【番外】ちいさなこいのうた
クリスマスイブ。学校から帰った葵は、ギンモクセイがハンドルを握る車に乗り込んだ。
「姫、今日はどちらに行かれますか?」
「衣笠区の中心街に行きましょう。333にも寄りたいわ」
「畏まりました」
車はほどなく衣笠区の中心街に着いた。駐車場を探し、車を停め、降りる。
街はイルミネーションに彩られ、クリスマスを楽しむ人でごった返していた。
「姫、私からはぐれませんようお気を付けください」
ギンモクセイは葵の手を握り、彼女の斜め前を歩いた。葵の胸がドキンと跳ねる。
(ギンモクセイ……!ギンモクセイと、手を……!)
ショッピングセンター333の5F、ゴシックアンドロリータ専門階を見て回ったが、葵はギンモクセイとデートしているという事実だけで胸がいっぱいで、何も欲しいものなどなかった。
「本当によろしいのですか?」
「ええ。今はあんまり欲しいものはありませんわ(ギンモクセイとこうしてられるだけで幸せ……)」
葵がぼうっとフロア内の店を見て回っていると、気が付いたらギンモクセイがいない。葵は慌ててギンモクセイを探した。
「ギンモクセイ!どこですか?ギンモクセイ?!」
すると、こちらに気づいたギンモクセイが駆け寄ってきた。
「姫、失礼いたしました。ギンモクセイはここです。姫のお傍にいたつもりでしたが、見失ってしまい、ご心配をおかけしました」
「いえ、私も一人でフラフラして、失礼いたしましたわ。行きましょう、ギンモクセイ」
「姫、次はどちらへ?」
葵はすでに考えていた。ギンモクセイと、高級レストランでディナー。葵は酒を飲めないので、ジュースで乾杯というのが少し悔しいが、きっと素敵な夜になるに違いない。
「レストランでディナーを戴きましょう。今夜はまだ帰りませんわ」
「畏まりました」
しかし、レストランに着いた途端ギンモクセイはいつもの執事の仕事をし始めた。葵の外套を脱がし、椅子を引き、掛けさせ、葵が何か注文しても、ギンモクセイは水以外を注文しなかった。
「ギンモクセイ!今日はギンモクセイと私のデートですの!執事の仕事はしなくていいのですわ!あなたも何か頼みなさい!」
「よろしいのですか?執事の私が姫とお食事を共にしても?では、畏れながら、御相伴に与からせて戴きます」
ギンモクセイが葵と差し向かいで何かを食べる姿は初めて見る。ナイフとフォークの扱いがスマートで上品だ。やはりギンモクセイは何をするにも様になる。
葵は思い切って告白した。
「ギンモクセイ。私、貴方のことが好きよ」
ギンモクセイもそれに事務的に答える。
「私も姫のことが大好きですよ」
葵は耳まで真っ赤になった。
「ギンモクセイ。私今とても幸せよ」
「私もです、姫。光栄にございます」
レストランから外に出ると、外の空気は急激に冷え込み、冷たい風が吹き付けてきた。
「寒い……」
葵が手に息を吹きかけると、ギンモクセイは葵の右手を握り、自分のトレンチコートのポケットにねじ込んだ。
「こうすれば暖かいですね」
葵にとって、暖かくなったのは右手に留まらなかった。
「姫、今日はどちらに行かれますか?」
「衣笠区の中心街に行きましょう。333にも寄りたいわ」
「畏まりました」
車はほどなく衣笠区の中心街に着いた。駐車場を探し、車を停め、降りる。
街はイルミネーションに彩られ、クリスマスを楽しむ人でごった返していた。
「姫、私からはぐれませんようお気を付けください」
ギンモクセイは葵の手を握り、彼女の斜め前を歩いた。葵の胸がドキンと跳ねる。
(ギンモクセイ……!ギンモクセイと、手を……!)
ショッピングセンター333の5F、ゴシックアンドロリータ専門階を見て回ったが、葵はギンモクセイとデートしているという事実だけで胸がいっぱいで、何も欲しいものなどなかった。
「本当によろしいのですか?」
「ええ。今はあんまり欲しいものはありませんわ(ギンモクセイとこうしてられるだけで幸せ……)」
葵がぼうっとフロア内の店を見て回っていると、気が付いたらギンモクセイがいない。葵は慌ててギンモクセイを探した。
「ギンモクセイ!どこですか?ギンモクセイ?!」
すると、こちらに気づいたギンモクセイが駆け寄ってきた。
「姫、失礼いたしました。ギンモクセイはここです。姫のお傍にいたつもりでしたが、見失ってしまい、ご心配をおかけしました」
「いえ、私も一人でフラフラして、失礼いたしましたわ。行きましょう、ギンモクセイ」
「姫、次はどちらへ?」
葵はすでに考えていた。ギンモクセイと、高級レストランでディナー。葵は酒を飲めないので、ジュースで乾杯というのが少し悔しいが、きっと素敵な夜になるに違いない。
「レストランでディナーを戴きましょう。今夜はまだ帰りませんわ」
「畏まりました」
しかし、レストランに着いた途端ギンモクセイはいつもの執事の仕事をし始めた。葵の外套を脱がし、椅子を引き、掛けさせ、葵が何か注文しても、ギンモクセイは水以外を注文しなかった。
「ギンモクセイ!今日はギンモクセイと私のデートですの!執事の仕事はしなくていいのですわ!あなたも何か頼みなさい!」
「よろしいのですか?執事の私が姫とお食事を共にしても?では、畏れながら、御相伴に与からせて戴きます」
ギンモクセイが葵と差し向かいで何かを食べる姿は初めて見る。ナイフとフォークの扱いがスマートで上品だ。やはりギンモクセイは何をするにも様になる。
葵は思い切って告白した。
「ギンモクセイ。私、貴方のことが好きよ」
ギンモクセイもそれに事務的に答える。
「私も姫のことが大好きですよ」
葵は耳まで真っ赤になった。
「ギンモクセイ。私今とても幸せよ」
「私もです、姫。光栄にございます」
レストランから外に出ると、外の空気は急激に冷え込み、冷たい風が吹き付けてきた。
「寒い……」
葵が手に息を吹きかけると、ギンモクセイは葵の右手を握り、自分のトレンチコートのポケットにねじ込んだ。
「こうすれば暖かいですね」
葵にとって、暖かくなったのは右手に留まらなかった。