第一章 奇跡使いと言霊使い

 古霊ショップに連れられて行くと、意外にお洒落で煌びやかなお店だった。ぬいぐるみの中には縁切りや呪いなど、あまり可愛くない効果が込められているものも多いのに、こんなお洒落なお店で扱っていいのだろうか。
 店の中に入ってくと、ミルドレッドはお客の若い女の子たちに黄色い声援で迎えられた。
「ミルドレッド様!私この前彼氏できました!ミルドレッド様のおかげです!」
「ミルドレッド様!ありがとうございました!お守り大切にします!」
 影の薄いケフィは女の子たちに押しのけられ、先に進めなくなってしまったので、別の通路に回り込んでぬいぐるみを納品した。
「こんにちは。初めまして。僕、新しくミルドレッド様の弟子になったケフィと言います。よろしくお願いします」
「あ、お疲れ様でーす。初めまして。あ、納品ですか?いつもありがとうございまーす♪」
 店員のノリも軽い。あんなに怖かった言霊のイメージが一気に変わってしまうほど、フランクな世界だった。ケフィは言霊はもっとドロドロして汚くて薄気味悪くて怖いと思っていた。しかしこれが世間の言霊のイメージなのだろう。軽い気持ちで、皆お守りのぬいぐるみに願いを託し、軽い気持ちで古霊の力にすがっている。なんだか拍子抜けしてしまった。
「ごめんねケフィ。女の子に囲まれちゃって。納品は終わった?」
「あ、はい。今検品してもらってます」
 ミルドレッドが女の子たちから解放されて店員のところにやってくると、店員はこれまた軽い調子でOKを出した。
「あ、だいじょーぶですよ。ミルドレッド様に限って間違いなんてないですし。オッケーでーす。お疲れ様でーす♪」
「じゃ、帰りましょう」
 ミルドレッドがケフィを連れて店の入り口までやってくると、今度はガイが女の子に囲まれて鼻の下を伸ばしていた。
「ガイさん!あたし大ファンです!頑張ってください!」
「そうおー?いやあ照れるなあ。ありがとう。俺も君のこと大好きだよ!」
「キャー!!」
 ミルドレッドはすれ違いざまにガイの耳を掴んで車まで引っ張っていった。
「イタタ、ミルドレッド、痛い!安心してくれよ、俺はミルドレッドが第一だから!」
「フン!」
 ケフィはいつも不思議に思う。二人はどんな関係なのだろう。
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