にかざし、「命の神!水の神!光の神!」と、神を召喚した。
すると目を開けていられないようなまばゆい光が病室に満ち溢れ、患者が激しく咳き込む声が聞こえたかと思うと、光は集束した。患者はジタバタともがき苦しみながら、呼吸器に付けられた管をむしり取った。そして荒く息をつきながら、掠れたか細い声で、
「死ぬかと思った……」
と呟いた。
患者は十数年ぶりに自分の口が利けるようになっていること、そして十数年ぶりに上体を起こして自立していることに気づくと、唖然とした。
まるで十数年間眠り続けていたのが嘘のように、自然に首をめぐらせ、テンパランス達の姿を見止めると、「奇跡だ……」と呟いた。
テンパランスもアルシャインも、居合わせた看護師も、仰天である。
「奇跡だわ、テンパランス様も直せなかった患者を、一瞬で!!」
看護師は同僚を呼びに行くと、皆ぞろぞろと引き連れて部屋の中に入ってきた。途端、拍手喝采である。
「素晴らしいですテンパランス様のお弟子さん!優秀なお弟子さんを迎えられたんですね!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
テンパランスは焦った。どういう顔をしていいかわからない。
一方ニコは、すっかり有頂天になって、へらへら笑っている。
「僕治せるよ!みんなみーんな治すよ!」
すっかり愉快になったニコは病室を飛び出すと、隣の部屋のドアを開け放ち、「こんにちは!」と言って、治癒の奇跡を使った。部屋に光が満ち溢れ、病人が可能な限り回復する。また次の病室のドアを開けると、「こんにちは!」と言って、奇跡を使う。ニコは、一室一室巡って奇跡を使って回った。
「ま、待ちなさいニコ!そんなことをしてはいけません!」
「大変だ!患者のみなさん大丈夫ですか?!」
テンパランスとアルシャインは大慌てでニコを追いかけ取り押さえ、彼の暴走を静止した。
「ニコ、もうやめなさい!大きすぎる奇跡の力は禁忌だって言ったでしょ!」
「患者さんにもしものことがあったらどうするんだ!」
ニコは嫌々と駄々をこねると、
「まだ、まだ部屋がある、まだ患者さんがいる!」
と、静止の手を振りほどこうとした。
「ニコ!!!」
強く叱られたことがわかると、ニコはテンパランスとアルシャインをギリッと睨み、
「はぁい、ごめんなさぁい」
と、口だけは立派に謝った。しかし、ニコは不満そうである。
ホスピスへ入ると、スタッフや車椅子に乗った患者たちが皆笑顔で出迎えた。
「テンパランス様!お疲れ様です、今日はよろしくお願いします」
「おお、テンパランス様じゃ、テンパランス様が来るのは久しぶりじゃ!」
「こんにちは、テンパランス様。今日は三人かえ?」
出迎えた人々一人ひとりと握手するテンパランス。皆奇跡の力に与かり、苦しみを癒してもらおうと待っている。
まずは重症の患者の部屋から診療に入る。
管だらけでやっと生きているような瀕死の患者だ。テンパランスは涙型のクリスタルのペンダントを外し、クリスタルを患者に向けて奇跡を使った。
「生命の神!水の神!」
するとまばゆい光が患者を包み込み、しばらく輝くと、やがて光は集束した。
ニコは首を傾げた。
「それだけ?」
テンパランスは頷いた。
「それだけでいいのよ。大きすぎる力は患者の負担になるわ」
するとニコはつまらなそうに言った。
「僕治せる」
ニコは右手を患者にかざし、「命の神!水の神!光の神!」と、神を召喚した。
すると目を開けていられないようなまばゆい光が病室に満ち溢れ、患者が激しく咳き込む声が聞こえたかと思うと、光は集束した。患者はジタバタともがき苦しみながら、呼吸器に付けられた管をむしり取った。そして荒く息をつきながら、掠れたか細い声で、
「死ぬかと思った……」
と呟いた。
患者は十数年ぶりに自分の口が利けるようになっていること、そして十数年ぶりに上体を起こして自立していることに気づくと、唖然とした。
まるで十数年間眠り続けていたのが嘘のように、自然に首をめぐらせ、テンパランス達の姿を見止めると、「奇跡だ……」と呟いた。
テンパランスもアルシャインも、居合わせた看護師も、仰天である。
「奇跡だわ、テンパランス様も直せなかった患者を、一瞬で!!」
看護師は同僚を呼びに行くと、皆ぞろぞろと引き連れて部屋の中に入ってきた。途端、拍手喝采である。
「素晴らしいですテンパランス様のお弟子さん!優秀なお弟子さんを迎えられたんですね!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
テンパランスは焦った。どういう顔をしていいかわからない。
一方ニコは、すっかり有頂天になって、へらへら笑っている。
「僕治せるよ!みんなみーんな治すよ!」
すっかり愉快になったニコは病室を飛び出すと、隣の部屋のドアを開け放ち、「こんにちは!」と言って、治癒の奇跡を使った。部屋に光が満ち溢れ、病人が可能な限り回復する。また次の病室のドアを開けると、「こんにちは!」と言って、奇跡を使う。ニコは、一室一室巡って奇跡を使って回った。
「ま、待ちなさいニコ!そんなことをしてはいけません!」
「大変だ!患者のみなさん大丈夫ですか?!」
テンパランスとアルシャインは大慌てでニコを追いかけ取り押さえ、彼の暴走を静止した。
「ニコ、もうやめなさい!大きすぎる奇跡の力は禁忌だって言ったでしょ!」
「患者さんにもしものことがあったらどうするんだ!」
ニコは嫌々と駄々をこねると、
「まだ、まだ部屋がある、まだ患者さんがいる!」
と、静止の手を振りほどこうとした。
「ニコ!!!」
強く叱られたことがわかると、ニコはテンパランスとアルシャインをギリッと睨み、
「はぁい、ごめんなさぁい」
と、口だけは立派に謝った。しかし、ニコは不満そうである。