ダリオ編
「そうか。納得した。あんたはあんたで、苦労してきたんだな」
声の掠れた男性が、目の端を拭ってそう言いました。他人が泣けるような話ではなかったはず……。そう思って、
「そんなに感動するような話でしたか?」
と問うと、彼は、
「あんたが羨ましくてな」
とため息をつきました。
「そう言えば、あんたの本名は?」
私は正体を隠して旅する身なので、あまり名乗りたくありませんでしたが、ここまで話してしまったので、正直に、
「レオナルドです。レオナルド・バルロッティ」
と名乗りました。
すると彼は、ワナワナと震えだし、
「おい、あんた、さっき、ちらっと、『ダリオが合唱団卒業した』って言ってたよな。ありがちな話だと思ったが、もしかして、あんた、レオナルドで間違いないのか」
と、私の両腕を掴んできました。
「もしかして、あなたもダリオ……?」
「あなた『も』じゃねえよ!俺がそのダリオだよ!あんた、レオ、あんた……あんたも歌をやめちまってたのか……!」
彼、ダリオは、うわあっと私を抱きしめてきました。
「歌を、やめた?ダリオが、私の尊敬するダリオが、歌をやめた……?」
そしてダリオは彼の身の上を語りだしました。
「俺は、大人の合唱団にはいってすぐ、喉を壊したんだ。両親も先生もそれを認めてくれなくてな、声変わりの大事な時期に、喉に無理をかけて、こんな声になっちまったんだよ。俺は、まともな声も出せなくなっちまったんだよ」
そんな……。
「俺もあんたと同じでな、歌うことしかしてこなかったから、歌をやめたらなんにもまともに勤まらなくてさ。家を追い出されて、物乞いか奴隷しかやることが無くなっちまった。奴隷もまともに勤まらなかったぜ。逃げ出して、今は物乞いさ」
「こんなことなら去勢されてカストラートになったほうがよっぽど幸せだった。でも俺は元々声が低かったから、そんなことも出来なかった。ああ、でも、どっちが幸せだったんだろうな。まさかあんたも歌をやめちまってたなんて……」
声の掠れた男性が、目の端を拭ってそう言いました。他人が泣けるような話ではなかったはず……。そう思って、
「そんなに感動するような話でしたか?」
と問うと、彼は、
「あんたが羨ましくてな」
とため息をつきました。
「そう言えば、あんたの本名は?」
私は正体を隠して旅する身なので、あまり名乗りたくありませんでしたが、ここまで話してしまったので、正直に、
「レオナルドです。レオナルド・バルロッティ」
と名乗りました。
すると彼は、ワナワナと震えだし、
「おい、あんた、さっき、ちらっと、『ダリオが合唱団卒業した』って言ってたよな。ありがちな話だと思ったが、もしかして、あんた、レオナルドで間違いないのか」
と、私の両腕を掴んできました。
「もしかして、あなたもダリオ……?」
「あなた『も』じゃねえよ!俺がそのダリオだよ!あんた、レオ、あんた……あんたも歌をやめちまってたのか……!」
彼、ダリオは、うわあっと私を抱きしめてきました。
「歌を、やめた?ダリオが、私の尊敬するダリオが、歌をやめた……?」
そしてダリオは彼の身の上を語りだしました。
「俺は、大人の合唱団にはいってすぐ、喉を壊したんだ。両親も先生もそれを認めてくれなくてな、声変わりの大事な時期に、喉に無理をかけて、こんな声になっちまったんだよ。俺は、まともな声も出せなくなっちまったんだよ」
そんな……。
「俺もあんたと同じでな、歌うことしかしてこなかったから、歌をやめたらなんにもまともに勤まらなくてさ。家を追い出されて、物乞いか奴隷しかやることが無くなっちまった。奴隷もまともに勤まらなかったぜ。逃げ出して、今は物乞いさ」
「こんなことなら去勢されてカストラートになったほうがよっぽど幸せだった。でも俺は元々声が低かったから、そんなことも出来なかった。ああ、でも、どっちが幸せだったんだろうな。まさかあんたも歌をやめちまってたなんて……」