第一章 奇跡使いと言霊使い
「あんたたち、仕事が入ったわ。今度の仕事はモンスターの殲滅。エラ、ニナ、それにケフィ、三人でできる限り沢山モンスターをやっつけてきて頂戴」
ミルドレッドにそうミッションを言い渡されたのは、古霊ショップに納品してきた日の数日後の夕食時だ。翌朝早くガイの運転する車に乗って現場に向かい、モンスターを殲滅するのだという。
凶悪なモンスターが多数現れるということで、一瞬も気が抜けない。
しかしケフィもテンパランスの所でそれは経験している。あの時は無力で役に立てなかったが、言霊という力を手に入れた今なら、ケフィにもそう難しい仕事ではないはずだ。
前日の夜にやってきて屋敷に泊り込んでいたガイも朝早く起きてきて、ミルドレッドのワゴン車の運転席に座る。エラが助手席に座り地図を広げると、ケフィとニナは後部座席に座った。
向かったのはトンネル工事中の山奥だ。モンスターがあまりに沢山出るというので作業が中断しているという。
車に揺られて現場にたどり着いたのは正午頃のことだった。担当者がバリケード前で待っていて、ガイは車の窓を開けて担当者に話を通した。
「ども。ミルドレッドの使いの者です。今日はよろしくお願いしまっす」
「あ、ご苦労様です。モンスターはこのバリケードの奥、工事現場付近に現れます。よろしくお願いします」
担当者二人がバリケードを退かして道を開けると、ガイは車を進めた。
「じゃ、俺は車の中で待ってるから、後よろしく頼んだよ」
「行ってきます!」
三人の言霊使いたちが車から飛び出すと、ガイはシートを倒して居眠りを始めた。呑気なものである。
人間の姿を見つけたモンスターたちは一斉に襲い掛かってきた。しかしエラはモンスターが姿を現す前から言霊を待機させていた。もうすでに言霊は唱え終っている。
エラの周りに放射状に配置されていた炎の矢は、一斉に飛び出し、包囲して襲い掛かるモンスターの第一波を燃やし尽くした。その一瞬の隙を利用して、ケフィとニナが言霊を唱え、第二波、第三波を仕留めてゆく。獣型モンスター、霊体型モンスター、粘菌型モンスターなど、モンスターの種類も様々だ。たいていは炎の古霊フランマから力を得れば倒せたが、炎の利かないモンスターには大地の古霊ペトラムなども活用した。
「大地の古霊ペトラムよ!ケフィを悪鬼の魔の手から守りたまえ!」
「すみません!ありがとうございます!」
「炎の古霊フランマよ!醜悪な怪物を炎の矢で貫き給え!気を抜かないで!」
「はい!大地の古霊ペトラムよ、憎き敵に石飛礫を!」
無駄口を叩く暇などなかった。矢継ぎ早に言霊を唱え続け、襲いくる怪物たちを仕留めてゆく。手が空いたら死骸の山を炎の古霊で片付ける。
「炎の古霊フランマよ、爆ぜろ、吹き飛ばせ!」
エラとニナがやってみせるその言霊を見ていて、ケフィは「テンパランスと出動した時自分が使った言霊は、フランマの爆裂の言霊だったのだな」と気が付いた。無意識に使っていたのだ。だとすると、母を救ったあの言霊は何だったのだろう。クラスメートを殺したあの雷の言霊は、今でも使えるのだろうか。確か、ミルドレッドが所持している古霊のご霊体の中に、雷の古霊がいたはずだ……。
そんなことを考えていると、山の天気が傾いてきて、雨雲が周囲を覆い始めた。
「視界が悪くなってきたわ。気を付けて!」
と、そこへ毛むくじゃらのモンスターが襲い掛かってきた。
「炎の古霊フランマよ!醜悪な怪物を炎の矢で貫き給え!」
しかし、霧で被毛の濡れたモンスターに、炎の言霊は効かなかった。湯気が立ち上り、火がつかない。
「しまった!どうしよう!」
ニナが慌てると、ケフィが咄嗟にデタラメに雷の古霊に呼びかけてみた。
ミルドレッドにそうミッションを言い渡されたのは、古霊ショップに納品してきた日の数日後の夕食時だ。翌朝早くガイの運転する車に乗って現場に向かい、モンスターを殲滅するのだという。
凶悪なモンスターが多数現れるということで、一瞬も気が抜けない。
しかしケフィもテンパランスの所でそれは経験している。あの時は無力で役に立てなかったが、言霊という力を手に入れた今なら、ケフィにもそう難しい仕事ではないはずだ。
前日の夜にやってきて屋敷に泊り込んでいたガイも朝早く起きてきて、ミルドレッドのワゴン車の運転席に座る。エラが助手席に座り地図を広げると、ケフィとニナは後部座席に座った。
向かったのはトンネル工事中の山奥だ。モンスターがあまりに沢山出るというので作業が中断しているという。
車に揺られて現場にたどり着いたのは正午頃のことだった。担当者がバリケード前で待っていて、ガイは車の窓を開けて担当者に話を通した。
「ども。ミルドレッドの使いの者です。今日はよろしくお願いしまっす」
「あ、ご苦労様です。モンスターはこのバリケードの奥、工事現場付近に現れます。よろしくお願いします」
担当者二人がバリケードを退かして道を開けると、ガイは車を進めた。
「じゃ、俺は車の中で待ってるから、後よろしく頼んだよ」
「行ってきます!」
三人の言霊使いたちが車から飛び出すと、ガイはシートを倒して居眠りを始めた。呑気なものである。
人間の姿を見つけたモンスターたちは一斉に襲い掛かってきた。しかしエラはモンスターが姿を現す前から言霊を待機させていた。もうすでに言霊は唱え終っている。
エラの周りに放射状に配置されていた炎の矢は、一斉に飛び出し、包囲して襲い掛かるモンスターの第一波を燃やし尽くした。その一瞬の隙を利用して、ケフィとニナが言霊を唱え、第二波、第三波を仕留めてゆく。獣型モンスター、霊体型モンスター、粘菌型モンスターなど、モンスターの種類も様々だ。たいていは炎の古霊フランマから力を得れば倒せたが、炎の利かないモンスターには大地の古霊ペトラムなども活用した。
「大地の古霊ペトラムよ!ケフィを悪鬼の魔の手から守りたまえ!」
「すみません!ありがとうございます!」
「炎の古霊フランマよ!醜悪な怪物を炎の矢で貫き給え!気を抜かないで!」
「はい!大地の古霊ペトラムよ、憎き敵に石飛礫を!」
無駄口を叩く暇などなかった。矢継ぎ早に言霊を唱え続け、襲いくる怪物たちを仕留めてゆく。手が空いたら死骸の山を炎の古霊で片付ける。
「炎の古霊フランマよ、爆ぜろ、吹き飛ばせ!」
エラとニナがやってみせるその言霊を見ていて、ケフィは「テンパランスと出動した時自分が使った言霊は、フランマの爆裂の言霊だったのだな」と気が付いた。無意識に使っていたのだ。だとすると、母を救ったあの言霊は何だったのだろう。クラスメートを殺したあの雷の言霊は、今でも使えるのだろうか。確か、ミルドレッドが所持している古霊のご霊体の中に、雷の古霊がいたはずだ……。
そんなことを考えていると、山の天気が傾いてきて、雨雲が周囲を覆い始めた。
「視界が悪くなってきたわ。気を付けて!」
と、そこへ毛むくじゃらのモンスターが襲い掛かってきた。
「炎の古霊フランマよ!醜悪な怪物を炎の矢で貫き給え!」
しかし、霧で被毛の濡れたモンスターに、炎の言霊は効かなかった。湯気が立ち上り、火がつかない。
「しまった!どうしよう!」
ニナが慌てると、ケフィが咄嗟にデタラメに雷の古霊に呼びかけてみた。