第一章 奇跡使いと言霊使い
翌日からニコの奇跡使いの修行の日々が始まった。
しかし、彼は何も教える必要などないほど奇跡を使いこなしてしまっている。
彼に必要なのは、コントロールする方法だ。
ここで試しに奇跡の小瓶を作らせてみようと思ったアルシャインは、小瓶の作業場へニコを連れて行き、まず手本を見せてみた。
「いいかいニコ、この小さな小瓶に収まるように、奇跡の力を小さく集中するんだ。そして、奇跡の力が小瓶の中で水になるようにイメージする。やってみせるよ」
アルシャインは空の小瓶に手をかざし、意識を集中させた。
「水の神!光の神!生命の神!」
キュポン、という、例の奇妙な音を立てて、奇跡の力は水になった。
「そして、力が逃げないうちに栓をする」
コルクの栓をはめ、テープで封印。
「さあ、できるかな?」
ニコは、うーん、うーん、と首を忙しなく傾げて、悩んでいるようだった。しかしおずおずと小瓶に手をかざすと、神を呼んだ。
「水の神!光の神!命の神!」
途端、小瓶が破裂し、辺り一面に奇跡の液体がぶちまけられた。奇跡の液体はもうもうと煙になって蒸発し、部屋中に神の力が充満した。あまりに濃すぎる力に、息もできないアルシャインは、堪らず部屋のドアを開け、奇跡の力を逃がした。
「けほっ、けほっ、大丈夫かい、ニコ、ガラスでケガしてないかい?」
ニコは目を見開いて固まっている。何が起きたのか理解できないようだ。
アルシャインはイオナを呼び、掃除用具を持ってきてもらうと、作業場を簡単に掃除した。ガラスの破片でケガをしないように、念のために、光り物がないかチェックする。
「ニコ、力が強すぎるとこうなる。そんなに強い力は要らないんだ。小さーく、ほんのちょっとだけ奇跡を使って、少しだけ水にしてみてくれ」
ニコは叱られたのだと分かると、
「はぁい、ごめんなさぁい」
と、つまらなそうにふくれた。
「イオナ、何か、割れて怪我しない入れ物はないかな?」
「うーん、割れないもの、割れないもの……あ!紅茶の空き缶はどうですか?持ってきてみますね!」
そういってイオナがキッチンへ向かうと、程なくしていくつかの紅茶の空き缶を抱えて戻ってきた。
「よし、ニコ、この紅茶の缶で練習しよう。この缶に収まるぐらい小さく奇跡を使うんだ」
ニコは紅茶の缶に手をかざすと、息を大きく吸い込んだところでアルシャインに止められた。
「力いっぱいは要らない。力を抜いて、小さく、そっとだ」
ニコは吸い込んだ息を吐き出し、小さな声で「水の神、光の神、命の神」と囁いた。しかし。
ボウン!!
紅茶の缶は破裂こそしなかったが、容量オーバーで変形し、紫色の煙を吹きだして飛び上がった。小さく絞って絞ってこの威力である。
「……奇跡の液体はできたかな……」
アルシャインが紅茶の缶の中をのぞき込むと、どうやら液体はできているようだ。試しに舐めてみる。すると、
「うわっ……!なんだこれ!」
強烈な刺激が脳天を突き抜け、目が覚める。眠気覚ましが出来上がったようだ。栄養ドリンクのもっと濃いものと言ってもいい。
「うーん、でも、せっかく出来上がったから、勿体ないな。小さめの小瓶に詰め替えて、いつか利用しよう。ニコ、この中身をこの小瓶に詰め替えられるかい?」
スポイトで吸い取って、小さな小瓶に小分けにする。アルシャインは、疲れがひどいと訴える人に無料で配ろうかな、と考えていた。
しかし、彼は何も教える必要などないほど奇跡を使いこなしてしまっている。
彼に必要なのは、コントロールする方法だ。
ここで試しに奇跡の小瓶を作らせてみようと思ったアルシャインは、小瓶の作業場へニコを連れて行き、まず手本を見せてみた。
「いいかいニコ、この小さな小瓶に収まるように、奇跡の力を小さく集中するんだ。そして、奇跡の力が小瓶の中で水になるようにイメージする。やってみせるよ」
アルシャインは空の小瓶に手をかざし、意識を集中させた。
「水の神!光の神!生命の神!」
キュポン、という、例の奇妙な音を立てて、奇跡の力は水になった。
「そして、力が逃げないうちに栓をする」
コルクの栓をはめ、テープで封印。
「さあ、できるかな?」
ニコは、うーん、うーん、と首を忙しなく傾げて、悩んでいるようだった。しかしおずおずと小瓶に手をかざすと、神を呼んだ。
「水の神!光の神!命の神!」
途端、小瓶が破裂し、辺り一面に奇跡の液体がぶちまけられた。奇跡の液体はもうもうと煙になって蒸発し、部屋中に神の力が充満した。あまりに濃すぎる力に、息もできないアルシャインは、堪らず部屋のドアを開け、奇跡の力を逃がした。
「けほっ、けほっ、大丈夫かい、ニコ、ガラスでケガしてないかい?」
ニコは目を見開いて固まっている。何が起きたのか理解できないようだ。
アルシャインはイオナを呼び、掃除用具を持ってきてもらうと、作業場を簡単に掃除した。ガラスの破片でケガをしないように、念のために、光り物がないかチェックする。
「ニコ、力が強すぎるとこうなる。そんなに強い力は要らないんだ。小さーく、ほんのちょっとだけ奇跡を使って、少しだけ水にしてみてくれ」
ニコは叱られたのだと分かると、
「はぁい、ごめんなさぁい」
と、つまらなそうにふくれた。
「イオナ、何か、割れて怪我しない入れ物はないかな?」
「うーん、割れないもの、割れないもの……あ!紅茶の空き缶はどうですか?持ってきてみますね!」
そういってイオナがキッチンへ向かうと、程なくしていくつかの紅茶の空き缶を抱えて戻ってきた。
「よし、ニコ、この紅茶の缶で練習しよう。この缶に収まるぐらい小さく奇跡を使うんだ」
ニコは紅茶の缶に手をかざすと、息を大きく吸い込んだところでアルシャインに止められた。
「力いっぱいは要らない。力を抜いて、小さく、そっとだ」
ニコは吸い込んだ息を吐き出し、小さな声で「水の神、光の神、命の神」と囁いた。しかし。
ボウン!!
紅茶の缶は破裂こそしなかったが、容量オーバーで変形し、紫色の煙を吹きだして飛び上がった。小さく絞って絞ってこの威力である。
「……奇跡の液体はできたかな……」
アルシャインが紅茶の缶の中をのぞき込むと、どうやら液体はできているようだ。試しに舐めてみる。すると、
「うわっ……!なんだこれ!」
強烈な刺激が脳天を突き抜け、目が覚める。眠気覚ましが出来上がったようだ。栄養ドリンクのもっと濃いものと言ってもいい。
「うーん、でも、せっかく出来上がったから、勿体ないな。小さめの小瓶に詰め替えて、いつか利用しよう。ニコ、この中身をこの小瓶に詰め替えられるかい?」
スポイトで吸い取って、小さな小瓶に小分けにする。アルシャインは、疲れがひどいと訴える人に無料で配ろうかな、と考えていた。